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米国NBC局のバラエティー革命は吉と出るのか?

米国4大ネットワークの中でも視聴率低迷に苦しむNBC局は、この秋より革命的ともいえる番組改編を実行した。それまで主にドラマ枠だった夜の10時台を、月曜から金曜まで帯でバラエティー番組にするという作戦に出たのだ。

しかし改編から2ヶ月が過ぎ、あいかわらず視聴率は低空飛行。それでも利益率は悪くないと言う。

従来、平日の10時台はドラマ、リアリティーショー、ニュースショーの箱番組と相場は決まっていた。4大ネットで唯一FOX局は、帯でローカルニュース(※1)を放送していた。とはいえ、プライムタイムにバラエティー系の帯番組とは、日本の常識で考えると、かなり思い切った編成である。10時台に「笑っていいとも」を放送するようなものだ。

※1.CBS、NBC、ABCは、ローカルニュースを11時台に放送している。

NBCが満を持して9月14日からスタートさせたのは、The Jay Leno Showというトークショーだ。11時35分に放送し実績のあるTonight Showのフォーマットを、実質繰り上げた形になっている。看板司会者は、長年Tonight Showのホストを務め最近その座を後任に引き継いだばかりのジェイ・レノ。日本のタモリ同様に国民的人気のコメディアンである。

The Jay Leno Showのリンク:
http://www.thejaylenoshow.com/

The Jay Leno Showの目玉は、エンターテイメント界の豪華ゲストである。映画の公開、CDの発売、スポーツイベント開催のタイミングで、キャメロン・ディアス、マライア・キャリーなどそうそうたる面々(※2)が登場する。仕組みとしては日本の「テレフォンショッキング」によく似ている。

※2.ジェイ・レノのTonight Showにはオバマ大統領が出演した実績もある。

初回の視聴者数は1770万人。多チャンネル、多民族で視聴率が分散するアメリカでは、1000万人を超えれば大ヒットである。ヤンキースが優勝を決めたワールドシリーズ第6戦の視聴者数が2115万人として、1770万人は、なかなかの高視聴率である。

ところが2ヶ月がたった現在の視聴者数は、おおむね400万人台に定着。当初の勢いは、宣伝にあおられた視聴者の期待に支えられていたようだ。ふたを開けてみたら深夜番組Tonight Showと大差がないということで、結局、深夜放送時代の視聴者数に近づいたと言える。

400万人台となると、それまで同じ枠で放送していた人気ドラマ「ロー・アンド・オーダー」よりも数百万人低い数字となる。日本ならばプロデューサーが自殺しかねないほどの大失態。しかしNBC局は、楽観的に見ている。

ドラマは制作にお金がかかり、トークショーはかからない。つまり、利益率を考えれば低視聴率でもいいというのだ。レノはインタビューで「150万人見ていれば年間3億ドルの収入となる。だから今のところ(視聴者数400万人なら)よくやっている」と発言している。

日本では、お笑い系のバラエティー全盛で、ドラマは採算が取りにくいと言われている。ましてアメリカのドラマは概してスケールが大きく、日本のドラマ以上にお金がかかるのが現状だ。不況に悩むテレビ界において、日本と同じ発想がアメリカでも注目されているのは興味深い。

NBC関係者は、各局がドラマの再放送(※3)を始めれば、The Jay Leno Showの視聴者数が上ると見込んでいる。あと6ヶ月して改善の余地がなければ、対策を考えるということだ。果たしてNBC局のバラエティー革命は吉と出るのか?

※3.米国では、主に春から夏にかけて、プライムタイムでも番組を再放送することがよくある。



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http://www.febe.jp/podcast/mediasabor/index.html


<2009年10月配信分の参考記事>

▼ 鈴木謙介(関西学院大学 社会学部 助教)─井上トシユキ
 (一部を抜粋のテキスト記事リンク: 変貌するメガヒットのメカニズム「わたしたち消費」とは
http://mediasabor.jp/2009/10/post_707.htm

▼ 神林広恵(ライター)─永江朗
 (一部を抜粋のテキスト記事リンク: スキャンダル雑誌の金字塔『噂の眞相』のつくりかた
http://mediasabor.jp/2009/10/post_708.html

 

 

 


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