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厳冬ドイツの塩不足

昨年末から続く厳冬気候のドイツ。寒いだけではなく、雪が毎日休みなく降っている。寒さに慣れているドイツ国民も、少量とはいえ、毎日雪がふる今冬の状態には、参っている様子だ。首都ベルリン圏内でも毎日雪が降りつもり、気温が少し上がれば、積もった雪がとけてしまう。夜中に気温が零下になると同時に凍り、町のあちらこちらでアイスバーンが出来上がっている。この繰り返しで一向に道は整備されず、全くお手上げの状態だ。こうなると、春が来るのを待つだけ。とは言うものの3月あたりまで続くベルリンの冬はまだまだ先が長い。

一般的にドイツでは、道路の凍結を防ぐため、従来砂利や塩、または砂利と塩の混合物が使用されている。ただし環境への意識が高いベルリンでは、道の凍結を妨げるために撒き塩を使うことを禁止。撒かれた塩が土壌にしみ込み、それを吸収した街路樹の成長に悪影響を与えるためだ。そこで代替物としてベルリン市では食塩水に塩化カルシウムと塩化マグネシウムの入った溶解塩を使用しているが、狭い歩道はその歩道に面する住宅の住民が雪かきをすることになっているため、ホームセンターで撒き塩を購入して使用している家主も後を絶たない。また、撒き塩の悪影響を受けるのは植物だけではない。散歩をする犬の足も荒れてしまうため、獣医に駆け込む飼い主も少なくないとか。

ところで撒き塩の使用をセーブしても、車道や高速、そして歩道の凍結予防にはどうしても塩が必要だ。さらには溶けては降り続く雪のために、その塩の需要量があまりに増加、生産が全く間に合わない。街では毎日凍った歩道で滑ってこける人が絶えないどころか、このままでは速度無制限で走ることの出来るドイツ自慢の高速道路も危険すぎて走行できなくなってしまう。これはかなり深刻な状況だ。ノルトライン・ヴェストファーレン州では、2月9日だけで、なんと900件の事故が発生、ドイツ全国において学校は休校。さらには積雪による建物の破壊など、被害は絶えない。

せめて交通事故の被害を減少させようと、塩がせっせと取引されている。それでは実際どれほどの塩が消費されているのかと言うと、人口約32万5000人の北西ドイツの都市ビールフェルト市では、今年1月までに3500トンの塩がすでに消費済み。これはいつもの冬なら余裕で足りてしまう量だという。同じ状況が他の都市でも見られるため、塩の生産で有名なチューリンゲン州では、毎日1400トンの塩の注文が殺到し、休みなく工員が働く日々が続いていると言う。

生産が追いつかない塩を手に入れるために各自治体は四苦八苦。南ドイツに位置するハイデルベルク市は、とうとう近くの国セルビアに塩を注文したそうだ。普段なら1トン80ユーロ(約1万円)が、195ユーロで取引されており、高値の場合は300ユーロにまで高騰している。こうして予算的にも自治体は大きな打撃を受けている。これらが与えるドイツ経済への影響がこれから注目されるところだ。

 


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