（記事要約）

女優サンドラ・ブロックは、米国の映画館経営者の投票によって2009年の「最も興行的に稼げるスター」に選ばれた。女優が同投票で１位に選ばれるのは、1999年のジュリア・ロバーツ以来10年振りの快挙である。

2009年ブロックが主演したコメディー「あなたは私の婿になる」とドラマ「The Blind Side」は、全世界で併せて５億ドル以上の興行収入を上げた。近年、数々の主演作が興行的不振に終わり2007年以降は表舞台から遠ざかっていたブロックにしてみれば、見事なカムバックとなった。

映画「あなたは私の婿になる」公式ウェブサイトへのリンク：
http://www.movies.co.jp/ana-muko/
映画「The Blind Side」公式ウェブサイトへのリンク：
http://www.theblindsidemovie.com/

2010/1/1付New York Timesより

（解説）

1994年アクション映画「スピード」のヒロイン役で一躍脚光を浴び、「デンジャラス・ビューティー（2001）」「トゥー・ウィークス・ノーティス（2002）」などコメディー系のヒット作で知られるサンドラ・ブロックは、1964年生まれの45歳。完全に峠を越したと誰もが思っていたところで、突如、再ブレイクを果たした。

“隣のお姉さん”的な親しみやすいキャラクターで男女問わず幅広い層にアピールするブロックは、失敗作が多いことでも有名だ。失敗作を“bomb（爆弾）”と呼ぶハリウッドでは、「ブロックは軍需工場よりも多くの爆弾を製造した」というジョークが定着するほどである。

映画評論家のポジティブな評価を数値化したウェブサイトRotten Tomatoesにおけるサンドラ・ブロックの歴代主演作を集計したスコアは28％。同世代の女優ニコール・キッドマン（スコア37％）に10％近く引き離されている。それほど、ブロックは批評家から評価を得られないタイプの女優だった。2009年の主演作「あなたは私の婿になる」も含め、たまにヒットする映画はもっぱらおバカなコメディー作品ばかりである。

Rotten Tomatoesのサンドラ・ブロックのページへのリンク：
http://www.rottentomatoes.com/celebrity/sandra_bullock/

そんなブロックが2009年に主演した「The Blind Side」は、実在のアメリカンフットボール選手の少年時代を描いた感動的ドラマである。口コミで評判が広がり、珍しいことに公開３週目にして興行成績全米１位を獲得。これまで１億9000万ドルを超える興行成績を上げ、ブロック初のシリアス系ヒット作（※）となった。

※2004年の出演作「クラッシュ」はアカデミー作品賞を獲得し一定の評価を得たものの、ブロックは助演扱いだった。

おかげでブロックはハリウッド外国人映画記者協会が選ぶゴールデングローブ賞（2010年１月17日発表）の主演女優賞に、コメディー／ミュージカル部門とドラマ部門の２部門でノミネートされた。これまであまり演技を評価されることがなかったブロックが、デビュー20余年にしてついに大女優として日の目を見ようとしている。

数々のインタビューを見る限り、サンドラ・ブロックは聡明で計算高い女優である。「デンジャラス・ビューティー」など一連のコメディー作品ではプロデューサーも兼任し、自分をどう見せればウケるかを熟知しているようだ。もともと実力があるブロックの2009年の再ブレイクは、起こるべくして起こったのだろう。

ちなみにブロックの最新コメディー主演作「All About Steve」は、Rotten Tomatoesで６％と圧倒的にネガティブなスコアで「Rotten（腐った）」に認定され、興行的にも伸び悩んでいる。“爆弾”製造機サンドラ・ブロックは、なおも健在なのだ。