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格安航空会社アズーの参入で変化するブラジル国内路線市場

2008年12月に運航開始したアズーブラジル航空が、ブラジル航空業界に新たな疾風を巻き起こしている。

2009年1月には市場の1%にも満たなかったアズーは、9月には4.68%まで急成長。2008年9月に市場の52.81%を占めていたブラジル最大の航空会社、TAM航空は、2009年同時期には44.15%へと縮小。アズーがTAM航空を押し上げる形で進出しているのだ。またアズーはサンパウロのカンピーナス市のヴィラコポス空港を拠点としているが、2008年には利用者わずか91万2500人の小さな空港だったのが、2009年には利用者がその3倍に増加。空港周辺のサービス業も急増し、2014年のW杯までには6.4億レアルを投資し、新しいターミナルと第2滑走路を建設する予定だ。

アズーは、ジェットブルー航空など3つの航空会社の創業者でもある、オランダ系ブラジル人、デイヴィッド・ニールマン氏により2008年5月に設立、12月に運航を開始した。


模型を手にするデイヴィッド・ニールマン氏(アズーブラジル航空提供)

「世界中が金融危機の影響を受けていた時期での運航開始だったが、ブラジルが思ったより影響を受けていなかったこと、ブラジル市場の可能性への確信から、2008年はじめより温めていた計画を予定通り実施しました。」と、同社のシステム監督、アダルベルト・フェベリアーノ氏は説明する。「2008年、ブラジル人は1年で一人につき0.25回、航空機を利用しました。他の先進国だとその12倍もの数字で、ブラジルにはもっと航空機が必要なことがわかります。利用客増加の見通しと、それを支える経済成長を確信しての創立だったのです。」

ブラジル16都市を網羅し、一日あたりの運航本数は80以上という急成長の大きな理由はその低価格にある。効率的な組織体制を導入したことに加え、一つの航空機の一日の飛行時間を長くし、高い乗客搭乗率を保つことで低価格を実現している。ブラジル航空会社の平均乗客搭乗率が70%であるのに対し、アズーの11月乗客搭乗率は87%を記録している。またブラジルで唯一の空港から都心への無料シャトルバスサービスや、チケット代の約5%をクレジットとして受け取れ、50レアル以上から保有者の家族、友人など誰でも現金として航空券購入に使用できるシステムも好評だ。そして30日前に航空券を購入するとディスカウント扱いになるが、その価格はバスとほぼ同等というから驚きだ。


アズーの無料シャトルバス(アズーブラジル航空提供)

アズーの格安航空券は、航空市場に大きな変化をもたらした。カンピーナス空港からサルバドール空港までGOL航空もしくはTAM航空を利用した場合、2008年12月には平均629レアルだったのが、今ではGOL航空のチケット代はアズーとほぼ同等の価格である299レアルに下がった。TAM航空では309レアルとなっている。これは同地区を結ぶ、32時間の運行時間の長距離バスの243レアルに迫る勢いである。TAM航空の市場プラン副監督によれば、価格は全体的に最高で50%割安になっているという。

またアズーは、ブラジルの国内路線の約8割がサンパウロのコンゴーニャス空港や、リオデジャネイロのサントス・ドゥモン空港などの大空港に集中していることに注目した。サンパウロ郊外のカンピーナス市にあるヴィラコポス空港を拠点とし、あまり使用されていない主要都市以外の空港を利用することで、空路拡大を図ったのだ。

現在ブラジル国内の主な交通機関は自動車路線と航空機だが、バスの利用者が圧倒的に多い。2007年のTAM航空事故や異常な航空ダイヤ混乱は、まだ記憶に新しく、空路を避け陸路を選択する乗客が多いのは事実だ。

陸路交通網としては、2015年に完成予定とされている高速鉄道構想が注目されている。交通業界の競争がさらに激しくなると予測される中、「高速鉄道構想はブラジルにとっても、アズーにとってもポジティブです。」と同社のアダルベルト・フェベリアーノ氏は余裕をみせる。高速鉄道は、リオデジャネイロとサンパウロ、そしてカンピーナス市のヴィラコポス空港をも結ぶ。アズーは高速鉄道建設で、ヴィラコポス空港の利用客がさらに増えると見込んでいるのだ。もちろん同空港の主な旅客機はアズーのものであることはいうまでもない。魅力的な価格と路線をアピールする同航空会社の参入は、交通業界にも大きな影響を与えるといわれている。ブラジルの高速鉄道構想に世界が目を向けている中、アズーもその市場シェアの拡大に向け着実に歩み始めているといえよう。


▼アズー公式サイト
www.voeazul.com.br/



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2009年12月配信内容をお知らせします。
ゲストの中島孝志様は、キーマンネットワークというビジネスマン交流会を
長らく運営してきた方で、ご自身のビジネス書の著書が多数ありますし、
出版プロデューサーとしても数多くの書籍を手がけられています。
その他、企業コンサルタントやビジネススクールの講師としても活躍されています。
どんな経験を経て、現在のようなスーパービジネスパーソンになり得たのか、
また、仕事で重要視している事柄、考え方などを知ることができます。

もう一人のゲストは森谷正規氏です。
「戦略の失敗」という観点から日本の製造業を見つめることで、
日本の組織の問題点や、様々な技術の特性、今後の製造業の展望など
幅広く概観することができます。

現在のところ、2009年10月、11月に配信した対談も合わせてお聞きいただけますので、
一度、お試しにでも、リスニングいただければ幸いです。

音声本編の配信先: 株式会社オトバンクが運営する「FeBe」上です。
http://www.febe.jp/podcast/mediasabor/index.html


<2009年12月配信の対談>

▼中島孝志(出版プロデューサー、キーマンネットワーク主宰)─永江朗

 テーマ: 仕事で重要なのは情報と人脈の活かし方(放送時間:97分)
 ※豊富な人脈を誇る現在の中島氏からは想像できない意外な会社員時代の
  エピソードが飛び出します。加えて、いくつかの業界動向や企業分析、変化の
  激しい時代に適応していくための指針、情報をインテリジェンスに昇華させる
  ための方法論が提示されます。

<対談の全体概要>
◎PHP研究所、東洋経済新報社に勤務していた会社員時代
◎キーマンネットワークを長く運営しているモチベーション
◎出版プロデューサーや書籍執筆者として多数の作品を生み出す礎となった経験
◎アパレル業界の動向
◎出版業界の動向、ヒット書籍の仕掛け
◎不況下でも好調な企業の特徴
◎媒体による広告効果の変化と考え方
◎仕事で最も重要なもの
◎キャリア形成の考え方
◎人脈の活かし方
◎情報をインテリジェンスに変換する方法論
◎変化の激しい時代のサバイバル


▼森谷正規(技術評論家)─永江朗

 テーマ: 「戦略の失敗」から学ぶ日本製造業の立て直し(放送時間:106分)
 ※長年、世界の技術を研究されてきた森谷氏の視点から、日本の製造業分野の
  失敗事例とその根本原因を分析していただきます。さらに日本の製造業が優位に
  立てる分野とマネジメント立て直しの方向性について解説していただきます。

<対談の全体概要>
◎1980年代に世界で圧倒的優位にあった日本の半導体産業が凋落した要因
◎HD-DVDがBlu-rayとの規格争いに敗れた理由
◎RDF(固形燃料化)の事業化失敗の理由
◎多くの技術がビジネス化までに至らない要因
◎失敗の根本原因(落とし穴)である12の事項について解説
◎「戦略の失敗」をいかに防ぐべきか
◎ハイブリッド車、電気自動車のゆくえ
◎自動車用電池技術開発の難しさ
◎家庭用燃料電池、太陽光パネル普及による電力業界への影響
◎情報技術がこれから向かう分野
◎日本人の特性を活かしたものづくり。日本と相性のいい製造業とは
◎ 技術力、商品開発力の優位さを事業成果に結びつけられない経営の問題点


<2009年10から11月公開の対談ラインナップ>

▼ 鈴木謙介(関西学院大学 社会学部 助教)─井上トシユキ
 (本編から抜粋のテキスト記事: 変貌するメガヒットのメカニズム「わたしたち消費」とは)
http://mediasabor.jp/2009/10/post_707.htm

▼ 神林広恵(ライター)─永江朗
 (本編から抜粋のテキスト記事: スキャンダル雑誌の金字塔『噂の眞相』のつくりかた)
http://mediasabor.jp/2009/10/post_708.html

▼ 小林弘人(株式会社インフォバーン CEO)─井上トシユキ
 (本編から抜粋のテキスト記事: 出版・新聞のネオビジネスは業界の外から勃興する)
http://mediasabor.jp/2009/11/post_719.html

▼ 梶原しげる(フリーアナウンサー)─永江朗
 (本編から抜粋のテキスト記事: 常識を破壊する「濃いしゃべり」で結果を出せ)
http://mediasabor.jp/2009/11/post_721.html 

▼ 伊藤直樹(クリエイティブディレクター)─河尻亨一
 (本編から抜粋のテキスト記事:「インテグレーテッド・キャンペーン」で「グルーヴ」を起こす)
http://mediasabor.jp/2009/11/post_723.html

▼ 小飼弾(プログラム開発者)─井上トシユキ
 (本編から抜粋のテキスト記事:創造と依存をバランスさせて「仕組み」を活かせ)
http://mediasabor.jp/2009/11/post_724.html

 


 
 

 


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