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オーストリア・スイス共催のサッカー欧州選手権2008、意外なエコ対策


●関連グッズの販売も盛ん

サッカーファンにとっては、また“熱い夏”がやってくる。来年6月開催(6月7日から29日)の、第13回サッカー欧州選手権「ユーロ2008」まで、1年を切った。ワールドカップに次いで重要だと言われる欧州選手権。今回も、世界中の注目を集めるのは必至だ。

今年の開催国は、ここスイスと隣国オーストリア。本大会参加国は現在16カ国で、大会の規模が大きくなってきているために、2000年のベルギーとオランダに続いて、今回も共同開催の形が採られる。2012年の第14回も、ウクライナとポーランドに決定している。

最近は、サッカー界でもエコロジーが広まってきている。今回の「ユーロ2008」にも、随所にエコロジーの考え方を見ることができる。

まずは、大会のロゴ。大会主催者の欧州サッカー連盟(UEFA)によると、ロゴはロンドンのイングリッシュ・ポケット社の制作で、スイスとオーストリア両国の美しい自然をモチーフにしている。山に抱かれたサッカーボールの模様も、アルプスをかたどっているという。

試合会場は各開催国4都市で計8都市、1つの都市に1つのスタジアムが設けられる。各都市にはホテルが多くあり、公共交通機関が発達している。そのため、公共交通機関の利用が中心になるはずだ。

たとえば、3試合が行われるチューリヒでは、レツィグルント・スタジアム周辺には駐車場はなく、チューリヒ中央駅からはバスやトラム(路面電車)を利用することになる。また、中央駅からスタジアムまでに「ファンの道」を設けて、徒歩での移動も勧める。

そしてこのレツィグルント・スタジアムも、環境に配慮している。(スタジアムは現在建設中で、8月の末に完成予定)

第一には*、太陽熱集積機能を備えている点だ。ソーラーパネルを装備して太陽熱を利用するスタジアムは、日本にも登場しているが、レツィグルント・スタジアムの機能はチューリヒ市で最大となる予定。80世帯分の電力を供給することになるという。第二に*、旧スタジアムの廃材や土砂を新スタジアム建設に再利用しているため、ゴミ廃棄場への運送や新規材料の運送を節約している点だ。 (*NZZ 6月22日の記事より)。

ほかにも、ちょっと意外なエコロジー対策がある。宿泊施設のエコロジーだ。といっても、エコホテルの増加ではない。宿泊に、一般家庭を利用しようというのだ。

ウェッブサイト「スリープイン http://www.sleep-in.ch 」には、一般家庭が宿泊提供の広告を無料で掲載している。7月中旬の時点で、スイス内で256のホストが登録されている(オーストリアでは8ホストのみ。一部、宿泊施設からの登録もあり)。宿泊料金は各ホストが決める。条件もさまざまで、禁煙者希望、留守にするためすべて貸します、朝食付き・シャワー/トイレ可で庭にテントを張って寝てください・・・など、ホストの都合が最優先されている。ゲストは、直接ホストに問い合わせる。

ホスト側はもちろん利益目的の人もいれば、お金目的ではなく、知らない人と出会って楽しい時間を過ごしたいと考える人もいる。サイトを立ち上げた2人の男性は、「異なる文化や習慣について、お互いに学ぶことができます。滞在のルールはフェアプレーですよ」とコメントしている。

一般家庭での宿泊が、なぜエコロジー対策になるのか。

1. ) スイスの人たちがいくらきれい好きといっても、やはり一般家庭ではタオルやシーツを毎日取り替えない、

2. ) 一般家庭では掃除機を毎日かけない、

3. ) ホテルだと廊下など常時電灯がついているが、一般家庭では不必要な電源はすぐに切る 

4. ) ホテルだと残飯が多く出やすい

といった点が挙げられるだろう。


おそらく、この2人の男性はエコロジー精神からサイトを作ったのではないと思う。しかし、なかなか面白いアイデアだ。そして、実際に賛同する人たちがいるというのも、日本の感覚とは違う。日本では「内と外」の感覚が強く、気軽に知らない人を家に招いたりしない。

「ユーロ2008」のゲストたちは、サッカー観戦のためだけにスイスを訪れるわけではない。観光も兼ねてだ。ドイツからの訪問者が最も多いと予想されているが、新規観光客の獲得に期待がかかる。

「スリープイン」を介しての地元の人たちとの交流は、スイスという国やスイスの人々の長所を伝えるだろう。この大イベント終了後も、またスイスへ行こうという人たちがきっと出てくるにちがいない。宿泊施設のエコロジーには、こんな“得点”もある。


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