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英国のイラク派遣部隊、中米のジャングルで訓練実施

(記事要約)
2006/11/17 defenceより(英国国防省ホームページ)

英国国防省(Ministry of Defence)は、イラク南部に展開予定のイギリス陸軍、約1000名の兵士が、中米のベリーズにおいて訓練を受けたと報道した。その演習名「トロピック・ストーム(熱帯低気圧)」の通り、ジャングルを利用したサバイバルな訓練だ。

熱帯特有の高温多湿な気候と複雑な地形、そして虫や野生動物といった厳しい環境が、兵士たちの訓練には最適だという。当初、不安を抱いていた20歳前後の若い兵士たちも「なかなか経験できない貴重な訓練だった」と満足そうにコメントを残している。

なお5週間の日程をすべて終えた兵士には、カリブ海でのウインド・サーフィンやスキューバ・ダイビングといった「追加訓練」まで用意された。

関連記事リンク:
http://www.mod.uk/DefenceInternet/DefenceNews/TrainingAndAdventure/ForgetTheCelebritiesIrishGuardsFindOutWhatLifeInTheJungleIsReallyLikevideo.htm

(解説)
日本の陸上自衛隊はイラクから無事撤収したが、イギリス兵たちのイラク戦争はまだ終わっていない。

中米の小国・ベリーズ(Belize)。ここはメキシコの南、グアテマラの東に位置する人口わずか30万人弱の小さな国だ。かつてイギリスの植民地であったため、中米で唯一の英語圏であり、1973年まではイギリス領ホンジュラス(British Honduras)と呼ばれていた。

現在でも政治や教育においてイギリス統治時代の影響が感じられる。ベリーズの最高統治者である総督(Governor General)がイギリス女王からの任命であるということもそのひとつだ。もっとも総督制度は日本の象徴天皇制に近く、実質的な政治権力はない。

そんな歴史を持つこの国なので、国防に当たってもイギリスと深い関係にあるわけだ。ベリーズ防衛軍は1000名規模の小さな軍隊だが、イギリス軍の大きな支援を受けており訓練を共にすることもある。また、ベリーズ側がイギリス軍にジャングルなどの訓練地を提供することもあるのだ。

ベリーズの首都で、ツアーガイドを務めているマルコスというベリーズ人がいる。彼はイギリス軍の「訓練ガイド」を3年ほど担当したことがあるという。
兵士たちは、人を襲うワニのいる川、猛獣のジャガーが生息する森といった厳しい環境を舞台に訓練するのだ。

当然のごとく大きな危険が伴う。マルコスは彼らと生活を共にし、ジャングルでの掟や生きのびる技を伝授し、兵士の安全確保のために尽くしたという。

彼は、世界最強の特殊部隊ともいわれるSAS(英陸軍特殊空挺部隊)の訓練にも同行したことがあり、「サバイバルの極みだった」と振り返る。

これは、先に述べたように、ジャングルで行われるという訓練環境は同じだが、食料を持たずに臨み食事さえ現地調達しなければならない非常に厳しい訓練だったようだ。マルコスは、食用にできる植物・動物等の知識も伝え、兵士の食事をサポートしたという。

過酷な訓練を終えた兵士たちを癒してくれる海。ベリーズはまた、カリブ海に面した海洋国でもある。世界遺産にも登録された世界第2位の全長を誇るバリアリーフや、海に点在する美しい島々は、多くの観光客で賑わう。山あり、海あり、マヤ遺跡ありの秘境として、日本でも密かな人気を呼びそうだ。


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