Entry

貸金業法改正後に消費者金融業界はどう変わるか?

いま、消費者金融業界が、大リストラを進めている。

「レイク」を経営するGEコンシューマー・ファイナンス(東京都港区)は3月になって、年内に有人店舗の約6割の閉鎖、そして6月までに正社員の約15%にあたる400人規模の希望退職を実施すると発表。

武富士は、有人店舗の17%にあたる91店舗を5月末までに閉鎖、と発表した。アイフルも有人店舗を現在の463店から100店に縮小。無人店舗を1440店から900店に削減する予定だ。

消費者金融業界に何が起きているのか。

消費者金融の利用者の多重債務問題が社会問題化して久しい。多重債務を苦にした、自殺、一家心中、夜逃げをする被害者の増加。

ついに昨年、貸金業法が改正された。
貸金業法改正法について:金融庁 http://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/index.html
 
今回の法改正は消費者金融業界を震撼させる内容になっている。

「債務者の返済能力を超える貸付けを禁止し、厳格な総量規制を導入する」

これまでは、この「総量規制」という法的な歯止めがなかった。このため、消費者金融から金を借りた人は、返済に困ると、その業者の借金を返すために、別の消費者金融業者から金を借りることができた。結果として、多くの多重債務者を生み出すことになった。これが今後はできなくなる。

また、現在の消費者金融の貸付金利は、年25%から29.2%になっている。これが改正後、年15から20%に引き下げられる。これまでの金利はグレーゾーン金利と呼ばれている。29.2%以上の金利設定は刑事罰の対象になる。消費者金融各社は29.2%以下の金利で利益をあげてきた。法改正によってこのグレーゾーン金利による利益は消滅する。

消費者金融問題に詳しいジャーナリスト三宅勝久氏は、今回の貸金業法改正を高く評価している。その一方で、「消費者金融によって生活が破壊される被害は消えないだろう」と悲観的だ。

「グレーゾーン金利の問題が決着したことは、消費者には喜ばしいことだ。これまでの消費者金融の金利27から8%程度、この金利では、ふつうの人は絶対に返済できない」
 
一度、消費者金融に金を借りると、利息を返すので精一杯という借金漬けの生活にさせられることを強調した。

「消費者金融は、使用目的を問われることなく審査なしで金を借りることができる。過剰融資をして、利息を無理矢理取り立てて稼いできたのが消費者金融。金利が20%に下がったとしても高金利であることに変わりはない」
 
貸金業法改正によって、消費者金融各社はどのような生き残り策を考えているのか? 消費者金融業界の「次の一手」は何か。

「資金力のない中小の消費者金融は倒産するでしょうが、実態は黒字倒産。なぜならば、消費者金融業者は借り手から請求される過払い利息を払いたくないから。いわば、逃げのための倒産が増える。

大手の消費者金融は過払い利息を支払う必要があるため赤字決算をだした。赤字決算では株主に対する責任を果たすことができない。業績アップのために正社員の首切りを決めた。消費者金融業者のほとんどがオーナー経営。

経営者が損をしなければよいという考えでしょう。しかも、消費者金融業界には組合がありませんから、社員はやられ放題です」

消費者金融のターゲットは変わりつつあるという。

「個人事業主への貸し付けが増えている。年15から20%の高金利で事業資金を貸す。ビジネスをやめるわけにはいかないという事業主の弱みにつけ込んでいる」と三宅氏は警告する。

消費者金融各社は、新しい法律のもとで生き残り策を模索しているが、多重債務者を生み出すことで儲ける仕組みは、なかなか消えないというわけだ。


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/115