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金儲けの手段にマフィアが目をつけたキノコ狩り

 フランスの秋は、キノコなしでは語れない。高価なトリュフ茸を筆頭に、セップ茸、黒ラッパ茸などの秋を表す季節の食材だ。そのきのこが、ここ数年で、やくざの金づるになっている。

 豊かな自然に囲まれた田舎在住のフランス人にとって、秋から冬にかけてのキノコ狩りは昔から続く家族の行楽のひとつ。パリ在住の30歳のセバスチャンも、10月中旬、雨が降った後の週末は、いそいそとパリから1時間離れたフォンテンブロー近くにあるおばあちゃんの家に行く。

 雨後のタケノコ、改め、キノコがにょきにょきと発生しているので、よだれがでてくるそうだ。その次の週に、おばあちゃんの家に隣接する森を散歩して、黄セップ茸が2袋分取れたと嬉しそうに報告してくれた。キノコは、発生している森や小山の所有者のものと法的には決められているが、フランスのオーナーは心が広い。自然が育むキノコは公共のものとして、地元の住民が自由に収穫してきた。もちろん、採集したものは家庭で食べるためのものだからだが・・・。地元の人間は、エコシステムを壊すような無茶な採集はしない。次の季節も美味しいきのこが食べたいからだ。

 しかし、高騰するキノコの値段が状況を変えた。香りが高く、超高級食材として有名なトリュフ茸は、珍重されている。トリュフ茸を見つけるように訓練された犬や豚の誘拐騒動が定期的におこるのは、トリュフがキロ当たり350から600ユーロ(47000から8万円)前後の値段で買い取られるためだ。末端の消費者にいたっては、パリの高級食材店でキロ当たり3000から4000ユーロ(40万から53万円)もの値段でトリュフを買わなくてはいけないので、一度もトリュフを口にしたことのないフランス人は少なくない。

 そんな珍重キノコに、マルセイユ拠点のマフィア集団が、金儲けの手段として目をつけたのも必然というわけか。フランス人、スペイン人、ルーマニア人を雇って、キノコ狩りをさせる。元手はほとんどただ同然で高級レストランにキャッシュで転売し、一夜にして5000から7000ユーロ(67万から93万円)を稼げるキノコは良いビジネスだ。

 彼らは目先の事にしか興味がないので、熊手を使いキノコを根こそぎ収穫し、森の自然をリスペストもせず踏みにじって行く。オーナー達が怒るのも当たり前だ。マフィア対抗手段として、市政はキノコ狩りを許可制にする方向だ。許可制と言っても年間30ユーロ程度らしい。この処置は、昨年、森の所有者とプロのキノコ狩り連中が、きのこを採集する権利をお互いに主張し衝突したのが原因。口論がヒートして、発砲騒ぎ(フランスでは狩猟用の銃携帯が許可されている)にまでなったので、新たな処置を考えざるを得なくなったのだ。これまでが寛容すぎたのであろう。これからは、全体の73%を占める私有林が許可制に、同時に国有林でのキノコ狩りは一人一バスケットまでに制限する方向だ。違法者には135ユーロの罰金が課される。少しでもギャングによる収穫が減ればいいと思っている。

 ここで、不平を言っているのが近隣の住民達だ。今まで、朝早く起きて子供と一緒にキノコを取りに行き、キノコを使った秋冬の風物料理を作るのが習わしであったのに、できなくなったと文句を言う地元民達。しかし、やくざにあぶく銭を稼がせ、エコシステムを壊されるよりは良心的な措置だと思うのだが。

 

 


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