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スイス初の携帯型セルフレジシステム「パサベーネ」が登場!

<記事要約>

昨日、チューリヒ市内のスーパーマーケット・コープ(Coop)で、スイス初のセルフレジシステム「パサベーネ」(Passabene)がスタートした。

「パサベーネ」のシステムは次の通り。コープ・ポイントカードを持っている顧客は、まず、入り口に並べられた小さい携帯型読み取り機を取りに行く。これを手に持つか、カートに取り付けるかして買い物を始める。読み取り機で買いたい商品のバーコードを読み取って、すぐさま持参した自分の買い物バッグへ入れる。

読み取り機には、スキャンした商品の価格が表示されて、合計金額が瞬時にわかる。金額を確かめながら「予算がオーバーしそうだ」と思えば、削除ボタンを押してスキャンした商品を消せばよい。そして商品は、元の場所へ戻す。


●売り場で、バーコードを読み取る。カート内に見える青いカゴは、持参したもの。

最後にセルフレジに行き、常駐している店員に読み取り機を渡して精算する。購入品はすでに買い物袋に入っているので、カゴやワゴンから移し替える必要はない。精算時には、ポイントカードと照合するために身分証明証を見せる義務があるが、購入記録は保存されない。

これでは万引きがあっても不思議ではないが、コープ側は「お客様を信頼しています」と話す。ただし、念のため、国内レベルで10人に1人の割合で抜き打ち検査は実施するという。

コープでは、75店舗で「パサベーネ」の導入を計画している。設置には、一店舗につき8万スイスフラン(約800万円)がかかるため、大型店に限るという。

2007/8/16 NZZより (チューリヒの日刊紙Neue Zürcher Zeitung。インテリが読む高級紙として有名。発行約16万部)


<解説>

「パサベーネ」導入の目的は、もちろんレジの待ち時間の短縮だ。コープ独自の、サービスや品質に関する調査(2002・2003年実施、対象40万人)で、50%強がレジの待ち時間に不満を示した(10%が不満で、40%強があまり満足でない)。全13項目の中で、際立って不満率が高い。

ここから予想されるのは、顧客の苛立ち。レジで待たされると、「この店舗は効率的な経営ができていない」と感じるはず。そこで、レジの待ち時間の短縮化に動き出したというわけだ。

このレジの待ち時間を短くするというアイデア、アメリカでは15年以上前に実現化している。またヨーロッパでは、イギリスのスーパーマーケット・テスコ(Tesco)が先頭に立っている。テスコは2004年の時点で、すでに140店舗でセルフレジシステムを導入していた。日本でも、2004年5月に本格スタートしたイオンを筆頭に、少しずつ広まってきている。


●「携帯型読み取り機」のスタンド

いくつかの国では常識化しているこのセルフレジが、スイスでもいよいよ始まる。しかし、コープの「パサベーネ」は、方式が少し違う。これまでセルフレジといえば、「普通に売り場を回った後、レジ台でバーコードの読み取りを自分で行う」という仕組みだった。新システムでは、上述のように、すでに売り場でバーコードを読み取るのだ。

通常の方式に比べ、「パサベーネ」の利点は2つあるといえるだろう。

1)購入個数を気にせずに済む――通常のセルフレジでは、利用を、購入個数の少ない人に限定している  場合がある。

2)商品を、カゴやワゴンから後で袋詰めする必要がない――通常のセルフレジでは、カゴやカートンから、レジ台で商品を買い物袋に移す手間がかかる。

2) の点では、買い物袋の持参が必然なのは明らかだ。スイスでは、いわゆるエコバッグの持参は至極普通のこと。しかし、レジで無料バッグを使ったり、買い物袋を購入する人もまだいる。この新方式が広まれば、エコバッグの普及はさらに進むと考えられる。

コープでは、2005年10月より「パサベーネ」の試験導入を始めた。これまでの傾向として、顧客の10から15%がセルフレジを利用しており、面白いことに、セルフレジ利用者は消費額が30%多いという。

実は、この「携帯型」新セルフレジ、ベルギー、オランダ、イタリア、アメリカなどでもすでに導入されている。

だが、スイスの他のスーパーではセルフレジに興味がないらしい。それよりも、精算にRFID―Radio Frequency-Identification(無線ICタグ)(*注)を導入したがっている。RFIDは次世代の精算システムと呼ばれている。RFIDは、日本ではすでに多くの場で使われている。

ただRFIDにも問題がある。店舗を離れた後も、商品の認識・追跡が可能となるため、プライバシー侵害が懸念されている。この点を解消する手段は投じられているが、果たして完全なものか。ともかく、流通業界でのIT化は顧客にとっても店側にとっても、大きな利点をもたらしている。


*注 『マイクロソフト』サイト、RFID ホーム「RFID 入門」より、RFIDの特性を記す。
http://www.microsoft.com/japan/business/rfid/about/default.mspx  

 「RFID の注目すべき特性・・・バーコードとの比較」
●非接触認証
RFID では、認証対象となる IC チップが見えている必要がないため、リーダー・ライタをかざすだけで認証作業を完了させることができる。バーコードだと、スーパーやコンビニなどのレジにおいて、オペレータが商品に付与されたバーコードを探す。 ⇒ 業務の自動化、効率化につながる。

●複数同時認証
買い物カゴの中の商品情報を一気に読み取ることも可能。商品の詰まった買い物カゴをリーダー・ライタが設置された台の上に置くだけで精算が完了する。バーコードだと、商品1 つ 1 つを手にとってバーコード・スキャナでスキャンする。 ⇒ レジオペレーションの莫大なコスト削減につながる。


【関連情報】

○NIKKEI NET 2007年7月14日 
「携帯レジ」欧米で広がる・売り場で客が入力、会計待ち短く
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20070714AT2M1003M14072007.html


○みなみおおさわしんぶんblog
 「カインズホームのセルフレジ」 2007/08/11 
http://blog.so-net.ne.jp/minamioosawa/2007-08-11


○pocketbook 「電子マネー狂騒時代に思う」 2007/06/19
http://easyrider.air-nifty.com/pocketbook/2007/06/post_f582.html


○経営革新のタネ 「普及進むセルフレジ (1)」 2007/04/14
http://fx2kmas.air-nifty.com/weblog/2007/04/post_ca6c.html


○CNET 2007-04-04
「非接触ICカード・RFID、2010年度には18億8400万枚に--矢野経済研究所調べ」
http://japan.cnet.com/research/column/market/story/0,2000067181,20346424,00.htm


○Itmedia オルタナティブ・ブログ 磯島大の「マーケティング夢想」(^_^)
 「セルフレジ初体験」 2007/07/02
http://blogs.itmedia.co.jp/isojima/2007/07/post_cfd3.html


○MBコンサルドットコム
 「高齢者を狙った“ご用聞き戦術”」 2006/09/15
http://mb-consul.com/2006/09/post_56.html


○食品スーパーマーケット最新情報
 「RETAILTECH JAPAN2006でセルフレジを見る!」 2006/03/11
http://pipi.cocolog-nifty.com/pi/2006/03/retailtechjapan_fc52.html


○夢と小物のエンジニアリング 「セルフレジ」 2006/12/16
http://symzing.way-nifty.com/blog/2006/12/post_2049.html


○エースプログラマの uki-uki 日記
 「バローのセルフレジを体験してきました」 2006/10/03
http://blog.g-up.com/hidenori_goto/?s=2&b=10721


○美女SENblog 働く女のすっぴん&せきらら&まじめなホンネ
 「セルフレジってどうやって万引きを阻止するの?」 2005/09/23
http://blog.kansai.com/grace39sachiko/802

 

 


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