Entry

先進国で最悪のスラム街と称されるダウンタウン・イーストサイド

 オリンピックロゴ入りのエクスタシーがバンクーバーで押収された。押収されたエクスタシーの数は10万7000個。6オンス(約170グラム)のコカインも同時に見つかっており、警察の見積もりでは、総額100万カナダドル(約9000万円)以上になるという。バンクーバーで押収された違法薬物ではトップ5に入る量だったと警察では発表している。

(2009年12月10日CBC:カナダ3大ネットワークの一つ。国営放送として全国津々浦々のニュースを網羅する)


 きっかけは市民の不法侵入の911通報だったらしい。警察が踏み込むと犯人らしき男二人と大量の違法薬物が発見されたというわけだ。男二人はこの家の住人であることも明らかになった。

 警察はオリンピックロゴ以外にも、ピースマークが入ったエクスタシーもあったと発表しており、特に今回押収したエクスタシーがオリンピックと関係していることはないようだ。
(押収されたエクスタシーのCBCで紹介された写真はこちら。
http://www.cbc.ca/canada/british-columbia/story/2009/12/10/bc-vancouver-ecstasy-bust-olympic-rings.html

 しかし、オリンピック開催時にこうした薬物が売買される可能性は大いにある。バンクーバーが薬物使用に対して寛容だという評判は世界中で知られていて、特にマリファナなどは有名だし、北米ではここだけという政府公認の薬物注射施設があるのもバンクーバーである。

 バンクーバー市ダウンタウンの東側、バンクーバー発祥の地とされるガスタウンから徒歩1、2分のところにダウンタウン・イーストサイドと呼ばれる地区がある。ホームレス、薬物中毒者などが集中的に生活している一帯である。犯罪発生率は北米一という不名誉なレッテルも貼られ、国連からは先進国で最悪のスラム街と称されている。

 さらに、HIV率はボスニア並み、薬物中毒者は4700人という状況。こうした中、2003年に連邦政府公認の市が管理運営する薬物注射施設“InSight”が設置された。幾度かの閉鎖の危機を乗り越えて、今でもこの地区で開かれている。看護師などの医療専門家が常勤し、清潔な注射器で正しく薬物を注射し、徐々に中毒から抜け出せるようにするという気の長い更生方法をとっている。

 違法薬物の怖さはさらなる犯罪を生み出すところにある。バンクーバーも例外ではなく、エクスタシーやマリファナのような薬物の売買に集団犯罪組織が絡んでいる。去年はこうした犯罪組織がらみの白昼堂々の発砲事件がバンクーバーで相次いだ。そしてもう一つは、ダウンタウン・イーストサイドのようなスラム街を生み出すこと。この地区の歴史についてはまたの機会に紹介するが、ここは戦前、日本人街リトル東京として栄えた日本人ゆかりの地区なのである。

 バンクーバーのこうした側面はあまり紹介されていないが、どちらもやはり世界一住みやすい街バンクーバーのもう一つの顔である。

 オリンピック招致の時、市も州も、ダウンタウン・イーストサイドが抱える問題を解決すると約束した。五輪のために何十億と費やせるなら、貧困世帯への保護を優先させるべきだという反対派の声に応えるための約束だった。実際、いくつかの政策は行われているが十分でないのは確か。五輪期間中、こうした反対派の抗議行動が行われることは必至で、組織委員会も暴力的な行動をとらない限り抗議行動は自由という姿勢を取っている。

 こうした抗議行動を通して、期間中にバンクーバーのもう一つの顔がメディアで世界に配信されることもあるだろう。しかし、私が心配なのは、海外からやってくる観戦者が薬物犯罪に知らず知らずに巻き込まれることだ。日本からの留学生やワーキングホリデーの人たちが違法薬物犯罪に巻き込まれるケースを時々耳にする。

 バンクーバーには公衆トイレがない。モールやデパートなど以外には、駅にさえ公衆トイレが設置されていない。理由は、犯罪の温床となるからである。多いのはやはり薬物犯罪。今は駅でも薬物の売買行為が行われているため、警察官や警備員が配備されているところもある。生活していればこうした注意力も自然と身につくが、初めての人には難しい。オリンピックのような大きなイベントでは町中がお祭り騒ぎとなるからなおさらである。五輪期間中バンクーバーに滞在する方は、くれぐれも注意していただきたい。


【編集部ピックアップ関連情報】

○MediaSabor  2007/12/26
 『住みやすさ』に翳り。バンクーバーのもう一つの顔
(治安悪化、薬物蔓延)
http://mediasabor.jp/2007/12/post_295.html

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/1208