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世界のあり方を変えるハーブ(植物)療法のコンセプト

  • グリーンフラスコ株式会社 代表・薬剤師
  • 林 真一郎

先日、NHKで小田実さんの追悼番組が放映されました。その中で、彼はコソボ空爆に関するドイツ緑の党の当時の主要メンバーへの彼自身によるインタビューを終えた後、「戦争は劇薬のようなもので、一時的に効果がある場合もあるが、破壊を伴う。世界のあり方を変えるには漢方が良いと思う。漢方などの東洋医学はゆっくりとからだの構造を変えていく。」といった主旨の発言をしていました。

言うまでもなく、ここでは貧困や紛争といった地球規模の問題を「病気」と捉え、その対処法として劇薬(=戦争)を用いる西洋医学ではなく、漢方などの東洋医学に解決の糸口を求めたものです。

このシーンを見て、私は数年前に、ある日本の新聞社によるマハティール大統領のインタビューを思い出しました。そこで、彼はバブル後の日本経済の混乱の対処法を求められて、「西洋医学ではなくハーブ療法が良い。」と言ったのです。彼は医師でもあるので、この発言はより趣のあるものになりました。

ところで、漢方は東のハーブ療法と言えますが、西洋医学とハーブ療法はどこがちがうのでしょうか? 前者は化学合成した医薬品を用い、後者は自然のハーブ(芳香植物)を用いますが、その根本的な違いは病気に対する考え方や対処のしかたにあります。

まず、西洋医学では病気の原因を細菌やウイルスであると考えます。コレラの原因はコレラ菌、赤痢の原因は赤痢菌と言うわけです。したがって、対処のしかたとしては、悪者である細菌やウイルスを武器である医薬品(抗生物質)で射ち殺すことになります。

この方法論はわかりやすく、また、劇的な効果をあげることもあるのですが、その一方で、武器が強力であるため、患者さん自身がダメージを受けてしまうことも多いのです。薬の副作用(有害作用)がこれにあたります。さらに敵も守りを固めるため、従来の武器ではびくともしないような菌に変身を遂げることがあります。

これが薬剤耐性菌であり、実際にMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などによる院内感染が社会問題化しています。「抗ガン剤で叩く。」とか「病から生還した。」という言葉をよく聞くように、わが国の医療はこうしたパワー(力)による西洋医学が主流です。

一方、ハーブ療法ではハーブそのものが抗菌作用をもつものの、菌を射ち殺すことが目的ではなく、その本質は患者さんの抵抗力(免疫力や生体防御機能と言っても良いでしょう。)を増強し、治癒を促すことにあります。

実際、腸内や皮膚には大腸菌などの悪玉菌が棲みついていますが、ビフィズス菌などの善玉菌とのバランスによって悪さをしないように抑えられているのです。西洋医学が「パワーによる医学」であるのに対し、ハーブ療法は「一致点を見い出す医学」「バランスを取り戻す医学」と言っても良いでしょう。

西洋医学もハーブ療法も一長一短があります。一刻を争うような状況では西洋医学が必要ですし、ストレス病や慢性病にはハーブ療法が適しています。最近では、西洋医学とハーブ療法などの伝統医学や自然療法の両方を視野に入れ、患者さん中心の医療を実現しようという統合医学(integrative medicine)が注目を集めています。

ふたつの医学を状況や目的に応じて使い分けたり、場合によっては併用するといったことが試みられているのです。ただし、「予防に勝る治療なし」であり、また、予防に適しているのは言うまでもなくハーブ療法です。一方、抗生物質の使い方は、使う場合は集中的に使い、必要がなくなったらすぐに使用を中止するのが鉄則で、いつまでもダラダラと使い続けないことが大切です。

もう一度言いますが、西洋医学は予防には適しません。どこかの国が言い出した「予防のための戦争」には、よほど気をつけてかからなければいけません!

 

 


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