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足元から崩れる米国の教育改革。経費削減で週4日制に走る公立学校

米国にとって教育改革は大きな課題だ。2007年に中学2年生を対象に行った国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の結果を見ると、数学では米国はハンガリーやロシアより下の9位(1位は台湾、日本は5位)で、科学では11位(1位はシンガポール、日本は3位)。経済協力開発機構(OECD)が加盟国の15歳を対象に2000年に実施した読解力テストのランキングでも、米国は15位(1位はフィンランド、日本は8位)である。

2002年にはブッシュ大統領肝いりの教育政策として、2014年までにすべての子供が適正レベルの読解力と算数を身につけることを目標に、「落ちこぼれゼロ法」が制定された。3年生から8年生(中学2年生相当)を対象に読み書きと算数の全国学力テストを行い、いつまでも多数の生徒が基準に達しないようであれば、その学校は廃校に追い込まれるという厳しい仕組みだ。同法のおかげで、実際に9歳児も、13歳児も全国テストの結果は以前より改善されたものの、2014年の目標を達成できる見込みはほとんどない。また高校退学率も全米平均で30%程度と高い。

オバマ大統領は、中途退学者の多い学校の改革とともに、「落ちこぼれゼロ法」の算数や読解力というゴールではなく、2020年までに高校生らを大学進学レベル、あるいは社会にでて働けるレベルに、もっていけるような教育制度への抜本的改革を打ち出している。

しかし長引く不況と税収の落ち込みにより、多くの地域は改革に着手するどころか、公立学校運営に四苦八苦している。昨年も各地で学校職員、教員のレイオフがあったが、さらに苦肉の策として打ち出されたのが週4日制である。米国の公立学校は児童の通学用にスクールバスを運行していることもあり、週1日でも学校を閉じれば、経費節減になる。すでに17州で約100校が週4日制に移行し、それ以外にも多数の学校区が週4日制を検討している。

1日あたりの授業時間を1時間10分程度延長することで、週5日制と同じだけの授業時間数は確保できるというが、過去の調査結果によれば、授業日数が多く、中断期間を短かくした方が教育効果の高さが認められる。米国の場合、一般的に3ヶ月近い夏休みがあるため、休み前に習った内容の復習に費やす時間が非常に多いという。1日あたりの授業時間をのばしても、週末の休みが3日入ってしまったら、教育効果は下がるのではないだろうか?

中国、韓国、シンガポールで子供達が学校に通う日数は、米国の子供達よりはるかに多い。日本でも「ゆとりの教育」の見直しが行われ、東京都教育委員会は今年1月、月2回を上限に土曜日の授業を容認するという通知を出している。また米国でも、KIPPという特別認可学校(公募型研究開発校)では、一般の公立学校よりも一日あたりの授業時間を多くし、月2回は土曜も授業、夏休みの間は夏期講習を実施することで、低所得者層やマイノリティの生徒達も良い成績をあげているという。

米国の小、中学生の場合、放課後に学習塾に行くというのはまだ一般的ではないが、公文式教室などの学習塾が全米で増えていると聞く。週4日制の学校が増えるにつれ、米国でも学習塾通いが主な課外活動の一つになるのだろうか?


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