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中島孝志に永江朗がインタビュー「仕事で重要なのは情報と人脈の活かし方」

  • MediaSabor 編集部

メディアサボールのビジネス音声セミナー「ロングインタヴューズ」第七回目の対談企画。ビジネスマンの勉強会「キーマンネットワーク」の主宰を軸に豊富な人脈を築き、多彩な分野で活躍する中島孝志氏に永江朗氏がインタヴュー(放送時間:97分)した一場面から切り取った内容を掲載いたします。音声本編では現在の中島氏からは想像できない意外な会社員時代のエピソードが飛び出します。 加えて、いくつかの業界動向や企業分析、変化の激しい時代に適応していくための指針、 情報をインテリジェンスに昇華させるための方法論が提示されます。




<中島孝志>プロフィール
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東京生まれ。早大政経学部、南カルフォルニア大学大学院修了。 PHP研究所、東洋経済新報社を経て独立。経営コンサルタント、経済評論家、ジャーナリスト、 作家 (ペンネームは別) 、出版・映画プロデューサー、大学・ビジネススクール講師、TVコメンテーター等々、 多彩な顔を持つ。ビジネスマンの勉強会「キーマンネットワーク(25年の老舗)」「原理原則研究会」 「中島孝志の毒書人倶楽部」を主宰。 著訳書は200冊超にものぼり、その一部として「頭のいい人のすごい習慣 思考力、情報力、表現力の磨き方」 「すごい人脈!一流の人脈、最高の人脈のつくりかた」「サラリーマンよ2つの財布をもちなさい! 月10万円の小遣いを稼ぐ副業術」などがある。書籍プロデュース500冊超。
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音声本編の配信先は株式会社オトバンクが運営する「FeBe」上です。
http://www.febe.jp/podcast/mediasabor/index.htm



(永江)
───現在は、企業環境が激変しているただ中にあると思うのですが、日頃、経営者やビジネスパーソンと接触して感じる、今の日本の企業が抱える共通した問題点はありますか。

(中島)
いい意味でも悪い意味でもあると思います。シュンペーターが言っていた「創造的破壊」という言葉があるじゃないですか。あるいは逆説的にいうと「成功の復讐」という言葉があります。今まで、昨日まではよかったことが、今日から通用しなくなってしまうというようなことが短いサイクルで起こっています。勝利の方程式を書いたと思ったら、それがすぐに失敗の方程式になってしまうような、それぐらいめまぐるしく仕組みやシステムがガラリと変わってきています。ビジネスマンも経営者も五里霧中というよりは無我夢中という状態なのではないでしょうか。うまくいっている会社があっても、それはたまたまだという認識を私自身は持っています。だから会社の価値や手法を、これでいいんだと思わないで、しょっちゅうスクラップ&ビルドして、現状に満足しないようにしなければいけません。経営者にとっては油断できない環境です。

(永江)
───青山学院大学教授の生物学者 福岡伸一さんが、「動的平衡」というキーワードでよく語っていて、それは生命体というのは、変わらないようでいて常に新陳代謝しないと死んでしまうんだということです。今までの企業経営は、いかに非動的といいますか静的に固まった形にすることに腐心してきたわけですが、福岡さんの話を聞くと、常に変わっていかないと生き残っていけないんだと認識させられます。ですが、企業経営者の生理からすると安定を求めるのとは逆に、現状否定してチャレンジしていくことを実行に移すのは、相当難しいことのように思えます。

(中島)
創造的破壊ということなんでしょうね。現状に満足せずに、自ら壊していくということです。会社が一つの文化に染まってしまって、それ一辺倒でいくと非常に恐ろしい結果になりかねません。与党と野党といったようなカウンターパーティのようなものが、企業内にあったほうがいいかもしれません。その昔、旭化成の宮崎輝さんが、会社の中には健全な赤字部門がなければならない、といっていました。健全な赤字部門というのは、未来の飯の種のことでありカネのなる木ですよ。いわば、研究開発のテーマです。それを儲からないからといって切り捨てていったら、結局、事業が1個も残らなかったという笑い話があります。

(永江)
───私が専門にしている出版の分野では、昨年から大手の出版社が有名雑誌をどんどん休刊にしています。昔だったら赤字部門を持っていても10年経てば何とか食える、という雰囲気がありました。現実に出版事業を振り返りますと、少年マガジンにしても、サライにしても、Numberにしても、黒字化するまでに10年はかかっているんですよね。それが、現在は赤字部門を支えきれずに、どんどん閉鎖してしまうという状況です。そうすると10年後の飯の種がない、ということになってしまうんですよね。

(中島)
出版業界は特に厳しいですね。ただ、同じ素材であっても情報の仕掛け方、提案の仕方、巻き込み方しだいで消費喚起は変わってきます。

(永江)
───書籍出版では今年、村上春樹の「1Q84」が異常な売れ方を呈したのですが、色々取材をしてまわると、最も消費者にアピールしたのは、「ない」というニュースだったとのことで、結局、人はないものを欲しがるものなんだという笑い話のような一端がありました。ある大型書店の担当者によると、お客さんの中には、「村上春樹」とか「1Q84」という固有名詞を把握してなくて、「今朝テレビでやってた、あの本ある?」と聞いてくるケースがあったとのことです。それで、この本はBook1とBook2があるのですが、Book1から買う人のほうが多いので、当然、Book2が在庫として残ることになるのですが、「とりあえず、Book2買っていくか」というお客さんがいたという、ありえないような話を聞きました。もし、「1Q84」が潤沢に供給されていて品切れを起こしてなかったとしたら、あれほどの騒ぎにはなっていなかったのかもしれないと思いました。

(中島)
ちょっとした社会現象になりましたね。昔の例でいえば、宮沢りえのヘアヌード写真集の『Santa Fe』なんかも、飲み屋の会話で「あれ見た?」で話が通じる、といったことがありました。

集英社の文庫ナツイチキャンペーンがあるじゃないですか。ちょっと前まで蒼井優さんを表紙に使って「こころ」とか「銀河鉄道の夜」といった名作を展開したわけですが、普段だったら各出版社すべて合わせても3000冊程度しか売れない書籍が、蒼井優さんを表紙にした途端に増刷、増刷になりました。で、一番売れたのが「友情・初恋」(武者小路実篤)だったかな? なぜ最も売れたかというと、彼女が正面を向いた写真が使われていたからです。結局、中身は知らないけれどもオブジェとして買われているんですね。

(永江)
───そういえば、その文庫を写真集のコーナーに置いていた書店がありました。

(中島)
今は、売れっ子漫画家の描いたキャラクターが表紙に使われていたりします。

(永江)
───ところで、社会環境が激変していることで、求められる人材像や労働力の売り方も変わってきているように思います。中島さんの本を拝読していると、これ一筋という生き方じゃないほうがいいんだと感じるのですが、ダブル、トリプルの複線的な働き方というのはどうなんでしょうか。

(中島)
私自身は、これでも、出版プロデュースの道一筋にやってきたと考えています。

(永江)
でも、中島さんの肩書きは多岐にわたっていて、多方面で活躍されています。

(中島)
色々やってますけれども、結局、帰ってくるところは同じということなんです。なんでフラフラあちこちに顔を出しているかというと、野良犬みたいに餌を集めているんです。情報収集ですね。その情報というのは予定調和のところには大体なくて、あそこに行けば、これが食べられるなといったものですと、わかっちゃっているから面白くなく変化がないわけで、これ、やったことがないからやってみようかなという怖いものみたさを自分自身に仕掛けませんと、新しいものは生まれてきません。自分の作品だけ書いているわけではなく、他者作品のプロデュースのほうが圧倒的に多いので、そういうことからも、あちこちに手や首、足を突っ込んで経験値を増やすことが必要になってくるのです。

(永江)
───そこで頼りになるのが、人のネットワーク、人脈ということになるんでしょうか。中島さんの文章の中ですごく印象的だったことは、自分に足りないところは誰かに助けてもらわなければ人間、生きていけないんだから、人との繋がりを大切にしなければならないんだと指摘していたことです。

(中島)
私は、仕事をしていくうえで最も重要なことは、「情報」の二語に尽きると思っているんです。その情報というのは人が持っているんです。ネットや本で情報収集は可能ですが、それを目利きする人、評価する人、信憑性を判断する人が必要になります。それには裏話的な情報も含まれます。そのような信頼関係にある人をどれだけ持っているのかがモノをいうわけです。

以前「インテリジェンス読書術」という本を講談社から出したことがありますが、その中にシャーロック・ホームズいわく「ワトソン君、蛇口から落ちる水一滴からナイアガラの滝を想像できるかね」というくだりがあり、これが推理だということなんです。蛇口から落ちる水一滴というのはインフォメーションになります。ただそこに置いてある知識です。そこからナイアガラの滝を連想するというのは、意味のある情報すなわちインテリジェンスに昇華させることになります。その結果として、何らかの成果を上げるのがビジネスマンであり、経営者であり、仕事師だということになります。自分で調べたことや考えたことを他者の見解も交えながら、意味のあるインテリジェンスに変換していくには、多様な人的ネットワークを持っているほうが有利に働きます。


<対談の全体概要>
◎ PHP研究所、東洋経済新報社に勤務していた会社員時代
◎ キーマンネットワークを長く運営しているモチベーション
◎ 出版プロデューサーや書籍執筆者として多数の作品を生み出す礎となった経験
◎ アパレル業界の動向
◎ 出版業界の動向、ヒット書籍の仕掛け
◎ 不況下でも好調な企業の特徴
◎ 媒体による広告効果の変化と考え方
◎ 仕事で最も重要なもの
◎ キャリア形成の考え方
◎ 人脈の活かし方
◎ 情報をインテリジェンスに変換する方法論
◎ 変化の激しい時代のサバイバル

(2009/10/20 収録)

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○鹿田尚樹の「読むが価値」
 『すごい人脈!』@中島孝志  2009/10/14
 本書の中で「人脈を作るコツ」として紹介されているのが、以下のステップ。
 ●年間1000人!人脈化計画
 1. 勤勉に情報をインプットする
 2. オリジナル名刺を作る
 3. とりあえず勉強会に参加しよう
 4. こまめにコミュニケーションをする
 5. 自分主宰のイベントを作ろう
http://www.yomugakachi.com/article/130248119.html

○Mr.Challenger岩崎陽介のブログ--挑戦なくして向上なし--
 「頭のいい人」のすごい習慣 中島孝志  2009/10/25
 最近いろんな本を読んでいても、社会で実際に結果を残されている方の
 話を聞いても、みなさん人との出会いをすごく大切にされていると
 いうことを感じます。
http://blog.livedoor.jp/yosukeiwasaki0804/archives/986123.html

○マングローブ的 「キーマンネットワーク」 2007/10/26
 第一部は、めったにない、中島孝志氏自身の講演で、タイトルは
 「中島孝志の仕事術」。
 いやはや、圧倒されました。パワーポイントを400枚くらい持ってこられて、
 持ち時間の許す限り喋りまくる、という形だったんですよ。
 結局数十枚で時間が来たと思うんですが、彼の仕事術満載。
 ボクが一番感心したのは、彼が見たり聞いたり読んだりして、
 生かせると思ったコンテンツを丹念に蓄積しているという努力です。
http://imanok4.blog4.fc2.com/blog-entry-733.html



【ビジネス音声セミナー「ロングインタヴューズ」 ラインナップのPR】

読む×『聴く』(ロングインタヴューズ)で仕事にレバレッジ !

ネットやケータイの普及で、情報収集の方法は、検索、ニュースサイトの閲覧、
ソーシャルブックマークの閲覧、SNSへの参加など多様化しています。
反面、情報量が爆発的に増えたことで、情報の整理、価値の高い本質的な
情報の抽出は、以前に増して困難になりつつあります。

また、新聞や雑誌、書籍などの内容は、自身が所属する業界以外のことについては
実感として理解しにくい面があります。しかし、製品の融合化、業界垣根の
ボーダーレス化が進む世の中にあっては、異業種、他分野で起こっていることを知り、
全体を俯瞰して捉えることを意識しなければ、優れた戦略、企画は立てられません。

ビジネス音声セミナー「ロングインタヴューズ」は経験豊富なインタビュアーが
リスナーの立場にたってゲスト講師に迫り、本人の肉声で経験や考え方が
語られるため、門外漢の分野のことも、わかりやすく頭に入ってくる番組です。
その意味で、書籍や雑誌、新聞などのテキスト情報を補うのに、
うってつけのコンテンツになります。本音で話すゲスト講師の生き方、智恵は、
きっと、あなたの人生、仕事の地平を切り拓く道しるべとなります。

現在のところ、2009年10月、11月、12月にわたって配信の8本分の
中身の濃い対談をランチ1回程度の金額で聴取できますので、
非常にリーズナブルです。 お気に召さないようであれば解約はいつでも可能です。

音声本編の配信先は株式会社オトバンクが運営する「FeBe」上です。
http://www.febe.jp/podcast/mediasabor/index.html


<2009年12月配信の対談>

▼中島孝志(出版プロデューサー、キーマンネットワーク主宰)─永江朗  

▼森谷正規(技術評論家)─永江朗

 テーマ: 「戦略の失敗」から学ぶ日本製造業の立て直し(放送時間:106分)
 ※長年、世界の技術を研究されてきた森谷氏の視点から、日本の製造業分野の
  失敗事例とその根本原因を分析していただきます。さらに日本の製造業が優位に
  立てる分野とマネジメント立て直しの方向性について解説していただきます。

<対談の全体概要>
◎1980年代に世界で圧倒的優位にあった日本の半導体産業が凋落した要因
◎HD-DVDがBlu-rayとの規格争いに敗れた理由
◎RDF(固形燃料化)の事業化失敗の理由
◎多くの技術がビジネス化までに至らない要因
◎失敗の根本原因(落とし穴)である12の事項について解説
◎「戦略の失敗」をいかに防ぐべきか
◎ハイブリッド車、電気自動車のゆくえ
◎自動車用電池技術開発の難しさ
◎家庭用燃料電池、太陽光パネル普及による電力業界への影響
◎情報技術がこれから向かう分野
◎日本人の特性を活かしたものづくり。日本と相性のいい製造業とは
◎ 技術力、商品開発力の優位さを事業成果に結びつけられない経営の問題点


<2010年1月以降配信予定の対談ラインナップ>

▼三浦展(カルチャースタディーズ研究所 代表、マーケティング・プランナー)
   ─河尻亨一
▼夏野剛(慶應義塾大学  政策・メディア研究科特別招聘教授)
   ─本田雅一(テクニカルジャーナリスト)
▼宮永博史(東京理科大学MOT大学院 教授)─本田雅一


<2009年10から11月公開の対談ラインナップ>

▼ 鈴木謙介(関西学院大学 社会学部 助教)─井上トシユキ
 (本編から抜粋のテキスト記事: 変貌するメガヒットのメカニズム「わたしたち消費」とは)
http://mediasabor.jp/2009/10/post_707.htm

▼ 神林広恵(ライター)─永江朗
 (本編から抜粋のテキスト記事: スキャンダル雑誌の金字塔『噂の眞相』のつくりかた)
http://mediasabor.jp/2009/10/post_708.html

▼ 小林弘人(株式会社インフォバーン CEO)─井上トシユキ
 (本編から抜粋のテキスト記事: 出版・新聞のネオビジネスは業界の外から勃興する)
http://mediasabor.jp/2009/11/post_719.html

▼ 梶原しげる(フリーアナウンサー)─永江朗
 (本編から抜粋のテキスト記事: 常識を破壊する「濃いしゃべり」で結果を出せ)
http://mediasabor.jp/2009/11/post_721.html 

▼ 伊藤直樹(クリエイティブディレクター)─河尻亨一
 (本編から抜粋のテキスト記事:「インテグレーテッド・キャンペーン」で「グルーヴ」を起こす)
http://mediasabor.jp/2009/11/post_723.html

▼ 小飼弾(プログラム開発者)─井上トシユキ
 (本編から抜粋のテキスト記事:創造と依存をバランスさせて「仕組み」を活かせ)
http://mediasabor.jp/2009/11/post_724.html

 

 

 


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