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スーパースター!ラジニーカーント ─インド映画界で最もギャラの高い俳優─

<記事要約>

インドの大スーパースター!ラジニーカーント(Rajnikanth,Rajinikanth)の2年ぶりの最新作「Sivaji :The Boss(シヴァージ:ザ・ボス)」がインド全国の映画館及び、インド以外でも25カ国の850の映画館で封切られ、大ヒット中である。

「Sivaji :The Boss」の製作費用は、なんと78カロールルピー(約20億円)、ラジニーカーントのギャラは20カロールルピー(約6億円)、先週封切られた時点での配給会社へ支払われた金額が96カロールルピー(約29億円)。

マレーシア(タミル系インド移民が多い)では、53本の約束が42本のフィルムしか届かなかった間違いにより、暴動まで起きたらしい。

また、「Sivaji :The Boss」関連のコンテンツが一日に5万回以上もダウンロードされ、封切から2日間は、サーバーが30分以上もダウンした。

チェンナイ(タミルナドゥ州の州都)では初日に「Sivaji :The Boss」を見ようと夜中から長蛇の列ができあがり、その結果、初日だけで15000人が「Sivaji :The Boss」を見た。

アメリカのニュージャージー州に住む38歳のインド人ITワーカーは、なんと予定していた3年ぶりのインド帰郷をキャンセルしてしまった。なぜならば、出発予定日の次の日が「Sivaji :The Boss」の公開日だったからだ。

初日の初回のチケットを200ドルでなんとか手にした彼は言う「それでも俺はごく普通のファンであって、ハードコアファンでも何でもないさ」。ではハードコアファンとはどんな人々を言うのかといえば、現在38000人の熱狂的会員を持つラジニーカーントのファンクラブに所属しているようなファンを言うのだそうだ。

インドの絶対的なヒーローであり、他に比較できる存在すらいない大スーパースターであるラジニーカーントはまたもや、154本目の最新作でその地位を更に強化した模様である。


<記事解説>

年齢57歳。ハゲで、映画出演の際はヅラ着用。なんだか全ての部品が妙に真ん中に寄り集まってしまったようなその顔はかっこいいとは言いがたい。というか、顔の上半分以上がオデコでは?

体型もマッチョでもなく、引き締まっているわけでもなく、肉体美とは程遠いもので・・・・・、というかおじさんのそれ。肩幅が妙に狭くて不安定な気するが、実際は肩幅が狭いのではなく、頭がインド人にしてはヘンにデカいのだ。いや、あれはヅラのせいか?というのも、どの作品もヅラがヘンな気がする。中途半端のおかっぱのような、おかっぱよりも短いけれど、なんだかまとまりのないあのヅラはなんだろう。

笑顔も、爽やかとは程遠く、やはり・・・・暑苦しいおじさんの・・・??

そんなラジニーカーントなのに、彼は泣く子も黙る大スターなのだ!!

しかもそんじょそこらの大スターとはわけの違う、「生きる伝説」と言っても過言ではないくらいのホンモノの大スターなのだ。ホンモノって?

インドでは、子供からおばちゃんから老人にまで慕われる、それこそが本物のヒーローであり、そして若者にいたっては、我らが兄貴、我らがボス!「兄貴ィ!ついてくぜ!」といった熱い眼差しをいやおうなく注げる相手、それこそがホンモノの大スターである。「アイツ、モテやがって」とか「いけすかないぜ」などの嫉妬の対象になるようなレベルはとうの昔に超越してしまっている。

ここでひとつ説明しておくと、ラジニーカーントは「インド映画俳優」と言うよりは「タミル映画」の大スターである。普通に「インド映画」と言った場合、ボリウッド(ハリウッドとボンベイ(ムンバイ)を掛け合わせて作られた言葉)を思い浮かべるのが普通だろうが、彼はボリウッドの作品にはほとんど出ない。

(映画大国インドの映画産業の中心地はムンバイで、そこで主に作られる映画はハリウッドをもじって「ボリウッド映画」と呼ばれ、近年では世界でもその名を聞くようになってきている。)

普通は首都デリーでは「タミル映画」は主要映画館で公開されることはない。タミル語圏(タミルナドゥー州)でだけ上映されるものなのだ。だが、「Sivaji :The Boss」はタミル語のまま、首都デリーの主要映画館においても公開している。それだけでも、いかにラジニーカーントが大スーパースターであるかがお分かりいただけるだろう。

ちなみに「Sivaji :The Boss」は2年ぶりのラジニーカーント主演映画だが、その前の彼の主演作「Chandramukhi(チャンドラムーキー)」は現在も上映中で、なんと6月25日づけで804日間のロングラン上映中である。この時の彼のギャラは15カロールルピー(約4億5千万)で、ボリウッドのトップ5俳優のギャラを全て合わせた額に匹敵する。これもやはり、「タミル映画」が強いからではなく、ラジニーカーントがズバ抜けて強いからに他ならない。

そして、ここでもうひとつ言っておかねばならない事がある。

それは、我が日本ではなんと、ボリウッド映画よりもむしろ「タミル映画」の方が知名度が高く、コアファンが多いという事である。日本で最も知名度の高いインド人俳優といえばラジニーカーントだ、と言う事だってできるだろう。

なんと、ファンクラブまであるのだから。なぜならば、それはひとえに1998年の日本での「ムトゥ 踊るマハラジャ」の大ヒットによるものである。大ヒットというよりは、あれは「炸裂」であった。インドでも、タミル映画がなぜか日本で人気だという事を知っている人は少なくない。

かく言う私も、人生で最初に見たインド映画は「ムトゥ 踊るマハラジャ」であった。あの頃、インドのイの字とも縁がなく、まさか後にこんなに深く関わる事になろうとはつゆとも思わなかった当時の私でさえ、ちゃーんと渋谷であの映画を見ているのだ。それほどまでの大ヒットだった。そして抱腹絶倒し、数日もの間、頭の中がムトゥ一色になったのを今でも覚えている。

画面の中で、インド世界が、踊りが、私達がとうに忘れてしまった勧善懲悪の単純なストーリーが、とことん弱者の味方で、とことん強いヒーロー=ラジニーカーントが!!鮮やかに、この上なくカラフルに大炸裂していた。

しかし、彼はなぜそんなにも大スターに登りつめたのか?この「ラジニーカーント現象」とはいったいなんだろうか?

タミルナドゥー州首相であるカルナニディ(M.Karunanidhi)氏は、ラジニーカーントの謙虚さによると言っている。1991年にラジニーカーント主演映画「Hum(ハム)」を撮った監督ロメーシュ・シャルマは「彼は『普通の人々のための、普通の人』だからだ。それに彼の善良さはこれまで、雪だるま式に増大してきた」と言っている。彼の初主演映画を撮影したムトゥラマン監督は言う「彼は最初に出会った時から32年間、まったく変わっていない」。

また、ボリウッドの帝王と呼ばれ、インド人なら知らない人は絶対いない俳優、アミターブ・バッチャンはこう語る「それは彼の素晴らしい人間性によるものだ」。

ラジニーカーントは実は、幅広く非常に精力的にチャリティーを行っている。貧しい人々への学校の建設から、貧しい女性への結婚資金の提供(インドでは結婚持参金など、結婚時には女性側に金がかかる)、被災地への援助、ツナミ支援金などなど。

その他、彼の「寛大さ」については枚挙にいとまがないと言われている。例えば、

2002年に彼の主演映画「Baba」があまり振るわなかった時には、配給会社に3億円の前金を返した、

ベテラン女優パナダリ・バーイーが経済的なトラブルに見舞われた時は、保釈金を払って彼女を助けた、

女優マノーラマが、ラジニーカーントの「酒を飲む習慣」についてコメントした結果、映画界から村八分をくらった時も、彼自身が「アルナーチャラム」で彼女に役を与えて復帰させた、など。

極めつけはなんといっても、この「見せかけだけの世の中」において、彼は大スターであるにもかかわらず、プライベートではヅラなしの禿頭丸出しで出かけてしまい、その「滑稽な姿」を平気でさらしてしまう事だそうだ。

そして彼の慈善事業が、よくある「名売り」レベルにとどまらず、また、そういった売名目的特有のいやらしい臭いを発していない事が、ホンモノのヒーローだと認識される理由になるのだが、それは彼の経歴を知ればうなずける。

だって彼はただの「バスの運転手」だったのだから。しかも、日本や先進諸国で「バスの運転手」といっても単なる職業の種類のひとつでしかない。が、カースト制度のはびこるインドでは「排気ガスで肺を真っ黒けにしながら小銭を稼ぐ」という、よろしくないイメージの職業だ。その頃の彼の夢は、デコボコしていない寝床で寝ることと、まるまる一箱のタバコだけであったという。

彼は、汗みどろになって不条理な一日一日を必死で生きねばならないあまたの庶民の正真正銘の光なのであり、インディアン・ドリームなのであり、映画の中と同様に弱きものを絶対に見捨てない事が、彼を更に特別なヒーローに仕立て上げた。

その証拠に彼のファンクラブ自体が、「我らがヒーロー」の慈善事業に倣って、募金活動などを行っているのだ。

海外25カ国でも同時公開されたと知って、もしや日本でも!?と思ったが、そうではないらしい。だが、「ムトゥ 踊るマハラジャ」以来の日本のコアファンのためにも、まだラジニ映画を見た事のない人のためにも、ぜひ日本の映画館で公開される事を願う。

「普段は初老のおじさんのはずなのに、なぜかスクリーンではシャキーンと若くてすっごいヒーローに見えてしまう」と言われている彼が今回も、弱きを助け、悪と戦い、踊りまくり、恋をし、大・炸・裂しておりますよ!


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■関連情報

○日本のファンサイト
<ラジニ★jp>  http://www.rajini.jp/index-2.html

<ラジニ★jpニュース> http://news.rajini.jp/?cid=18067

○ファンサイト(英語)
http://www.rajinikanth.com/

○「Sivaji :The Boss」インド版公式サイト
http://www.sivajitheboss.com/

○「Sivaji :The Boss」アメリカ版公式サイト
http://www.sivajiusa.com/new/


○マレーシアナビ! マレーシア発ニュース速報 2007/06/19
 「インド映画館で上映トラブル続発、怒った観客が暴動」
http://www.malaysia-navi.jp/news/070618081809.html

○Asia Paradise!! 「タミル映画ってどんなの?」 2006/01/30
http://asiaparad.exblog.jp/568504/

○MUNMUN's Home Page 「Rajnikanth (ラジニカーント)」
http://munmun.moo.jp/archives/2006/03/rajnikanth.php


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●ラジニーカーント YouTube映像

○Sivaji The Boss Official Trailer Exclusive 2007  02:36 
http://www.youtube.com/watch?v=Nc3D3XZF9AA

○rajnikant in action  04:03
http://youtube.com/watch?v=OX6aqKAfAW0&mode=related&search=

○RAJNIKANTH IN POKKIRI!!!!!!!  02:40
http://youtube.com/watch?v=Z-Qh241JhNA&mode=related&search=

○Sivaji The Boss Trailer  04:30
http://sexyhood.blogspot.com/2007/05/sivaji-boss-tamil-movie-review-youtube.html

○Rajini Speaks on Sivaji ─Exclusive Video  05:44
http://www.youtube.com/watch?v=IwwFTFRRSnw


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Sivaji The boss (シヴァージ ザ・ボス) 2007年07月24日 18:03
Title : சிவா......