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インターネットの普及でジャーナリストの情報収集法はどう変わったか

●インターネットは取材フィールド
 
私の取材・執筆において、インターネットは欠かせない情報源のひとつになっている。そもそも、私がインターネットを始めたのは1998年で、もう10年近くになる。

当時はインターネットの普及率がそれほど高くない時期だった。その普及率をインターネットで調べてみると、「パソコンとインターネットの普及率の推移」(http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/6200.html)によると、98年の時点では11%に過ぎない。

そんな時代にインターネットを始めても、情報収集という意味では、それほど役に立たなかった。そのため、「収集ができないのなら、発信を」と思った私は、当時から自分のサイトを「html形式」で作ったものだった。Macintoshユーザーの私だが、当時Mac用のホームページ作成ソフトで手軽なものがなく、タグで打ち込んでいた。

そうしていくうちに、ワニマガジン社のムック「隣の病人読本 健康な人はもういない」で、ネットを舞台にした問題を執筆した。ひとつは、摂食障害の人たちが電子掲示板を利用して、自らの弱みや悩みを告白していたこと。

いまでは、メンタルヘルス系の電子掲示板では当たり前のようにされているやりとりだが、私の知る限りでは、摂食障害の人たちがもっとも早かった。

また、オウム真理教がニフティのパソコン通信で布教活動をしていたことや、オウム心理教のウォッチャー(オウマー)たちがネットでの言論活動をしていたことも実に興味深いものだった。

こうしたことをヒントに、生きづらさとインターネットの関係に関心を抱いた私は、処女作「アノニマス ネットを匿名で漂う人々」(情報センター出版局)を出した。また、当時、大学院生だったことで、インターネットと居場所に関する論文を執筆したものだった。

つまり、私にとっては、インターネット自体が取材フィールドだった。


● 無料の情報源として

では、情報源としてのインターネットを考えてみると、ニュースサイトとして最も役に立つのは、現在では毎日新聞の「MSN毎日インタラクティブ」(http://www.mainichi-msn.co.jp/)だ。サイトに掲載されたニュースは、2週間は検索できる。かつては「佐賀新聞」のサイト(http://www.saga-s.co.jp/)が便利だった。今では有料になっているが、「佐賀」ではかつて、共同通信の配信記事を含め無料で過去の記事が検索できた。時間がない場合は便利であった。

現在、過去の記事を長期間にわたって無料で検索できるサイトはなくなった。そこで、時間がある場合、大学図書館で新聞記事検索をしている。主要新聞の記事が地方版を含めて検索できる。これは出身大学の図書館が近くにあるからできることだ。時間がない場合は、有料になってしまうが、新聞記事のデータベース(たとえば、G-Searchhttp://db.g-search.or.jp/)を使うことにしている。

また、かつてはわざわざ役所に問い合わせていた「統計資料」は、現在では公式サイトにpdfファイル等で公開されていることが多くなった。もちろん、サイトに公開していないものも多く、そうした資料は直接入手するか、別のルートを開拓しなければならない。

そして、「2ちゃんねる」情報もまだ活用できる。たしかに、「2ちゃんねるでしかない情報」というものはほとんどなくなりつつある。しかし、「2ちゃんねるにもある情報」は、取材をする上で役に立つことがまだまだある。

たとえば、少年事件が起きた場合、その当事者がブログ等を書いていることがある。警察が捜査すると、ブログシステムを提供している会社が内容を削除してしまう。

その内容を知りたい場合、そのアーカイブを保存している「まとめサイト」などのURLは、2ちゃんねるにリンクされている。「たかが2ちゃんねる。されど2ちゃんねる」である。

さらに、ある人物を取材する前に、その人の公式サイトやブログ、ファンサイトで基本情報をチェックすることができる。その人のことを知らず、過去の本や雑誌でのインタビューをチェックしきれない場合は、しばしばある。そうしたときに、ブログでのチェックは便利であろう。

最後に、執筆時の利用だが、もっとも使っているのは「Yahoo!辞書」(http://dic.yahoo.co.jp/)だ。日本語の表現に迷っている、漢字が分からない、英語でのスペルが曖昧な場合などは、調べてチェックしている。

こうして、取材フィールドとして、情報源・取材源として、さらに最後のチェックツールとしても、インターネットは欠かせないメディアとなっている。

 

■関連情報

●MediaSabor  2007/06/25
 「ネット社会におけるジャーナリストの情報収集と取材姿勢のあり方」
http://mediasabor.jp/2007/06/post_139.html

● IT-PLUS 2007/06/18
『ネットが「スクープ」を生む時代に既存メディアが行く道は?』
http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMIT11000018062007

● 池田信夫blog 2007/01/16
「ビジネスマンが2ちゃんねるから学ぶべきこと」
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/16d34ed43d9cd8a5a20743d93e1f8ca9

● ITmedia オルタナティブ・ブログ 2006/08/21
「2ちゃんねるが厄介な『空気』を追い払った」史観
http://blogs.itmedia.co.jp/serial/2006/08/2_f80e.html

 

 


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