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ヨガの特許・商標登録を試みる外国勢にNo! インドの知的財産防衛策

<記事要約>

インドはヨーガのポーズなどが記述されたサンスクリット語の賛歌などを5ヶ国語に翻訳する予定である。

AYUSH(The Department of Ayurveda,Yoga,and Naturopathy,Unani,Sidda and Homeopathy)は、いくつかの代表的な研究所や大学(Morarji Desai National Institute of Yoga ,Yoga and Kewal Dham in Pune)に、ヨーガのアーサナ(ポーズ)が記述されたサンスクリット語の詩を、英語・ドイツ語・フランス語などに翻訳する事を約束した。

この動きは、最近の外国勢による、ヨーガ関連パテント登録の試みに対する対抗策である。インド系アメリカ人、ヴィクラム・チョウドリーは、スチームヨーガ(ホットヨーガ)をパテント登録しようとした。このような事情により、インド独自の古来からの知的・文化的財産を、パテント(特許)登録することによって、よその国に略奪されるのを防ぐことが急務となっている。

まず第一段階として、12月までに150のアーサナ(ポーズ)が翻訳される予定。そして計画では、最終的には1500の最も一般的なアーサナとクリヤ(浄化法)がカバーされる予定だ。

また、アーユルヴェーダ(インド伝承医学)の薬や療法の知識などの、その他の知的財産についても電子図書館に向けて作業が終わろうとしている。インド古来から伝わる12万にも及ぶ薬の処方がすでにデジタル化された。

現在、ヨーロッパ連合、アメリカ、日本の特許局でこの伝統の知識の詰まった図書館をどのように共有するか、審議されているという事だ。伝統的知識文献として記録されたデーターベースをこれらの特許局が受け取れば、もう今後、ヨーガやアーユルヴェーダなどの知識を他国が登録申請しても承諾されないはずだ。


<解説>

突然「Zazen(座禅)」がアメリカで特許登録されたり、般若心経に特許登録ナンバーがついたり、「咳がひどい時には刻んだネギを包んだガーゼを喉に巻くといい」と言っていたおばあちゃんの知恵袋的治療法がどこかで特許登録されたりして、その療法を使うにあたり使用料を払わなければならなくなったらいかがなものか?

冗談も休み休みにしてください、と言いたくなるだろう。

だが、そんな冗談を平気でやってしまうのがアメリカである。

以前、あるインド人が「ニーム(Neem)」について、アメリカに対して怒りながらとうとうと語っていた事がある。

その事を思い出し、調べてみたところ、こういう事だそうだ。

インド古来より、民間で虫歯予防、美容、害虫よけ、などに使われてきた「ニーム」という葉がある。そのインド産のニームの葉に関連する特許をアメリカと欧州が次々と登録してしまい、数年で特許登録数が100にも及んでしまったのだ。

その後、あるインド人企業家の訴えで大部分が取り消されたのだが、ひとつの国だけが頑として取り消さなかったそうである。それがアメリカ。「ニームに関しては、今までに文書化も特許化も一度もされた形跡がない」と言い張っての事だったそうだ。

おかげでインドの「民間療法」は、一部、使用料金を払わねばならない形となってしまった。もはや「民間療法」とは言えなくなってしまったわけだ。

そこへ今度は、先々週の新聞に「ヨガの知識やポーズ、関連商品などが米国で特許・商標登録されているのは、インド数千年の知的財産を侵すものだとして、同国政府は2日までに、登録の取り消しを求めて米国に抗議する方針を決めた」と出ていたので、とうとうヨーガにまで「横領」の魔の手は忍び寄っているのか!と思った。

その後、とりあえずアメリカはインドの抗議に対して「ヨーガのアーサナ(ポーズ)に関しての特許登録はされないだろう」という答えを出したようだ。

だが、アメリカはヨーガに関する著作物の著作権は生じるだろうと付け加えている。インドの古代からの精神的システムであるヨーガは近年、アメリカのセレブの間で大流行し、年間3億ドルビジネスとなっているのだが、アメリカはこれまでにヨーガに関する150の著作権、134のヨーガアクセサリーの特許、2315のヨーガ関連のトレードマークを発行してもいるのである。

そういった事実を受けて、今回のヨーガのアーサナ(ポーズ)の特許登録に関してはアメリカの答えは「承諾されないだろう」だったものの、インドは引き続きヨーガに関する特許関連、著作権関連に警戒をするつもりだ、との事である。

今年中には、基本的なアーサナとクリヤ(浄化法)の電子図書化作業が終わる見通しだそうだ。

しかし、古来からのそういった知恵を、要所要所だけかいつまんで外国語に翻訳したら、薄っぺらいものにならないだろうか・・と、思わずにはいられない。ましてや、目的が「横領阻止」とあっては、その「かいつまみ方」によっては、古来からの精神的財産の深みを失う可能性が高い気がする。

柔道がオリンピック競技となり、時間制限制が導入され、「有効」や「効果」でポイントをかせぐ戦い方がひとつの戦術となったことで、柔道の本質が失われたと言われているのと同じように。

それまでずっと、限られた場所、限られた人の間だけで大切にされてきた素晴らしいものに、世界中の人が接する事ができるようになるのはいい事に違いない。

その反面でアメリカという国はつくづく、世界を薄っぺらくして、見えない部分は無いものとして踏みにじり、物事から精神を抜いちゃうんだよね、と思わずにはいられない。

そもそもヨーガが教えているものは、ビジネスライクとは正反対のところにあるものなのだ。この皮肉にいつになったら真面目に気がつくのだろうか。ヨーガのポーズだけ別個で登録するなんて、命の無い抜け殻を登録するのと同じである。


■関連情報

●医薬品・化粧品・食品に関する情報提供 2007/06/04
 「ヨガを特許登録? いかれた米国の拝金主義者の思いあがり!」
http://yakuji.exblog.jp/5547308/

●Chris and Elli Harrington Online 「アーサナの特許!?」2005/12/12
http://harrington.jp/en/comment/reply/35

●from VALVANE
  「ヨガ」って誰のもの…? 「ヨガ」の特許・商標登録2007/06/03
http://valvane.blog17.fc2.com/blog-entry-717.html


●中国情報局
「青森」県産りんごの中国輸出が困難、対応に苦慮 2006/03/16
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=0316&f=column_0316_001.shtml

●今の日本、どげんしたとか:イザ! 2007/06/27
シナが日本の地名もパクリで商標登録─ミート社同様の商法は日常茶飯事の「偽装大国シナ」
http://satsuma-tt.iza.ne.jp/blog/entry/207133

●格闘する読売ウイークリー編集部 「中吊り大賞!」 2007/06/27
http://yomiuriweekly1.hontsuna.net/


●Neem Oil(Rose Defense) 「植物油(ニーム・オイル、Neem Oil)」
http://www7.plala.or.jp/organicrose/neemoil.htm

●バイオの故里から 
「インドセンダンの自然農薬<ニームNeem> 」 2005/05/12
http://blog.goo.ne.jp/riibs/e/4f01f5ea79ce5dda6466b809c58ba633

●Neem-ニーム(インドセンダン) 【国連も認めたミラクルツリー】
 Neem(ニーム)って何だ?─環境と共生・共存した社会生活が実現─ 2005/01/19
http://neem.tea-nifty.com/neem/2005/01/neem.html

●「ニーム」─ミラクルツリーの秘密を探る─ Neem Q&A
http://www.yamatoh.co.jp/neem/qa.html

●日本ニーム研究協会
http://neemjapan.org/mokuji.html

●ニーム(Neem)みねらるネット
http://neem.mineral-net.com/

●ニーム(Neem)はなぜ効くのか? ─IDE SHOKAI ONLINE─
http://www.ideshokai.com/navi/kikaku2.html

 


 
 

 


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