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極貧、貧困層の収入増がブラジル経済、五輪を支える鍵

2008年、ブラジルの中流階級層の3年間の成長が止まった。9月18日に報告されたブラジル地理統計院の全国家庭調査によると、2005年から顕著だった中流階級層の拡大がストップした。一方で極貧層が減り、貧困層へと流れ込んでいることが報告されている。

ブラジルでは、3177レアル以上の月収で中流階級上(大学教授、経済学者、医者、建築家、会社管理職など)、1588から3177レアルで中流階級中(高校教師、技術者など)、635から1588レアルで中流階級下(小学校教員、事務員など)、317から635レアルで貧困層(工場作業員など)とランク付けされている。今回の調査では、中流階級層が2007年の45.9%から2008年の44.1%へと減少し、貧困層が34.3%から35%へと増加したことになる。また317レアル以下の極貧層が20.6%から20.1%に減少している。

ブラジルの今年4から6月期の国内総生産は、前年度比1.9%増。ブラジル中央銀行の調査では、来年の成長率見通しが、今年7月にはいって3.5%から4.5%に修正されている。9月の新車販売台数は6月の過去最高記録を更新。国営石油会社ペトロブラスの海底油田取引も世界から注目されており、また、リオデジャネイロでの五輪開催決定を受けて、今後さらなる経済成長が期待できるのは間違いない。

そんな中のこの調査結果は、貧困層が経済成長の恩恵を受けていることを示している。ルラ大統領はこの結果を受けて、経済成長とともに、政府が行ってきた教育、住居対策を大きく評価。このまま続けば10から15年後にはブラジル人にとって社会的にすばらしい発展レベルに達するだろうと強調している。

実際に極貧層は、減ったとはいえ全人口の20%弱にものぼる。この階層の収入増に伴う個人消費の拡大は狙える。2016年のリオデジャネイロでの五輪開催に関して改善が叫ばれる治安問題は、経済的貧困と密接に繋がっている。今年に入ってリオ州全体の殺人事件死亡数は減少しており、また昨年より始まったスラム街における犯罪組織追放の動きも盛んだ。とはいえ警察官による市民の殺害事件は日常的に多発しており、麻薬組織同士の抗争も絶えない。

今回の調査結果は、好調なブラジル経済と政府の貧困層救済政策の結果でもある。しかしまだまだ多くの部分が取り残されており、今後、極貧層、貧困層がブラジル経済発展、また五輪成功の鍵となりえるのかが注目されている。ブラジル中央銀行の総裁は、国際オリンピック委員会総会での最終プレゼンテーションで、「16年にブラジルの経済規模は世界5位になる」発言した。乱開発や不透明出費が指摘された2007年のパンアメリカの二の足を踏まず、極貧層、貧困層の生活および教育向上に注力することこそが、今後のブラジルの発展を左右していくのではないだろうか。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○メディアサボール 2008/08/22
 「2016夏季五輪招致を目論むブラジル リオデジャネイロが抱える障害」
http://mediasabor.jp/2008/08/2016.html

 

 


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