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新富裕層はどこからきたのか

「格差社会」、「勝ち組」と「負け組」ーーー。小泉純一郎内閣が残した「負の遺産」として使用される言葉だ。ここでいう「格差社会」は、たとえば、過去の日本社会にあった「身分制度」といった歴然としたものでも、南北問題になっている「絶対的な貧困」のことでもない。 小泉内閣が非正規雇用の拡大を助長したとよく指摘されるように、パートタイマーやフリーアルバイター、契約社員、派遣社員などの「非正規雇用」が増加してる。ただし、統計上は小泉政権になる前から増加している。小泉内閣はその「象徴」だったにすぎない。さて、そうした「非正規雇用」の増大の中で生まれてきた概念が「日本版ニート」だった。 もともと「NEET」は、イギリスで生まれた概念で、16から18歳の、教育機関にも所属せず、就職もせず、職業訓練にも参加していない人たちで、労働現場から排除されてきた人々を指していた。つまり、労働政策の分類にすぎない。 しかし、「日本版ニート」は、働く気のない、将来に希望を見いだせない若者たちといったニュアンスで使われる。内閣府の「青少年の就労に関する研究会」の中間報告では、「学校に通学せず、独身で、収入を伴う仕事をしていない15から34歳」=「若年無業者」のうち、「非求職型および非希望型」をニートと呼ぶようになる。現実の労働政策とは切り離され、若者の心理や教育の問題とされた。 若者世代の中でも、一定の成果に基づくビジネスに進出してくる人たちも出てきた。インターネットでアフィリエイトで「稼ぐ」人たちだ。ある女子大生(21)は、商品の購入意欲が湧くようにブログで書き、一定の報酬を得ている。また通信販売のサイトも運営し、現在は月収100万円を超えるようにもなった。会社の設立も考え始めている。 一方、企業でも「成果主義」が導入されている。「ビジネス・レーバー・トレンド研究会」の「『成果主義』成功のポイント」(2005年7月20日)によると、「個人の行動を、組織の目標に向かわせるように調和させるためには、情報の伝達が不可欠」で、金銭的なインセンティブ(賃上げやボーナス)と非金銭的なインセンティブ(表彰、昇進、昇格)とをうまく組み合わせるべき、としている。 ある会社では、査定で影響される部分は100%だったが、動機付けとのバランスを欠き、収益が悪化。他社に吸収されてしまった。一方、別の会社では、査定で影響されるのは6割。残りは勤続年数で決まる。しかしそれだけでも、動機付けが高まり、効果はみられた、という。 「まずリスクシェアリングへの要請とインセンティブ設定に関する要請をうまくバランスさせるということである。・・・略・・・つけ焼き刃的に成果主義を導入したとしたら、致命的な失敗にいたる可能性は大である」 ニュービジネスとして昨今、注目されているのが、ネットビジネス、ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)だ。 2004年2月には、「mixi」(有限会社イーマキュリーが運営。のちに会社名を「ミクシィ」に変更し、株式会社化へ)や「gree」(個人サイトとして開設。同年12月にグリー株式会社を設立)、3月には「トモモト」(Life onが開設。現在、NTTマーケティングとプロフェッショナルバンクが運営する「キャらリア」と統合。06年3月、完全移行)が相次いで開設された。 結果として、mixiが圧倒的な会員数を誇って、SNSビジネスに君臨している。後続のSNSは、規模ではなく、多様性に目をつける「ニッチなビジネス」を展開している。ミクシィの笠原健治社長は、ITmediaのインタビュー(06.09.14)で、以下のように答えていた。 「ルールを変える可能性があるサービスとして、大きくなる可能性を持っていると思います。mixiによって、人生が豊かな方向に変わったと言ってくださる人も増えています」 このmixiも利用者の動機とうまくミックスさせ、広告主に対する「成果」(ページビュー)を関連させたものだった。それによって会員数も1000万人に近づいた。 「格差社会」が話題になるとき、フリーターやニート、ワーキングプアという言葉が出てくることが多い。たしかに、そうした問題は現実として存在している。しかし、その現実の中で、よりよい働き方を模索する人々もいるのだ。


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