インターレイシャルマリッジ（異人種間結婚）への意識に垣間見える、カナダの国民性
- カナダ在住ジャーナリスト
（記事概要）
カナダでの結婚相手選択について、おもしろいデータが出た。カナダ人の92パーセントが、白人と黒人、もしくは白人以外との結婚を受け入れているというものだ。
同じ意識調査でのアメリカの結果は77パーセント。これはカナダの1990年の調査結果と同じ数字だという。
1975年から5年ごとにこの調査を行っている社会学者のレジナルド・ビビー氏は「異人種間の結婚観は、社会のいわば人種的、文化的統合性の最もわかりやすいバロメーターである」と解説している。
（2007年8月29日Vancouver Sun：BC州で最も発行部数の多い一般紙。徹底した地域密着型の内容に定評がある）
（解説）
異人種間結婚に対する容認度の高さの理由として、ビビー氏が挙げているのは２つ。ひとつは、これまで人種問題に対して全く問題がなかったわけではないが、少なくともカナダの歴史上、アメリカのような奴隷制度、人種隔離政策がなかったこと。もうひとつは、政府の多文化主義政策だ。
特に1971年から政府が公式導入した多文化主義政策は、現在のカナダ人が持つ、移民も含めて『カナディアン』とするというアイデンティティ確立に大きく貢献していると説明している。
さて、この記事にはもうひとつおもしろいデータが掲載されていた。それは、異人種間結婚を国別に分析したものだ。2001年のデータだが、カナダで異人種間結婚が最も多いのは、日本人で70パーセント。次いでラテン・アメリカ人45パーセント、黒人43パーセントとなっている。
これは、カナダに在住する日本人・日系人で、アジア人以外と結婚している割合を表したものだ。日本人がダントツの一位である。同じアジア系でも、中国系は16パーセント、韓国系は18パーセントと意外と少ない。
その理由は、中国系や韓国系移民は、総数が多いので割合では少ないということがあるかもしれない。しかし、最大の理由は国民性だろう。BC州で最も多い、中国系、韓国系、インド系移民たちは、一致団結して自分たちのコミュニティを築き、同国出身者同士が結婚、さらにその絆を深め、この国で大きな影響力を持つに至っている。
一方日本人は、地域に溶け込もうと努力をする。これは、戦前の移民者たちの時代からそうであったようだ。機会があるたびに日系２世や３世の人たちからそういう話を何度となく聞いた。そして時代が変わり日本の状況が変わっても、その傾向は変わっていないようである。
最近では日本人の移民した理由のトップがカナダ人との結婚である。だから70パーセントという数字には説得力があるように思う。
こうしてみると、カナダでは結婚に関して『人種』や『国籍』というものがほとんど社会的障害になっていないことがわかる。さらにビビー氏はおもしろい指摘をしている。それは、カナダ人のこうした結婚観は、同性結婚、妊娠中絶、マリファナ容認へと繋がっているとも分析しているところだ。
「カナダ人は、自分たち自身を “Multi-cultural”『多文化主義』というだけではなく、“Multi-everything”『多万事主義』と見ている」と付け加えている。 “Multi-everything”。カナダの国民性をうまく表現している一言である。
【関連情報】
○escala Worldレポ: 「移民の国カナダ」 2007/07/12
http://escala.jp/Lifestyle_Money/oversea/2007/07/post_9.html
○地球の歩き方 サンパウロ特派員ブログ
「ブラジル結婚事情――日本・ブラジル国際結婚」 2007/03/23
http://blog.arukikata.co.jp/tokuhain/sao_paulo/2007/03/brazilian_wedding.html
○出会いの雑学 2006/05/14
「アメリカ人男性はアジアとインドの女性がお好み」
http://nicemeets.com/taiken/archives/000803.shtml
○団藤保晴 ブログ時評 「過熱とも見える東アジアの国際結婚」2006/04/09
http://dando.exblog.jp/4360372/
○ハーレム通信 2006/03/24
「インターレイシャル（異人種）カップルってめずらしい？」
http://harlem124.jugem.jp/?eid=17
○酒好きノルウェージャンの独り言─タイ海外移住・起業
「国際結婚について」 2005/12/10
http://nfc.at.webry.info/200512/article_8.html
○Night Flight 「Of Many Colors」 2005/10/09
インターレイシャルマリッジ（異人種間結婚）や、アダプション（養子縁組）によって、様々な人種によって構成される家族の写真とインタビュー集。
http://yk28.cocolog-nifty.com/top/2005/10/of_many_colors.html
○Under The Red Sky 2005/01/04
「オマーラ・ポルトゥオンドとキューバの結婚事情」
http://redsky.under.jp/blog/archives/2005/01/post_9.html
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