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ストレスに克つタンポポコーヒー(緑の薬箱 その1)

今回は植物療法の実践編として、ハーブティーの中でも特に人気の高いタンポポコーヒーをご紹介したいと思います。

ストレスに囲まれるとついついお酒やタバコ、それにコーヒーなどの嗜好品に手が伸びてしまうもの…。これらの嗜好品は適度に楽しめば心と体に休息をもたらしてくれるのですが、摂りすぎると健康を害してしまいます。

コーヒーを例にとると、コーヒーに含まれているカフェインは中枢神経を興奮させ、脳疲労を回復させます。一方、摂りすぎると、不眠だけでなく膀胱炎や尿道炎などの泌尿器系の感染症にかかりやすくなったり、女性の場合は乳腺炎を起こしやすくなるなどの害をもたらします。

私はハーブを仕事にしているにも関わらず、喫茶技術を教える学校に籍を置いたこともあるほどコーヒーが大好きなのですが、個人差があるもののコーヒーは1日4から5杯程度に抑えるのが良いようです。

さて、今回ご紹介するタンポポコーヒー(ダンディライオンコーヒー)とはコーヒーの豆を焙煎するのと同じようにタンポポの根を焙煎したものを熱湯で抽出したハーブティーです。

1970年代に米国西海岸で自然・健康志向の人々が新しいムーブメントを創りましたが(今のロハスのようなものですね…。)、その際にカフェインの有害性に対して「ノンカフェインのヘルシーコーヒー」として注目されたのが、このタンポポコーヒーだったのです。


その後わが国にも紹介され、自然食レストランなどで人気のメニューとなり、現在に至っています。(実は戦後のコーヒー豆不足の時代に「代用コーヒー」としてタンポポの根や麦芽などが使われた時期があったようですが…。)

ところで、タンポポの根に含まれるタラキサシンと呼ばれる苦味成分は肝臓の働きを活発にし、デトックス(解毒)効果をもたらします。また、イヌリンと呼ばれる成分は腸内のビフィズス菌などの有用菌の増殖を助け、腸内環境を改善します。

通常のコーヒーは摂りすぎると便秘を招きますが、タンポポコーヒーが逆に便秘を改善するのはこのためです。さらに、植物の根は植物にとっての貯蔵器官なので、ビタミンやミネラルを豊富に含み、滋養強壮効果をもたらします。

タンポポコーヒーの作り方は、まず焙煎したタンポポの根を入手します。コーヒー豆のように自家焙煎にチャレンジしたい人は、細切したタンポポの根を弱火から中火で10分間ほど焙煎します。本には「フライパンで炒める」と書いてありますが、それだと焦げてしまうので、豆を炒る網を使って焙煎します。

抽出方法は紅茶と同じで、1人分ティースプーン山盛り1杯(約3g)のタンポポの根に熱湯200mlを注ぎ、フタをして3分間抽出すればできあがりです。

女性に人気のタンポポオーレは、ティースプーン山盛り2杯のタンポポの根を熱湯60mlで3分間抽出し、さらに牛乳140mlを加えて弱火で再加熱すればできあがりです。タンポポコーヒーに軽くホイップした生クリームを浮かべてレモンの皮とシナモンパウダーを乗せ、カプチーノスタイルにしてもおいしくいただけます。

タンポポコーヒーはタンポポの根を用いて作りますが、タンポポの黄色い花はルテインと呼ばれる黄色の色素成分を含み、眼の健康を保つことで知られています。

このタンポポの花はキクの花と同じように食材として食べることができます。一方、タンポポの葉はカリウムを豊富に含み、利尿効果をもたらします。(タンポポの葉はピサンリと呼ばれますが、「小便小僧」の意味であることはあまり知られていません。)

このように、タンポポは花から根まで余すことなく用いることができます。通常、タンポポは雑草とされていますが、雑草どころか宝の山です。植物療法は無駄のないエコロジカルな医学なのです!


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