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バンクーバー市、世界一のグリーン都市を目指す。オリンピックで猛アピールも

 バンクーバー市は10月20日“Vancouver 2020: A Bright Green Future”と題したバンクーバー市環境問題対策10年計画を発表した。『世界一グリーンな都市』は環境活動家でもあるバンクーバー市Gregor Robertson(グレゴール・ロバートソン)市長の願いでもある。

 2020年までに世界一となるために実行する10の環境対策項目には、グリーン事業を推進し雇用を生み出すこと、公共交通機関の利用を促すこと、大型廃棄物の削減、建築物のエネルギー効率改善などなどが掲げられている。目標は、2020年までに温室効果ガスを2007年比33パーセント減。もともと温室効果ガス排出量のほとんどが自動車の排気ガスというこの町で、この目標は市民の意識さえ変わればそれほど難しい数字ではないだろうと思う。

 この10項目の中で面白いのは、バンクーバー市のEcological footprintを33パーセント削減すること、食物流通システムにおけるCarbon footprintを33パーセント削減するという項目。

 ブリティッシュ・コロンビア州出身のRobertson市長は、以前はオーガニック農園を経営し、1994年にはその農園でとれた野菜や果物で保存料を使用しない100%の野菜果物ジュースを作りHappy Planet(www.happyplanet.com)という会社を共同創設。今ではアメリカにまで拡大している。

 食物に関するFootprintという意識の高さも、こうした経験からくるのかもしれない。

 ちなみにこのHappy Planet、350mlくらいの大きさで4から5ドルと他のジュース類と比べて結構高い。学生時代初めてこのジュースを手に取った時、なぜこんなに高いのか不思議に思ったのをよく覚えている。しかし、当時から人気が高かったのも事実だった。

 Robertson氏は、その後、BC州新民主党(NDP)から州議会議員に当選。野党議員として活躍していたが、去年のバンクーバー市長選に立候補し、サリバン前市長を倒して当選し、現職に至っている。現在でも自転車で通勤し、オリンピック関連の発表の場にも自転車で現れる自転車愛好家。去年の夏には、ダウンタウンから市街地にかかるバラードブリッジの片側3車線両側6車線の自動車レーンの1車線を完全に自転車専用レーンに変更して、物議を醸したが今ではすっかり定着している。

 先月には、三菱自動車カナダからi-MiEV3台がバンクーバー市、バンクーバーの電力会社BC Hydroに引き渡された。Robertson市長は、「冬のバンクーバーは雨が多い。オリンピック期間中は、自転車からこの電気自動車に乗り換えて、町中を走りたい」と記者会見にて笑顔で語っていた。

 電気自動車は、自動車の排気ガスが温室効果ガスの最も大きな原因であるバンクーバーにとってはエコ効果が期待される手段の一つ。BC州の電力は95パーセント以上が水力発電なので、電気カーはまさにエコカーとして威力を発揮するのである。

 こうした取り組みは世界的に認められなければ世界一とはなりえない。そこで、情報発信の絶好のチャンスが来年2月のオリンピックとなるわけである。バンクーバー市が手掛け、紆余曲折のあった選手村もそのひとつ。すでに完成し、VANOCに引き渡された。カナダの環境建築基準LEEDゴールドを目指して作られたコンドミニアムは、オリンピックが終われば一般に販売される。売却により借金返済を考えているのだから、ぜひ世界に紹介してもらって、高値で買ってもらいたいというのが市の本音だ。

 オリンピックを通してテレビに映るバンクーバーというものがどんなものになるのかわからない。おそらく競技だけでなく、いろいろな面が紹介されるのだろう。だったら、こうした環境問題への取り組みからも眺めてみてはどうだろう。ヨーロッパの各都市にはまだまだ及ばないが、北米ではまずまずだと思う。

 今や環境問題は、環境業やスポーツにも影響を及ぼす。バンクーバーオリンピック組織委員会(VANOC)は、スポンサーや観客にカーボンオフセットに参加するよう呼びかけている。これにはちょっと? と思ったが、それほど環境問題は今回のバンクーバー五輪でも重大に取り組まれている問題の一つということになる。

 コペンハーゲンで開催されたCOP15に参加を表明したカナダのスティーブン・ハーパー首相だが、カナダの目標値は2020年までに2006年比の 20パーセント減とアメリカよりやや良いものの日本やヨーロッパに比べればかなり低い。カナダのアメリカに歩調を合わせるような消極的な温暖化対策が国内外から非難されている。

 だからこそカナダでは、バンクーバー市はBC州のように市や州単位での取り組みが大事になる。ただバンクーバー市の今回の計画も完ぺきではない。やはり近隣市町村が一致してバンクーバー広域圏で取り組まなければ、意味がない。それは東京23区のうち一つの区だけが実施しているようなもの。バンクーバー五輪が終わった後の取り組みに注目したいと思う。

 市のホームページでは、今回の“Vancouver 2020: A Bright Green Future”が公開されている。(http://vancouver.ca/greenestcity/index.htm
 
 
【編集部ピックアップ関連情報】

○Web-Letters from Canada 「エコ少女」 2009/01/26
 バンクーバーは、エコな思考もかなり歓迎されており、エコ、ロハス、
 ヒッピー的な活動や情報に触れる機会がとても多くあります。
 バンクーバーにゆかりのある環境活動家や、エコに繋がりのある
 人物も多いです。
http://tsunko27.blog121.fc2.com/blog-entry-133.html

 


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