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不況でも絶好調!プロゲームチームもある韓国オンラインゲーム産業

 世界的に不景気な話題が続き、先行きが不透明な見通しに不安が感じられ、韓国の主要産業である自動車や携帯電話においても軒並み苦戦をしている状況の中、不況をものともせず好調に業績を伸ばしているビジネスが、オンラインゲームビジネスだ。

 韓国のオンラインゲームは「ラグナロク」や「リネージュ」、「メイプルストーリー」など日本でもゲーマーの間で人気、知名度が共に高い。これまで、日本をはじめ、中国や東南アジアのアジア圏や欧米向けに輸出がされてきたが、最近では中南米やアフリカといった新興国にも輸出先が拡大されている。

 韓国が海外に輸出したオンラインゲームは2000年頃で1億ドル(当時のレートで約106億円)であった。それが、昨年2008年は10億ドル(約980億円)。オンラインゲームビジネスが好調な背景には、最近のウォン下落によるウォン安が追い風になっているという見方もあり、2009年はさらに輸出額が増加を続けるものと見込まれている。ともあれ、オンラインゲームの輸出額が10年を経たずして10倍近くになったという結果を見ても、韓国のオンラインゲーム産業に勢いがあることが分かるのではないだろうか。

 そもそも、韓国が「IT大国」と呼ばれるようになり、その名を確立させた要因の1つにオンラインゲームの存在が挙げられる。1997年に起こったアジア通貨危機でも韓国は今回同様に深刻な影響を受けた。そこで、韓国政府が打ち立てた打開策にITによる産業と経済の活性化を掲げたのである。これにより、ブロードバンドの整備と急速なネット環境の拡大で、一般家庭の高速インターネット設置率は70%を超えた。こうした国のIT政策と共に若年層の間で当時、爆発的に流行したのがアメリカのオンライン対戦型RTS(リアルタイムストラテジー)ゲーム「Star Craft(スタークラフト)」だ。専用ゲーム機やソフトを必要とせずパソコンで気軽にプレーができるというスタイルも流行に一役買ったと言える。

 日本では、以前に比べオンラインゲームのユーザーが増えつつあるとは言え、まだまだ関心を持つ層が一部に限られている印象は否めない。一方で韓国はオンラインゲームのユーザー数が人口の3分の1に相当する1,500万人であり、オンラインゲームに携わり、それを職業としている人々の社会的な地位も認知されている。韓国のプロゲーマーは国の機関である文化観光部の「登録認定」を受けなくてはならない。また実業団のスポーツ部のように、韓国の代表的な企業であるサムソンやLG、SKにはプロゲームチームがあり、プロゲーマーが所属している。プロゲーマーの存在や注目度は韓国では非常に高く、ファンクラブやファンサイトも多い上、その扱いは人気プロスポーツ選手やアイドルを連想させる。ケーブルテレビでは、プロゲーマー達によるゲームの対戦を解説・放映するゲーム専門チャンネルまであるのだ。

 2006年に韓国でトッププロゲーマーとして人気絶頂にあったイム・ヨファンの兵役遂行が社会的な関心を集めた。韓国では18歳以上の男子に兵役が義務付けられている。身体の問題や特別な事情が認められない限り免除はない。学業や職を途中で中断して兵役に就かなくてはいけない現状は、韓国の青年にとって非常に切実な問題である。彼のプロゲーマーとしてのキャリアが一時的とは言え、絶たれることを危惧する声も上がった。

 そこで、彼のプロゲーマーとしての人気や実力、世間の関心に注目した軍隊側は彼を空軍の「電算技術特別兵士」として配属させると発表した。兵役期間中に兵務に従事する傍ら、コンピューター技術を要する任務もさせるというものである。そして遂には、兵役期間中に空軍のゲームチームが結成され、リーグ戦などへの参戦もするまでになった。企業のみならず、国の防衛を背負う軍隊にまでもプロのゲームチームが結成されるとは驚きであるが、これも韓国でのオンラインゲームへの関心の高さと娯楽として定着していること、また、政府の積極的なIT産業支援の姿勢によるものが大きいと思われる。

 韓国でも、日本同様、新卒の採用状況が厳しかった2008年度の就職戦線だが、オンラインゲーム関連企業に限っては採用が増加したという。韓国のオンラインゲームでの次なるねらいは、2012年までに輸出額を36億ドル(3,528億円)にまで伸ばすこと、「娯楽」、「若者向け」といった限られた分野や世代にとどまらないオンラインゲームの開発にも力を注ぐとのことだ。

 ただし、最近では中国のオンラインゲーム産業での急成長や、ニンテンドーDSの韓国での人気といったこともあり、追われる立場の韓国もさらなる戦略の工夫が求められるところだ。
 

 


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