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無料電話の進化形「Google Voice」は通信市場を破壊するのか?

(記事要約)

グーグルが先日、新たな通信サービス「グーグル・ボイス」を発表した。これは同社が2年ほど前に買収したグランド・セントラル社のボイスメール(留守電)管理サービスを大幅にアップグレードしたもので、数週間後にはグランド・セントラルのユーザーだけでなく、一般の人々も使えるようになるという。

グーグル・ボイスには、米国内の無料通話、激安国際通話サービスも含まれており、3月12日付のニューヨークタイムズでは「成功すれば、グーグル・ボイスは、スカイプや既存電話会社など、小規模、大規模を問わずテレコム会社から収入を奪うことになるかもしれない」と評している。

(グーグルの無料電話管理サービスが脅威に ニューヨークタイムズ 3月12日付け)
http://www.nytimes.com/2009/03/12/technology/internet/12google.html?ref=technology 

グーグル・ボイスに関するYouTubeビデオ
http://www.youtube.com/watch?v=oFVXAqFNgic&eurl=http%3A%2F%2Fwiredvision%2Ejp%2Fnews%2F200903%2F2009031621%2Ehtml&feature=player_embedded

 

(解説)

「明日、連絡するよ」と言われ、後ではたと考える。自宅の電話にかかってくるのか、勤務先の電話か、携帯電話か、Eメールか、テキストメッセージか。こうした複数の通信をユーザー毎に設定される一つの番号を通して結び、どこからでもアクセスできるようにするというのが、グランド・セントラルという会社のサービスだった。つまり既存の電話通信への付加価値サービスである。

しかし同社を買収したグーグルは、このサービスにインターネットを使った「無料通話」というさらに大きな付加価値をつけて、「グーグル・ボイス」を生み出した。グーグル・ボイスはもはや付加価値ではなく、電話通信サービスそのものと言えそうだ。

グーグル・ボイスでは、ユーザー毎に設定された電話番号に電話がかかると、その番号を経由して、自宅の電話、勤務先の電話、携帯電話が一斉に鳴る。また、これらの電話を単一のボイスメール(留守番電話)でつないでいるので、あちらこちらの電話メッセージをチェックする必要がなくなる。さらにボイスメールに残された伝言メッセージをテキスト化して、Eメールや携帯電話のテキスト・メッセージにも送り、オンライン上で確認することも出来るという。

最大の目玉は、グーグル・ボイス指定の電話番号を通せば、全米どこでも無料で電話をかけられることだ。国際電話でも、例えば米国と中国、米国とロンドンの間が1分間2セントと激安である。

インターネットを使った無料電話では、eBayが所有するSkype(スカイプ)がある。スカイプはユーザー間のインターネット通話は無料だが、固定電話、携帯電話との通話は有料となる。グーグル・ボイスもインターネットを使うが、コンピューターや専用のソフトウェアから電話をかけるのではなく、どの電話からでも米国内なら無料でかけられる。グーグル・ボイスから指定される電話番号にかけると、一旦、自分のボイスメール・サービスにつながり、そこから相手先の電話番号にかけるという仕組みだ。

また電話に出る前に相手の話し声を聞く「迷惑電話のブロック」、通話中に電話を切り替える「テキスト・メッセージの送受信と保存」、伝言メッセージをテキスト化してEメールに送る「ウェブ上でのボイスメール管理」、「電話会議」など、多様な機能がある。

難点として、グーグル・ボイス指定の新たな番号を知人に周知する手間があるものの、全米への通話が無料で、国際電話で相手先が携帯電話の場合は、料金がスカイプの3分の1程度となれば、既存の通信サービスにとっては脅威となりそうだ。

一方、スカイプの親会社であるeBayによれば、インターネット電話サービスで先行しているスカイプにはすでに4億人が登録しており、一日あたり35万人があらたに登録していると、ニューヨークタイムズは伝えている。スカイプは、ビデオやビデオ会議機能を拡大してく考えで、「インターネット電話では、人々はビデオの質でソフトウェアを選択するようになる」と、スカイプ社長のジョン・シルバーマン氏は発言している。

いずれにしても景気回復の見通しが立たない米国では、「無料」の威力でグーグル・ボイスなどインターネット電話サービスがさらに普及し、既存の通信サービス産業に大きな影響を与えそうだ。


関連リンク
https://www.google.com/voice/about (グーグル・ボイスのウェブページ)

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0903/12/news074.html
(ボイスメールをテキスト化できる「Google Voice」プレビュー公開)

http://www.skype.com/intl/ja/ (スカイプの日本語ページ)


【編集部ピックアップ関連情報】

▼WIRED VISION  2009/03/16
 電話を革新する『Google Voice』に、通信市場が制覇される?
 米Google社は3月11日(米国時間)、電話音声関連の多様な機能を統合した
 新サービス『Google Voice』を発表し、壮大な構想を語った。
 同社は、Google Voiceが世界の通信ハブになることを目指すと述べている。
 携帯電話会社から『Skype』や米Microsoft社まで、非常に多くの企業が影響を
 受けることになりそうだ。無料サービスのGoogle Voiceは、「1つの番号で、
 生活のあらゆる場面にアクセス」を提供する。つまり、1つの電話番号への
 着信が、職場、モバイル機器、自宅、ホテルの部屋などどこへでも転送
 されるのだ。
http://wiredvision.jp/news/200903/2009031621.html

 

 


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google Voiceの波 2009年03月26日 08:42
スカイプが崩しきれていない既存の通信市場ですが、googleの参入によって 競争が生まれることで...