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日本からの関心度低下が際立つアメリカ

  • 米国在住ビジネスコンサルタント
  • 鶴亀 彰

日本から訪れたジャーナリストが「最近日本ではアメリカの人気は落ちており、関心の度合いも減っている」と言う。旅行会社で働く友人も「旅行先としてアメリカはあまり魅力がないと捉えられている」と嘆く。実際に商務省の中のOTTI(Office of Travel & Tourism Industries)が纏めた2007年の世界各国からのアメリカへの訪問者数統計にもそれははっきりと表れている。

アメリカへの訪問者数のトップ20ケ国のリストの中で日本はカナダ、メキシコ、英国に次ぎ、訪問者数296万2千8百75人で第4位ではあるが、ここのところ減少が目立つ。トップ20ケ国の中で他の19ヶ国が全て数を増やす中で、唯一日本だけが2006年より4.1%減っている。それとは逆にインドなどは43.1%、フランスは27.5%、中国は18.2%、韓国は7.3%と伸び続けている。

旅行客だけではない。アメリカの大学で学ぶ留学生や研究生の数も、そして移民の数も日本からは減少の傾向にある。アジアからは中国や韓国、インドなどがうなぎのぼりに増えている。私は日本のメディアに責任があるのではと感じている。

確かにブッシュ大統領になってからのアメリカはアフガン戦争にイラク戦争と、世界における不人気の原因を作り出している。巨大国アメリカの凋落を語る人も少なくない。クリントン政権から引き継いだ頃のアメリカは「ローマ帝国」に例えられる程、唯一の大国だった。しかしブッシュ大統領の「テロリストとの戦い」優先が、いまでは「コーナーに追い詰められたよれよれのボクサー」にしてしまったとの意見を吐くアメリカ人議員もいる。

その間に石油など天然資源の高騰でロシアは経済力を高め、世界一の人口を誇る中国も躍進を続けている。またインドも伸びつつある。相対的にアメリカのパワーが落ちているのは事実であり、その傾向はこれからも続くだろう。

しかし同時にまた自己再生能力と言うか、創造力と言うか、この国が持つ大きな力を忘れては過ちを犯してしまう。日本のメディアからの情報で、多くの日本人がアメリカの凋落を語る中で、私はこの国の持つ底力を信じている。

例えば現在大統領選挙において躍進を続けているオバマさんの存在である。マーティン・ルーサー・キング・ジュニア以来、黒人がこれほどにアメリカで受け入れられた事はない。彼自身も「変革」を語っているが、黒人の彼が大統領候補として認められた事は、アメリカにおいては実に画期的なことである。大きな変化を感じている。

また私が接する事の多いハイテク分野のビジネスマン達の意識も更に向上し、先進的になっている。単に利益を追求するのではなく、社会的に意義ある仕事で世界に貢献したいと願う人が増えている。

企業としてはグーグルなどがその先端である。またグーグルやイーベイやユーチューブなどで働き、持ち株で億万長者になった多くの若者達の中には、そのお金を世の中のためになるようなベンチャーの育成や支援に使うケースも多い。

従来の大企業や金融会社のスタイルとは違う新しい理念と意識に基づいた経済活動が増えつつある。アフリカや南米など貧困や病気に悩む人々を自分達の持つ技術や資本で支援しようとする動きなども活発である。ハーバード大学を始めアメリカの一流大学には世界中の若い頭脳が応募し、勉学や研究を続けている。アメリカは常に創造の先進国である。アメリカから学ぶことがらは極めて多い。日本の若者も積極的にアメリカを訪れて欲しいものである。

 

 

【関連情報】

○梅田望夫 My Life Between Silicon Valley and Japan
 変化の国・アメリカ(トフラー「富の未来」が描くアメリカ) 2006/07/05
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060705/p1


○小飼弾 404 Blog Not Found 2007/02/23
 「日本発のソフトが少ないのは日本がアメリカではないから」
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50771181.html


○GoTheDistance 「アメリカにはSIerなんて存在しない」2007/09/20
http://d.hatena.ne.jp/gothedistance/20070920/1190219844


○赤の女王とお茶を  2007/01/29
 「日本の理系が敗北するたった一つのシンプルな理由」
http://d.hatena.ne.jp/sivad/20070129#p1


○中岡望の目からウロコのアメリカ 2006/10/15
 「ハーバード大の教育改革:日本の大学改革とどこが違うのか」
http://www.redcruise.com/nakaoka/index.php?p=188


○Tech Mom from Silicon Valley  2007/06/06
 豊かな時代の教育とは:「こいつらにはやっぱかなわねー」と思うこと
 日本だと、「勉強ができなくても、スポーツや美術とか、じゃなければ
 ガテン系・・」みたいな話にすぐなってしまうが、そうじゃなくて、
 学問や技術や、経営者や政治家の世界でこそ、異色の才能が生かせないと
 いけないと思うのだ。
http://d.hatena.ne.jp/michikaifu/20070606/1181096157


○FIFTH EDITION  2008/01/26
 「やる夫で学ぶサブプライム問題についてちょいとツッコミ」
http://blogpal.seesaa.net/article/80629520.html


○GIGAZINE  2007/08/17
 急速な円高や全世界同時株安の原因、「サブプライム問題」とは?
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070817_subprime/

 

 

 


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