Entry

SNSが変えるジャーナリズムの形─Twitterは報道媒体たり得るか?

ブログやSNSの台頭とともに、ニュースの伝達方法が大きく変化している昨今だが、中でも注目を集めているのが報道メディアとしてのTwitterだ。ウォールストリートジャーナルは、シカゴのデポール大学がTwitterを研究する講座をもうけた事を報じ、Twitterがアカデミックの分野、とくにコミュニケーションやジャーナリズムでニュース媒体として認知されはじめていることを伝えている。

国際ニュースの舞台において、Twitterがその驚くべき速報性を見せつけているのはご承知の通り。特にイラクの選挙では、CNNを出し抜く局面がいくつもあり、既存のニュースメディアに所属するジャーナリストたちを嘆かせている。何しろ、事件の渦中にいる人々が携帯でリアルタイムに送信しているのだから、速さでかなう訳がない。実際のところ、ベテランと言われる記者たちのコンピュータ画面には、ニュースのTwitterがずらりと並んでいて、記者たちはそれらを常時チェックしている、という話もある。今や新聞記者でさえ現場の第一報をTwitterに頼る状態なのだ。

とはいえ、ニュースメディアとしてのTwitterの限界というものも多く指摘されている。
まず、140文字という字数制限の縛り。細かな状況描写は不可能で、“ハドソン川に飛行機不時着”のような、短いニュース速報がもっとも一般的・効果的だ。また、情報の確度の問題もある。Twitterの情報が本当かどうか、誰にも分からない。“マイケル・ジャクソン死亡”のニュースは、やはり既存メディアの発表があるまでは確定できない。それでも、現場からの第一報としてのTwitterの価値は計り知れない。ニュースメディアとしての存在感は増すばかりだ。

こうした中で、すでにTwitterを利用した市民ジャーナリストとしての名声を確立しはじめた人々も出てきている。Jay Rosen, Rachel Sterneと言った人々のTwitterはすでにかなり認知されており、多くのフォロワーを抱えている。こうなると立派なシチズン・メディアである。

こうしてみると、デポール大学がTwitterを科目として取り上げたのは自然の流れとも言える。ウォールストリートジャーナルによれば、この講座、“Twitterを主体とした最初の大学レベルの授業”を担当するのは、昨年同大学の修士課程を修了したばかりの、弱冠23歳のクレイグ・カナリー氏。カナリー氏はTwitterの情報を集めたニュースサイト、Breaking Tweets(http://www.breakingtweets.com/)を主宰しており、この分野ではすでに有名な人物だった。カナリー氏のインタビューによれば、Twitterの使用での最大のポイントは、情報をいかにSIFTする、つまりふるいに掛けるかにかかっている。玉石混交のTwitterから良質の情報をSIFTINGしていく技術が講義のポイントになるらしい。

メディア関連のシンポジウムで、必ずと言っていいほど取り上げられるTwitter。今やプロのジャーナリストにとってさえ有益なニュースソースだが、メディア学の一部として大学の講義の対象となる機会は今後ますます増えていくだろう。スタンフォード大学はデジタルジャーナリズムというタイトルのクラスでTwitterを大きく取り上げているし、ワシントン大学でもTwitterを利用したニュースメディアの研究が行われている。ジャーナリズム分野でのTwitter研究は本格的な盛り上がりを迎えている。メディアの歴史に大きな影響をもたらしたTwitterが今後どういう形で発展するか、要注目である。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○メディアサボール 2009/07/01
 「メディアが変わる、メディアで変わる?! Twitterの使い方」
http://mediasabor.jp/2009/07/twitter_1.html

○メディア・パブ 2009/07/24
 「ジャーナリストのTwitterアグリゲーター“Muck Rack”が急拡大」 
http://zen.seesaa.net/article/124132963.html

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/1139