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心に残るサービス:「Amazon(アマゾン)」と「ホルモン屋 だん」

▼ITによって実現されたデジタルなサービス

仕事柄パソコンに触れることが多いが、ネットで買い物をすることに関しては慎重派だった筆者。漠然とではあるが、なるべく自分の手で商品を確かめてから買いたいという気持ちがあった。それでもまあ本屋に足を運ぶ時間ロスを考えたり、商品を探してお店を巡ったりする労力に負けて、徐々にではあるが「ポチっと」ネットショッピングをする機会が増えてきている。

先入観で、ネットショッピングには、自分の欲しいものに対して能動的にアクセスしなければならない特性があると思っていた。だから、簡便さに感心しながらも、“取り急ぎ用件のみ”といった買い物はできるが、“当てもないのにプラプラ”とするような、ウィンドウショッピングを楽しむことはできないと決めつけていた。

しかし、先日、特に目当ての商品があるわけでもないのに、何か面白いものに出会えそうな期待感を膨らませ、パソコンの前に釘付けになってしまったことがあった。それは大手ECサイトのAmazon.co.jpでの出来事だ。

それまで気づいていなかったが、“マイストア”というタブをクリックして表示されるページの品揃えに興味を惹かれたのだ。そのページでは、これまでのAmazon.co.jpでの買い物履歴から、その商品と関連性の強い商品のうち、まだ購入されていない商品を、オススメ商品として紹介してくれていた。

紹介される商品には、なぜその商品を紹介するのか理由が記載されている。それは、「○○○○などを購入されたお客様におすすめします」とか、「○○○○などを評価されたお客様におすすめします」という形で記載され、以前自分が購入したり、評価をつけたりした商品(☆の数で評価する)を買った他人の購買履歴を分析したものから割り出される仕組みになっている。

既に自分の持っているアイテムが一覧に表示されたりしているので、なかなかレコメンドのセンスがいいようにも感じてしまい、他に表示されている自分の知らない商品にも興味が湧いてしまう。しかも、自分が既に持っている商品の場合(アマゾン以外で購入)、その情報も追加設定することができる。そうすれば、その商品がオススメされることはなくなり、さらにオススメするための分析材料として使われるようになるのである。

オススメされる商品を眺めながら、自分の持っている商品や不要なものをはじいていくうちに、オススメされる商品が洗練されてくるのがわかってくる。そこには信頼できる店員がいるわけでもなく、信頼できるレビュアーの紹介文が掲載されているわけでもない。同じ商品を“良い”と思っている他人の好みを分析し、他人が“良い”と評価しているものが紹介されるだけである。

なるほど、これはシンプルな仕組みではあるが、なかなか信頼できるし、誰かに勧められているわけでもないので、なんの気負いもなく、商品に関心が持てるように思った。まさに、情報化時代らしい、ITによって実現されたサービスの最たる例である。

 

▼人の心を感じさせるアナログなサービス

一方で、電気街やアニメ文化で世界にその名を轟かせる情報発信地“東京・秋葉原”に、サービスのいい飲食店がある。「ホルモン屋 だん」という店だが、マルチョウ、ミノ、レバーといったホルモンが美味いこともさることながら、主人のホスピタリティの意識の高さも感じさせられる店である。

図体の大きな主人であるが、非常に繊細な気配りのできる方だ。何度か足を運んできているお客さんの席には、必ずといっていいほど「いつもありがとうございます!」と、挨拶にいったり、世間話をしたりしている。それくらいのことをする店はいくらでもあると思われるかもしれないが、大きな図体で深々と頭を下げ、丁寧にお辞儀をする様からは、心が伝わってくるものだ。帰り際にもエレベーターの前で深々と頭を下げてお辞儀をしてくれる。(何もそこまで…)と思うが、悪い気はしないし、気持ちがいい。

その店に行くときはいつも電話をして混み具合を確認するが、先日電話をしたら「森さまですか? 声でわかりました」とズバリ言い当てられてしまった。1ヶ月以上間を空けての来店なのに、である。商売によっては、顧客管理システムによって、パーソナルな情報を蓄積しているケースはあるが、声色から瞬時に誰かを判断するシステムが一般化するには、もうしばらく時間がかかるだろう。

赤提灯でもバーでもないので、これまでそんなに会話を交わしたこともないのに、声まで覚えていてくれたと思うと、つい嬉しくなってしまった。

「お客さまを覚えて、心を込めてサービスする」

何をいまさら、そんなことは基本中の基本、当たり前のことである。と言われてしまうかもしれないが、大量の顧客を効率よく管理することに主眼が置かれる大きな組織によるサービスにないものが、そこにあるような気がした。

 


【関連情報】

○雲上四季 「amazon非ユーザへの疑問」 2007/09/22
http://d.hatena.ne.jp/sinden/20070922/1190449511


○こにの壺焼 「今や本屋で本を注文しなくなったなあ。。。」2007/07/24
http://d.hatena.ne.jp/konichan/20070724/1185258381


○漫画読もうぜ 2007/09/02
 「その漫画が今流行っているかを知る画期的な方法を思いついた!」
http://blog.manga-yomouze.com/archives/64761725.html


○WIRED VISION
  「Amazonの新音楽サービスは、Apple支配体制への挑戦」  2007/09/27
http://wiredvision.jp/news/200709/2007092720.html


○ITmedia News 2007/04/24
 「楽天とは違う」――Amazon.co.jpにショッピングモール
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0704/24/news085.html


○CNET 2007/02/13
 「ロングテール提唱者のアンダーソン氏、アマゾンの問題点を指摘」
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20342867,00.htm


○おまえにハートブレイク☆オーバードライブ 2006/11/21
 「アマゾンマーケットプレイスと古書市場とWeb2.0の行き着く果て」
http://d.hatena.ne.jp/ykurihara/20061121#1164051915


○POP*POP  2007/04/12
 「探しているレアな本がAmazonになかったときに見る5つのサイト」
http://www.popxpop.com/archives/2007/04/amazon5.html


○ITmedia アンカーデスク 2007/09/18
 【第4回】レコメンデーションの虚実(2)─レコメンデーションの分類 (1/2)
http://www.itmedia.co.jp/anchordesk/articles/0709/18/news038.html


○ZDNet Japan  2007/09/28
 「Amazon.comがWeb 2.0なデザインに?:サイトリニューアル案が公開中」
http://japan.zdnet.com/news/internet/story/0,2000056185,20357514,00.htm

 

 


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