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バラやラベンダーの香りの美容効果 その1 ─ こころと美容の関係を解き明かす

  • グリーンフラスコ株式会社 代表・薬剤師 
  • 林 真一郎

欧米では、ケミカルな成分ではなくバラやラベンダーの香りなど、ナチュラルな成分を用いた美容法の人気が高まっている。わが国でも紅花の色素を頬紅に用いたり、ヘチマ水を化粧水に用いるなど、植物の癒しの力を美容に役立てるテクニックは古くから知られているが、それと異なるのは、こうしたコンセプトの化粧品が科学的な視点に基づいて作られ、科学的な視点に基づいてその美容効果が評価されている点にある。

ヘチマコロンやあずき粉などナチュラルな素材を用いるのが第1世代の美容法とすると、サイエンス(科学)の発展に伴って化学合成したケミカルな素材や添加物を用いるのが第2世代、そして、ナチュラルな素材をサイエンスの視点で使いこなすフィトセラピー(植物療法)は第3世代の美容法と言えるかも知れない。

今回と次回の2回にわたってフィトセラピーの美容効果について取り上げるが、その第1回はこころと美容の関係について探ってみよう。

心配ごとがあると顔色が冴えない、ストレスがたまってニキビが目立つ—こころの状態が肌の状態に反映することは誰でも経験上知っていることだろう。では一体、そのとき体の中では何が起きているのだろうか?

血圧や体温、それに肌の状態などが環境変化にも関わらずほぼ一定に保たれているのは、ホメオスタシス(恒常性)というシステムが備わっているからだ。このシステムは自律神経系と内分泌(ホルモン)系、それに免疫系の3つのサブシステムから成り立っている。さらに興味深いのは、この3つのシステムがネットワークを組み、お互いに情報交換をしていることが知られている。

ちなみに、この分野を研究する学問は精神神経内分泌免疫学と言う。(まるで、寿限無寿限無…のようだ。)一例をあげると、更年期には女性ホルモンの分泌が著しく変化する。内分泌系と自律神経系がリンクしているため、この時期には冷えやのぼせ、不眠などの症状に悩まされることが多い。これが更年期の自律神経失調症というやつだ。

ところで、あなたが今精神的なショックや不安、恐れなど強いストレスを受けたとしよう。自律神経系では交感神経が亢進して血管が収縮し、血液循環が滞る。顔面蒼白というやつだ。肌の細胞に酸素と栄養素を運んでいる血液の循環が悪くなるのだから、美容面への影響は避けられない。

さらに、悪影響は内分泌系や免疫系にも連鎖する。女性ホルモンは肌のpH(ペーハー)やメラニン色素の代謝に関与しているので、シミやそばかすなどが目立つことにもつながる。免疫系の低下は肌のアクネ菌の増殖を招き、ニキビができるリスクも高まることになる。悪いことは連鎖する。泣きっ面に蜂とはこのことだ。

そこで、ストレスに襲われたときにバラやラベンダーなどの快い香りを嗅いだとしよう。こうした鎮静系の香りは副交感神経を亢進させるため、ストレス下で交感神経優位に傾いた自律神経のバランスを回復させる。血管は拡張して肌の色は改善するし、肌へのエネルギーの供給もスムーズにいくようになるだろう。ホルモン分泌も安定し、免疫系が働いてアクネ菌の増殖は阻止される。バラやラベンダーの香りが「美しさへのスイッチ」を押したのだ。

こうした秘密を化粧品会社が放っておくはずがない。実際、ある大手化粧品会社では数年前から香りを嗅ぐことによる美容効果を科学的に検証し、「肌につける」ではなく「鼻で嗅ぐ」ことをコンセプトにした化粧品を発売している。

クレオパトラはバラをこよなく愛したが、彼女はバラの香りの美容効果を知っていたのかもしれない。わが国には精神神経内分泌免疫学の研究を待つまでもなく、古くから「病は気から」という諺がある。これを一歩進めて「病は気から、美しさは心から」というのがフィトセラピー(植物療法)のコンセプトなのだ。

ストレスに襲われたときはくよくよ悩んだり落ち込んだりしないで、気持ちを強くもって明るく前向きに生きていこう。美しさと強さは意外に近いのかも知れない。次回は、ハーブの香り成分の直接的な美容効果について解説しよう。

 

 

 

 


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