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妊娠中もOK! 条件認証の元で人気拡がるエコロジカルなヘアサロン

いきなり冒頭から女性限定の質問で恐縮だが、妊娠中に、ヘアサロンに行きたくても、ヘアカラーやシャンプーなどの薬剤が心配で、行ってもいいものか悩んだ経験はないだろうか? また、女性男性を問わず、ヘアサロンでヘアカラーやパーマをしてもらう時、薬剤の強い臭いで頭が痛くなったり、気分が悪くなったりしたことはないだろうか?

私自身は、経験がある。デンマークに来て初めて妊婦になった時は、ヘアサロンに行くか、我慢するかずいぶんと悩み、主治医や周りの人に聞きまくっていた。日本に住んでいた80─90年代にはパーマをかけ、カラリングをしていた。その時によく頭皮がヒリヒリしたり、強い薬品臭に頭痛がしたりして、美容師さんに「染みるんですけど…」と言っても、蒸しタオルで生え際をちょっと拭ってくれたり、クリームを塗ってくれたりする程度がほとんどで、ヘアサロンとはそういうもの、と割り切り半ば諦めていた。

しかし、特にパーマ液のヒリヒリと臭いは耐え難いものがあり、「そこまでしてパーマをかける意味があるのか?」という疑問が生じた。ひとたび冷静になって考えてみると、そんな必要性は全くないことがわかったし、世の中がどんどんナチュラル志向になっていったことも幸いし、ここ10年以上はパーマをかけたことがない。

いっそのこと、カラリングもやめて、ヘアカットだけにできれば、どんなにシンプルでよいことか。でも、よんどころない事情で(といっても単に白髪が気になる、といったことですが)、カラリングだけはあきらめられずにいる。あきらめられないけれど、パーマ液やカラリング剤はいかにも環境にも悪そうだということは大いに気になっている。ヘアサロンをやっている知人が、「新入りの頃は手荒れがひどくて、本当につらかった」と話しているのを聞いても、ああいった薬剤、もしくはお店によってはシャンプーなども、繰り返し肌に触れると身体に良くないのだろう。

デンマークでは、ここのところ「グリーン・サロン(Grøn Salon)」と呼ばれるヘアサロンが全国に広まり人気を集めている。これは、コペンハーゲン市の環境ネットワークがデンマーク美容師理髪師連盟、デンマーク美容院経営者組合、そしてエネルギー・サービスと共に立ち上げ、成功を収めたプロジェクトで、昨年からは全国にエリアを拡大した。

「グリーン・サロン」と名乗るには、美容師の健康と顧客の健康を最優先事項とし、以下の6つの条件を満たさなければならない。

1)オーナーは製品と薬剤、健康との関係についての知識を有し、その知識を
    得るためのコースに参加しなければならない。

2)サロンで健康を害する恐れのある成分を含んだ製品を使用してはならない。

3)サロンでは、特にアレルギーや過敏性の症状に配慮し、事前に必ず顧客に
    アレルギーや過敏症の有無を確認、あれば医師に確認をする。

4)ブリーチはメッシュのみとし、ブリーチ剤が地肌に触れてはならない。

5)サロンの清掃には、環境に配慮した洗剤を使用する。

6)サロンで顧客に提供されるものは、全てオーガニック、または
    エコロジカルな製品、食品でなければならない。


これだけではない。さらに、毎年、以下に挙げたうちの3つの項目について、新たに取り組んでいかなければならないことになっている。

1)電力(使用量や待機電力の節約、省エネ型電化製品への買い替え、
    CO2ニュートラルを目指す、グリーンな電力の購入、持続可能な
    エネルギー設備の設置など)。

2)照明(省エネ型電球やハロゲンスポットの使用、照明の使用時間の工夫、
    窓辺の照明使用時間の短縮など)。

3)暖房(使用中はドアを閉める、サーモスタットを使った夜間の温度調節、
    ヒートポンプなど、より効率の良い暖房設備に換える)。

4)水(蛇口への節水器の取り付け、古いトイレを節水型の新しいタイプに
    買い替えるなど)。

5)グリーンな消費(リサイクルペーパーのみの使用、環境に配慮した
    プリンター用インク、IT製品の使用など)。

6)危険な成分を含まない製品のみの使用。

7)交通手段(顧客だけでなく、従業員用の自転車スタンドと、自転車通勤の
    従業員のためのバスルームの設置など)。

8)ゴミ(分別、削減など)。

毎年、選んだ項目の改善が認められれば、「グリーン・サロン」としての認証を更新できる仕組みになっている。

そうした「グリーン・サロン」の先駆者的存在なのが、コペンハーゲンを中心に現在はサロンを全国展開し、オスロにもコンセプト・サロンを持つ「Zenz」である。1998年に強い薬剤や香料の入った製品を使用せず、アレルギーやがんを誘発する物質、内分泌かく乱物質を極力含まない製品を使用したデンマーク初のエコロジカル・ヘアサロンを立ち上げたが、顧客にも、そして業界にも受け入れられるまでに7年近い歳月を要した。そして2005年、エコロジー、環境へのインパクト、フェアトレードなどに持続的に配慮した取り組みが認められて、コペンハーゲン市から環境賞を贈られた。ここから一気に、デンマークのヘアサロンのエコロジー化は加速したと言える。

Zenzのオーナーであるエネ−ソフィー・ヴィルムセンは、自身が美容師の勉強を始めて3年目でアレルギーに。妊娠出産で休暇を取っていた時は症状が治まっていたが、仕事を再開すると今度はぜんそくになり、娘もひどいアレルギー症状を見せるようになる。そこで代替医療やオーガニックに目覚め、紆余曲折を経てグリーンなヘアサロンをオープンしたという経緯がある。これだけ健康と環境に配慮したサロンだから、妊娠した女性にも安心して利用できると好評で、小さな赤ちゃんを連れたお母さんもやってくるという。

Zenzでは、カラリングなど、カット以外の時はフットバスのサービスを受けられるほか、オーガニックのコーヒーやお茶、ココア、フルーツもサービスされる。しかし、Zenzではパーマは行っていない。それは、サロンのポリシーに見合った、環境にも人にも優しいパーマ液や溶剤が今のところ存在しないという、シンプルな理由から。無理に信念を曲げて『総合美容室』という既成のスタイルにこだわるより、今できることを少しずつやっていく、という姿勢が潔い。

私は、まだZenzなどのグリーン・サロンを試したことがない。私の住むような田舎には、まだこういった最先端の店はやってきていないのだ。でも、値段もコペンハーゲンの主なサロンとあまり変わりがないとのことなので(見習いのカットで270DKK、オーナーで785DKK…デンマークのヘアサロンって高いんです!)、この次に髪を切り、カラリングをする時は、ちょっと遠出の用事を作って、ぜひグリーン・サロンに挑戦してみたい。


▼ Zenz     http://www.salonzenz.dk/

http://www.energitjenesten.dk/index.php?id=2369

http://www.dfkf.dk/Nyhedsarkiv/Gr%C3%B8n-salon.aspx

 

 


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