（記事要約）

2007/02/08 CBS Evening Newsより（CBSは米国最大のテレビ・ラジオ・ネットワークの一つ。CBS Evening Newsは同ネットワークが1948年から放送している代表的ニュース番組）

シカゴに住む27歳のファッション・デザイナー、ローラー・ミラーさんは、事業資金を家族や友人からの支援と、クレジットカードに頼っていた。さらに追加資金が必要になったが、担保になる財産を持たないミラーさんのローン申し込みに、銀行は耳も貸してくれなかった。

そして試したのが、インターネット上の個人間融資サービスのProsper.com. 　3000ドルの融資を募集したところ、すぐに8人から貸付の申し出があった。貸付側も銀行預金より高い利率を得ることを期待して小口融資をする個人。銀行が貸付をしない人や、銀行の利率に不満な人々が、オンライン個人間金融という市場を確立しつつある。

記事リンク:　http://www.cbsnews.com/stories/2007/02/09/eveningnews/main2457400.shtml

プロスパーのウェブページ　http://www.prosper.com/

（解説）

Prosper.comは、インターネットを活用した米国初の個人間融資サービスとして、2006年2月に開設された。本社はサンフランシスコで、同じくオンラインベースの融資サイトE-loanの共同創業者のクリス・ラーソン氏が「融資分野でeBayのような市場を」というビジョンのもとに始めたベンチャーである。

1周年を迎えたProsper.comには、すでに18万人が利用者登録をし、これまでに総額3600万ドル（約42.5億円以上）の融資を成立させている。

米国ではクレジットカードの負債を抱え、年率20％以上の利息を払っている人も少なくない。またペイディ・ローンという2週間の短期小口消費者ローンが普及しているが貸付手数料が高く、手数料を年率にすると300％から500％になることもある。

一方、現在はマネーマーケットに預金しても、預け入れ金利は年利5％程度である。Prosper.comは、超高金利で借り入れしている人や、担保がなく銀行から借り入れができない人と、銀行預金よりも高い利率で自己資金を運用したい人のマッチング・サービスのようなものだ。

借入れ者、融資者とも身元確認情報をProsper.comに提供して登録する。借入れ申込者は、調達金額や自分が払うつもりの年利だけでなく、与信点数、借入れ理由や返済計画など、自分の事情を写真も使って自由に掲示する。

融資側は、50ドル（約6000円）から貸付入札をすることができる。借入れ申込者の条件を見ながら、融資をしたい相手に50ドル以上の融資入札をし、お互いに合意すれば成立となる。

Prosper.comは、借り手側に1-2％のローン手数料、融資側に0.5％-1％のサービス手数料を課す。

貸し手はうまくすれば年利8％から20％で運用できる。借り手が約束通り返済しない場合は、Propser.comが貸付金取立業者を使って回収を行う。

Prosper.comの人気の秘密は、オンラインの手軽さに加え、個人間取引でお互いの顔が見える点かもしれない。CBSニュースで報道された例では、若きファッション・デザイナーからの借入れ申し込みに、ニューヨークの警官であるジョン・ベリリさんが「グッド・ラック。ダナ・キャランみたいに有名になったら、サイン付の写真でも送ってくれよ」というメッセージとともに、100ドルの融資を申し出た。

尋問のように財政状況を尋ねる銀行の貸付窓口の対応とは大違いである。

Prosper.comは、インターネットという新技術で昔ながらの互助会的ネットワークを築き、銀行など既存機関がサービスできない分野を補完するという新たなビジネスモデルの例である。