
末期ガンのランディー・パウシュ教授、最後の講義「心から伝えたいこと」
- 米国在住ジャーナリスト
(記事要約)
米国カーネギー・メロン大学のランディー・パウシュ教授(コンピューター・サイエンス、46歳)が、9月18日に同大学で400人の学生らを前に最後の講義を行った。この講義は各大学で最近よく行われる「ラスト・レクチャー・シリーズ」と呼ばれるもので、人生で最後の講義だと仮定して人気教授らが心から伝えたい内容を話すというもの。
パウシュ教授の場合は、末期の膵臓ガンで、余命は1ヶ月から数ヶ月と宣告されており、文字通り最後の講義だった。しかし末期ガンを患っているとは想像もできないエネルギッシュかつユーモラスな語り口で、子供時代の夢と自らの人生を振り返りながら、学生達に人生の教訓を伝えた。
講義はウォール・ストリート・ジャーナルやABC放送のグッド・モーニング・アメリカなど多数のメディアで取り上げられるとともに、講義ビデオがインターネットで広がり、国内外から大きな反響が沸き起こった。
記事リンク:
○ウォール・ストリート・ジャーナル
http://online.wsj.com/article/SB119024238402033039.html
○ABC放送、グッド・モーニング・アメリカ
http://abcnews.go.com/GMA/PersonOfWeek/story?id=3633945&page=1
(解説)
米国で良いスピーチと言えば、ユーモアを折り込みながら聴衆を楽しませ、感動させるスピーチだ。9月18日にカーネギー・メロン大学で行われたランディ・パウシュ教授の最後の講義は、まさにそんなスピーチだった。この最後の講義は、ウォール・ストリート・ジャーナルのウェブ版でも、掲載週でもっともアクセスが多いニュースとなった。
また1時間以上にわたる講義のビデオクリップがインターネットで広がると、ブロガーらが「最高の講義」、「これまでに見たことでもっとも重要な内容」といった見出しで、パウシュ教授の最後の講義について次々に自分のブログに掲示した。またパウシュ教授のもとには、何千もの人々から感動の声が寄せられた。
46歳のランディ・パウシュ教授は、2006年に膵臓ガンと診断された。今では肝臓にも10個の腫瘍があり、医師からは数週間から数ヶ月の命と言われている。ただしビデオを見ればわかる通り、最後の講義でも腕立て伏せをして見せるなど、とても病気とは思えないエネルギッシュなスピーチを披露した。
パウシュ教授はカーネギー・メロン大学を卒業した後、ディズニーのイマジニア(アトラクションなどを企画するエンジニア)になるという子供時代の夢をかなえるため、意気揚々とディズニーへの入社を申し込んだが、あっさり断られた。そうした挫折について、「人生にはレンガの壁がある。この壁は私たちがどれだけ本気かを試すためにある。本気なら壁を破ることができるし、中途半端な気持ちの人は壁にブロックされる」と話した。
大学教授となった後、同教授は極秘で仮想現実のプロジェクトを進めていたディズニーのイマジニアに働きかけ、大学から長期研究休暇をもらってディズニーのイマジニアチームとともに魔法の絨毯等のアトラクション考案に参画した。
同教授はカーネギー・メロン大学で、学生が自由な発想で仮想現実や3Dの活用を楽しみながら学べる講座や、アートと技術の融合をめざしたエンターテイメント・テクノロジーセンターと呼ばれる大学院課程の創設に関わった。同センターにはオーストラリア校もあり、近くシンガポールと韓国でも開校される予定だ。
またパウシュ教授は、高校生や大学生が手軽に3Dアニメーションを作成できるようにと、アリスというプログラムを考案した。
教授の最後の講義は、自らの幼い子供達に向けたものであり、同教授の人生観を映し出したメッセージがちりばめられている。「私は楽しいことが好きだ。これまでも楽しんできたし、死ぬ直前まで楽しく生きる。それ以外の生き方を知らないからね」。
以下、パウシュ教授の最後の教訓を講義から抜粋する。
•自分に対する人からの意見に耳を傾けること。人から手厳しい批評を受けた時に、
「ちょっと待ってよ、そうなったのは…」と言い訳をするかわりに、「確かにそうだ」と
言える人は少ない。人からフィードバックをもらったら、耳を傾けて、活用することだ。
•感謝の気持ちを示すこと。終身教授になった時、研究チームを一週間、ディズニーワールドに
招待した。同僚が何でそんなことするのだ? と尋ねた。研究チームが日夜取り組んで
くれたおかげで、自分は素晴らしい職を手にすることができたのだ。感謝の意を示さないこと
こそ、不可能だ。
•不満を言わないで、一生懸命やる。
•何か得意なことをもつ。それによって価値が高まる。
•懸命に働く。私が一年早く終身教授になった時、準教授に秘訣を聞かれた。
私は「金曜日の夜10時にオフィスに電話をくれたら教えるよ」と答えた。
•人の良いところを見つける。ディズニーのジョン・スノビー氏が、「長期間、
あるいは何年も待つこともあるが、人は良い面を見せてくれるよ」と教えてくれた。
完全に悪い人なんていない。良い面が見えるまで、待つことだ。
•そして、準備をすること。幸運は、準備と機会が出会った時に生まれる。
•気づいたかな? 夢をいかにかなえるかが問題ではないんだ。いかに人生を進めて
いくかなんだ。正しい方向に進めば、運命が導いてくれる。そして夢の方から、
あなたに向かってやってくる。
同教授は自分のウェブサイトに最後の講義のビデオ、講演原稿へのリンクを載せ、非営利目的なら許可なく使えるように公開している。
○ランディ・パウシュ教授のウェブサイト:http://www.cs.cmu.edu/~pausch/
○Google ビデオによる講義全文(最初の8分間は教授の紹介)
http://video.google.com/videoplay?docid=362421849901825950&hl=en
○カーネギーメロン大学エンターテイメント・テクノロジーセンター
http://www.etc.cmu.edu/
【関連情報】
○オンラインフリーペーパー Clueの編集長日記
「英語の分かる全国の職人たちに」(ランディ・パウシュ教授の最後の講義)
http://diary.clue-web.net/?eid=711653
○THE PATH アメリカ工学系大学院留学記 ─PhD に向かってゴゴゴゴゴール!
「The Last Lecture of Dr. Randy Pausch」 2007/09/21
http://www.thepath.jp/archives/2007/09/21/last_lecture_by_dr_randy_pausc.html
○なんでも評点 2007/09/21
末期ガンで余命数ヶ月と宣告された46歳の教授が沈痛さのかけらもなく
元気たっぷりに「人生最後のレクチャ」
http://rate.livedoor.biz/archives/50424027.html
○ディズニー・オフィシャルサイト
http://disney.go.com/index
○ITmedia News 2007/08/02
Disney、子供向け仮想世界「Club Penguin」買収
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0708/02/news077.html
○CNET 2007/06/07
新世代3Dシネマ--「赤と青のメガネ」を不要にしたデジタル技術
http://japan.cnet.com/special/biz/story/0,2000056932,20350295,00.htm
○Dentsu Y&R 2007/09/14
企業・製品のブランドのエナジー(活力)を日本で初めて測定
「ブランド・エナジー」パワーランキングとして発表。
2007年ランキングは、東京ディズニーランド、スタジオジブリ、ナイキが
トップ3。You Tube、Amazon、ダイソン、ソフトバンク・モバイルなどが
トップ20にランクイン
http://www.dyr.co.jp/energy/topics/070918a.html
○Web 3D関連テクノロジ リンク集
http://www.atom.co.jp/vrml2/Web3D-j.html
○☆チップの家《1/67億》のディズニーenjoy術☆
「イマジニアリング☆」 2007/06/15
http://blogs.yahoo.co.jp/my_favorite_chip/9420913.html
○アイデアホイホイ 「イマジニアとは」 2007/03/07
http://idea-hoihoi.seesaa.net/article/35404342.html
○Sorcerer's Hat 「夢を形にする発想術」 2007/03/08
http://imagination.cocolog-nifty.com/sorcerershat/2007/03/post_2307.html
○うばたにBLOG 「イマジニアの発想」 2007/02/22
http://www.ubatani-a-style.jp/archives/2007/02/post_168.html
○Ni-gata Traders ? 「夢を形にする発想術」 200702/21
http://niigata9i.jugem.cc/?eid=514
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