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梶原しげる×永江朗対談 常識を破壊する「濃いしゃべり」で結果を出せ

  • MediaSabor 編集部

メディアサボールのビジネスポッドキャスト「ロングインタヴューズ」の第四回目の対談企画。フリーアナウンサー 梶原しげる氏と永江朗氏との対話(放送時間 99分)の一場面から切り取った内容を掲載いたします。 「───テキストだけでは伝えられないものがある」 まさに今回の対談は音声本編を聴いてこそ、より深く実感できるコンテンツになっています。書店に話し方に関する書籍は数あれど、一般的な常識論に捉われない梶原流のビジネストーク、プレゼンテーションに関するヒントは、あなたの今までの考えを覆す内容かもしれません。「インタヴューのプロフェッショナル」と「しゃべりのプロフェッショナル」が対峙する、これが初顔合わせというトークの応酬は必聴モノです。

音声本編の配信先は株式会社オトバンクが運営する「FeBe」上です。
http://www.febe.jp/podcast/mediasabor/index.html





<梶原しげる>プロフィール(オフィシャルサイト:http://www.creative30.com/kajiwara/
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1950年神奈川県生まれ。早稲田大学法学部を経てラジオ局文化放送に
アナウンサーとして入社。約20年在職後、92年からフリーとしてテレビ・
ラジオで活躍。その一方で、49歳で東京成徳(せいとく)大学大学院
心理学研究科に進学し心理学修士号取得。シニア産業カウンセラー、
認定カウンセラー、健康心理士などの資格を持ち、精神科クリニックや
心理相談センターでカウンセリング業務を担当。著書に「口のきき方」
「すべらない敬語」『話がうまい人はやっている「聞き管理」』
「最初の30秒で相手の心をつかむ雑談術」
「梶原しげるのプロのしゃべりのテクニック」ほか。
実践コミュニケーションに着目した著書『口のきき方』は、中学生の
国語の教科書に取り上げられる。また、かつて演歌を英語に訳して歌う、
日本でただ一人のイングリッシュ演歌歌手としてアルバム3枚、
シングル2枚を出しレコード大賞企画賞にノミネートされたユニークな
歌い手でもある。
06年3月公開の日韓合作映画「力道山」には、プロレス実況役で出演。
06年4月からは、東京成徳大学応用心理学部客員教授に就任。
現在、日本語検定審議委員も務める。
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(永江)
───政治家の話し方について、お聞きします。
名古屋市長に就任された河村たかしさんは、方言の使い方が面白いですね。

(梶原)
あんな話し方をする人は、地元の人でもなかなかいないらしいですよ。辻元清美さんなんかも、普段はあんなに関西弁を使ってないのに、公の場になると使う。やはり、「言葉は武器」という意識があるからだと思います。方言、なまりは相手の心に届きやすい、響きやすい、という原理を活かしています。河村たかしさんの話し方は、ミャーミャーしてるでしょう。あれは、タモリさんがパロディで使ったしゃべりを、一旦、タモリさん経由で河村さんに入れた、といってもいいくらいデフォルメされた表現です。私は、名古屋の人とも仕事をしますが、あんな話し方をする人はいません。



(永江)
───吉本芸人は、大阪出身というイメージが強いですけれども、実際は、周辺の奈良、京都、兵庫出身者も多く、彼らが生まれ育った地域の言語とは異なる、いわば虚構、幻想としての大阪弁を使って全国区にのしあがっていったのと、河村たかしさんの方言の使い方は共通性を持っているように感じますが、どうですか。

(梶原)
似てますねー。いわゆるステレオタイプとしての方言ですね。一方で、ダウンタウンの二人のケースでいいますと、つっこみの浜田さんは、割と関西弁を使ったりしますが、松本さんは、あえて、大阪弁、尼崎弁をあまり使わずに東京風の言い回しに近いスタイルをとっています。松本さんの著書で読んだことですが、「大阪の人は、皆面白いという固定観念がある。大阪の人は、一言はなしかけると軽くフリを返してきて、東京の人とは違うおかしみを醸し出せる人たちだ、大阪弁がしゃべれるというだけで、芸人としての一次試験はパスだといったような大きな勘違いをしている。大阪モンは別におもしろないでー。」といってます。松本さんが目指しているのは、ローカリティの勝負ではなくて、それを超えたところにあるのだと思いますし、そういうアプローチもありなんですね。

(永江)
───オバマ大統領の話し方は優れているんですか。

(梶原)
私はそんなに英語ができるというわけではないんですが、オバマ大統領が発するフレーズは基本的に短いです。たたみかけるような言い回しをするんですね。「あなたは、この国をわかっているんですか。わかっているあなたたちに申し上げますが、この国は──なんです。──だということは、──です。ということは──こうです。」といった調子で、ポンポンポンとつなげてきます。非常に心地よいリズムで話をつなげていくという技、スキルとしてすっかり体の中に入れ込んでいます。しゃべりを意図的に武器として考えているかどうかの差が大きいのではないかと思います。政治家にとって、しゃべりというのは武器なんですね。

(永江)
───俳優の経験もあるレーガン元米国大統領のスピーチがうまいという人が多いのですが、実際のところどうでしたか。

(梶原)
レーガンさんは、実は森繁久彌さんと同様にアナウンサー出身なんです。そもそも俳優の前がアナウンサーだったんです。そのため、恐らく言葉が人の心を揺さぶるということを実感している方だったと思います。同じことを伝えるのでも、伝え方によっては、動いたり動かなかったりするということを理解していたんじゃないでしょうか。最もダメなのは、字を読んでしまうこと、棒読みすることです。できあがった文章を過不足なく読み上げるよりも、自分の言葉で訴えるほうが伝わりやすいんです。それを実践したのが小泉元首相でした。よく考えたら、「あらためて国民に問いたい。郵政民営化 賛成か反対か、是か非か!」としか言ってない。そんなに我々は郵政民営化について知ろうと思っていなかったし、差し迫った問題でもありませんでした。でも、あのしゃべりに多くの人が動かされてしまったんです。

(永江)
───話は変わりますが、今の30代くらいのビジネスパーソンの話し方の傾向として、何か気になっていることはありますか。

(梶原)
世代でくくれるかどうかはともかくとして、傾向としては「話が薄い」と感じています。

(永江)
───「薄い」というのは、どういうことですか。

(梶原)
表現力も含めて、淡々としている、ということです。自分がこれを伝えたいという意気込みに不足があるように思います。相手の心を揺さぶろうとすることに興味がないという印象です。

(永江)
───私も学生と接していて思うところなんですが、自分が否定されたりすることの可能性を先回りして、言い訳をあらかじめ用意しておくような話し方が「薄さ」の一面でもあるんでしょうか。

(梶原)
カッコ悪いとか、ダサイとかいわれたり、人に批判されたりすることが、何より屈辱なんでしょうね。バカがいえない、バカができないといいますか、実は、そのようなスキを見せることこそが、一番のしゃべりの中の武器なんですけどね。

(永江)
───スキを見せることが大事なんですか。

(梶原)
そうです。スキを見せるということは、質問をしてくれるということですよね。パーフェクトに説明しちゃったら、質問の余地がないですよね。完璧なプレゼンをしてしまったら、あとは聞くことがなくなってしまうんです。その意味で、つっこみどころを作っておくのもテクニックの一つです。あえて落とすということです。そして、相手にも言わせることで、相手との関わりを持つ、関わらせる、相手の優越感を刺激する、といった関係性をつくりつつ、相手に好意を抱いてもらう可能性を高めるのです。どういうふうにうまくスキを見せるのか、ということがビジネストークにおいてのポイントです。


<対談の全体概要>
◎アナウンサーのオンとオフの声、しゃべり方
◎文化放送入社後のトレーニング
◎ラジオでのスポーツ中継の難しさ
◎局アナからフリー転身決断へのいきさつ
◎心理学を学ぶことになったきっかけ
◎カウンセラーの仕事
◎政治家の話し方。メディア、有権者を意識したしゃべり
◎プレゼン、商談、通販番組など、ビジネスで成果を上げるための「濃いしゃべり」とは
◎完璧を目指すよりもスキを見せることの重要性
◎相手に伝わる「しゃべり」を心がけよ
◎「上手なしゃべり」と「魅力的なしゃべり」の違い
◎「しゃべり」は身体性を伴う

(2009/09/27 収録)

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○メタノート 「最初の30秒で相手の心をつかむ雑談術」 2009/10/07
 論理よりも感情、これを実感する時があります。上手なプレゼンテーションを
 する人は最初の1分で聴衆をひきつけます。その内容は本題となる話ではなく、
 今日の朝起きたこと、最近の自分の体験だったりします。
 学校の授業でおもしろい先生の授業ってだいたい雑談から始まって
 いませんでしたか?
http://flowrelax.blog43.fc2.com/blog-entry-606.html

○活かす読書 「最初の30秒で相手の心をつかむ雑談術」 2009/06/30
 雑談をするにもネタの仕入れが重要。
 本書の「PART5.いつもネタに困る人のための情報収集術!」では、
 足で集める1次情報、テレビ、新聞、図書館(本)、ネットなどの
 情報ソースからネタを仕込むヒントが解説されています。
 こうしてソースを並べてみると、私の場合は「足で集める1次情報」が
 一番の弱点。「自分の五感で体験したネタが説得力をもち、
 雑談のネタとしても断然強い」
 私は、本ばかり読んでいるのではなく、
 もっと外に出て人と話す機会を増やした方がよさそうです。
http://ikadoku.blog76.fc2.com/blog-entry-594.html


【ビジネスポッドキャスト「ロングインタヴューズ」のPR】

ネットやケータイの普及で、情報収集の方法は、検索、ニュースサイトの閲覧、ソーシャルブックマークの閲覧、SNSへの参加など多様化しています。しかし、表層的で刹那的な情報が氾濫したことにより、価値の高い本質的な情報を探し出すことは、次第に困難になりつつあります。

情報を取得しやすい環境が整ったからといって、お手軽に手に入る情報が、ビジネスの優勝劣敗を左右したり、人生の指針となったりすることは、稀です。

また、ネットコミュニケーションにより横のつながりは広がったものの、縦のつながりは逆に希薄化しています。情報アクセスの指向は、自分が興味を持っている特定分野に偏りがちであり、広い視野で、多様な分野から良質な情報を抽出することは、時間をかけて能動的に目的意識を持って行動をしない限り、得にくいものであることに変わりありません。

そうした面を鑑み、ネットや雑誌、書籍などのテキスト情報だけでは感じ取ることのできない、アナログで人間的な付加価値の高いインテリジェンスを提供していく必要性があるとの結論に至り、メディアサボールは、新たな音声番組プロジェクトとして「ロングインタヴューズ」をプロデュースしていくことになりました。

ビジネスポッドキャスト「ロングインタヴューズ」はビジネス分野を中心にメディア、カルチャーなどの分野も含めて月に2から3名の専門家や経営者、クリエイターなどの先達をゲストに迎え、経験豊富なインタビュアーが業界動向、時代の潮流、智恵、ノウハウ、生き様に迫る対談をネット上で配信する番組です。放送時間は1本あたり60から90分程度です。音声コンテンツなので、忙しい方でも通勤時間や移動時間に聴くことができ、普段、なかなか講演会やセミナーに参加する時間がとれないという方にとっても有益な情報源になります。インタビュアーが本音、本質に迫るべく大胆に斬りこみますので、思いがけない話、秘匿性の高い情報も飛び出します。ウェブ検索では手に入らない刺激的な語りをお楽しみください。

今月(2009年11月)は、通常月よりも配信数が多く、10月配信分を含めて6本の中身の濃い対談を980円で聴くことができます。12月以降配信予定の対談ラインナップも参照してください。

音声本編の配信先: 株式会社オトバンクが運営する「FeBe」上です。
http://www.febe.jp/podcast/mediasabor/index.html


▼ 鈴木謙介(関西学院大学 社会学部 助教)─井上トシユキ
 (一部を抜粋のテキスト記事リンク: 変貌するメガヒットのメカニズム「わたしたち消費」とは)
http://mediasabor.jp/2009/10/post_707.htm

▼ 神林広恵(ライター)─永江朗
 (一部を抜粋のテキスト記事リンク: スキャンダル雑誌の金字塔『噂の眞相』のつくりかた)
http://mediasabor.jp/2009/10/post_708.html

▼ 小林弘人(株式会社インフォバーン CEO)─井上トシユキ
 (一部を抜粋のテキスト記事リンク: 出版・新聞のネオビジネスは業界の外から勃興する)
http://mediasabor.jp/2009/11/post_719.html

▼ 梶原しげる(フリーアナウンサー)─永江朗
  ビジネスで成果を上げるための「濃いしゃべり」の本質

▼ 伊藤直樹(クリエイティブディレクター)─河尻亨一
  「インテグレーテッドキャンペーン」で「グルーヴ」を起こす

▼ 小飼弾(プログラム開発者)─井上トシユキ
  創造と依存のバランスが「仕組み」を活かす


※12月以降配信予定の対談ラインナップ
▼中島孝志(出版プロデューサー、キーマンネットワーク主宰)─永江朗
▼森谷正規(技術評論家)─永江朗
▼三浦展(カルチャースタディーズ研究所 代表、マーケティング・プランナー)─河尻亨一
▼夏野剛(株式会社ドワンゴ 取締役、慶應義塾大学  政策・メディア研究科特別招聘教授)
   ─本田雅一(テクニカルジャーナリスト)
▼宮永博史(東京理科大学MOT大学院 教授)─本田雅一

 

 

 

 


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