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「持って歩けるアート」の販売で成功した「Poketo(ポケト)」

サンフランシスコ出身の2人のアーティスト、アンジー・ミョンとテッド・ヴァダカンが、2004年にロサンゼルスではじめたアートビジネス「Poketo(ポケト)」(http://poketo.com/)。ユニークなインディーズアートプロジェクとして、アーティストがプロデュースする「限定生産の財布」の販売。何となくのプロジェクトがビジネスへ発展。不況の中、大躍進を続けている。

「手軽に手に入れられる芸術(Affordable Art)」をコンセプトに事業を成功させてきたPOKETO。7割がアート系のショップやブティックなどへの卸業で成功してきた同社は、昨年売上が50万ドル(約4500万円)を超えた。

オーナーの一人であるテッド曰く「自分達は一度も起業家になりといと思った事はなかった」という。会社を立ち上げる1年前の2003年、2人はサンフランシスコをベースに、アンジーはアートを学ぶ学生、テッドは映画制作をしていた。お金を貯めては友人たちに自分達の作品を見せるためのパーティーを開いていたという2人は、アートは高いものではないことを証明したい! どうにかして気軽に手にしてもらえないかと考えていたという。

とにかく何でもいいからパーティーに参加してくれた友人たちに「アート作品」を手にし
て帰ってもらいたいと考えた2人は、友人のアーティストに協力してもらい、限定のアートをプリントした財布を作って販売することを思いついた。こうしてパーティーの際に販売をはじめた限定アートの財布は、イベント中に完売。最初の財布作りではなんの儲けもなかったというが、アンジー曰く「お金を得るということよりも、友人たちのアート作品を、できるたけ多くの人の手に届けたかった」という。まさにその目的は無事に達成された。

この経験を踏まえて、アンジーとテッドは考え始めた。「もしかして、これはビジネスになるかもしれない」と。2004年アンジーの両親が住むロサンゼルスに移転した2人は、本格的に「POKETO」を立ち上げた。最初に行なったのはサンフランシスコで開いたようなパーティーだった。今回は、財布だけでなくTシャツをラインナップに加え、更にウェブサイトを立ち上げ販売をはじめる。最初の1年の間に利益を出し始めたPOKETOは、こうして本格的に事業として滑り出し、2人はフルタイムでPOKETOの事業に打ち込むこととなる。

2年目を迎えた2005年。2人はエコパーク(ロサンゼルス市内)に拠点を構え、注文を取ったり、新人アーティストとのミーティングに明け暮れる。POKETOの事業がさらなる飛躍を迎えるターニングポイントとなったのは、人気の米国バンド「Weezer」や「Postal Service」らが、コンサートの会場でPOKETOの財布を売り始めたこと。

Weezerのバンドマネージャーのフィールド氏がネットで、POKETOの財布を見つけ採用した。「他のバンドみたいに、安っぽいマジックテープ付きにロゴが入っているだけのつまらない財布を売りたくない」と商品を探していたフィールド氏の目に留まった。POKETOは、バンドのためのオリジナルデザイン財布を制作した。もともとアーティストであるアンジーとテッドだけあり、いわゆるノベルティーを作る他のベンダーと違い、POKETOはWeezerを魅了した。

2005年のWeezerコンサートで販売された財布
http://poketo.com/shop/archives/412


POKETOの商品はこうして広まっていき、ロサンゼルスの人気アートショップ
「Giant Robot」をはじめ、ギャラリーやブティック、そして様々なネットショップで販売されるようになる。そして瞬く間にヨーロッパやアジアにも卸しはじめる。

たった20ドルの財布は、通常300個の限定販売。POKETOがビジネス的にユニークなのが、一瞬のうちに完売してしまった商品の「追加生産」を基本的には行なっていない点だ。ビジネス的に考えれば、再生産ほど簡単に利益を上げる仕組みはない。しかしPOKETOは、あくまでも売れ行きのいい財布をデザインしたアーティストに新たなデザインを依頼し、新しい財布を販売するという。これによって財布というアートをいつも新鮮でユニークなものとして価値を保っているという。

もともとアーティストを目指していたアンジーとテッドだが、2人がPOKETOのためにデザインした作品は一つもないという。「このビジネスを展開することで、私達のアーティストとしてのキャリアは完全にあきらめなくてはならなかったけれど、それだけの価値はあると思っている」と語るアンジー。

芸術作品を生み出すアーティストが求める「知名度アップ」「作品を見せる機会を増やす」、その2つの観点において、アーティスト側のニーズを満たしているのがPOKETOであり、一方、数万円のアート作品は購入できなくても、気軽に他の人とは違うユニークな芸術を手にしたいと思う消費者にとって、POKETOが販売するアート作品は手に入れやすい。

先に挙げたバンド以外にも、様々な雑誌や美術館とコラボレーションした財布を発表したりと、アーティストの心を持った起業家アンジーとテッドのビジネスは、まだまだ発展の余地がありそうだ。


03/06/10 Los Angeles Timesより
http://www.latimes.com/business/la-fi-poketo6-2010mar06,0,4245943.story?track=rss

オーナー2人の写真:http://poketo.com/press/hires/pr-tedangie2.jpg

日本サイト:http://www.poketo.jp/
Twitter:http://twitter.com/POKETO
Facebook:http://www.facebook.com/poketo



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