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ガソリンに3年間の価格キャップ制。クライスラーが拡販材料として実施

  • 米国在住ジャーナリスト

 ガソリン価格の高騰を背景に、米・自動車メーカーのクライスラーが新車を購入した顧客を対象に今後3年間、ガソリン価格を固定して提供するプログラムを始めた。現在の小売価格より1ドル近く低く設定し、ガソリン価格の上昇幅に関係なく同じ価格で提供するユニークなもの。青天井に思える現在のガソリン価格を考えると、自動車ユーザーの関心を集めるかもしれない。

 用事のために立ち寄ったクライスラーのディーラーで、このプログラムを見つけた。「Let’s Refuel America Program」と名づけられたチラシが店内のアチコチに置いてあったから、それなりに力を入れているようだ。そういえばショールームに電話をしたときにも、受付嬢が受話器を取ると同時にこのプログラム名を言い出した。

 私の住むサンフランシスコ周辺はガソリン価格が全米一高い地域で、現在は1ガロン(3.78リットル)4ドル(約416円)前後で推移している。Let’s Refuel America Program では1ガロンの価格を2.99ドルに設定し、今後3年間いかなる上昇があろうとずっと同じ値で提供する。

 申し込むには、まずクライスラーの新車を買わなくてはならない。そしてVISAか MASTERカードを持っていることが条件。どちらかのカードは、アメリカ在住者ならほとんどの人が持っているから問題ない。

 ガソリンスタンドでカードを使って給油すると、72時間以内に2.99ドルとの差額が調整される。価格がちゃんと反映されているか心配な人は、ウェブサイトで逐一状況の確認ができる。

 1ガロン当たり17マイル走る車で年間1万2000マイルを走行したと仮定すると、ガソリン価格が4ドルの場合には3年間で約2100ドル、4.25ドルでは約2600ドル得したことになる。いまの状況を考えると1ガロン5ドルになってもおかしくないから、そうなると約4200ドルが浮く計算だ。年間およそ15万円の節約を大きいと感じる人にとっては、買い得なプログラムだろう。

 複数の車で共用してしまってもバレないのでは? と思った人もいるだろうが、ディスカウント価格で購入できるガソリン量の上限が車種ごとに設けてあり、算定ベースは年間1万2000マイル(1万9200キロメートル)を走った場合となっている。これはアメリカ人が1年間に走る一般的な距離。上限を超えた分に調整額は支給されないから、家族や友人でじゃんじゃん給油してしまおうと考えても残念ながらそれはダメだ。

 燃費の悪い車になれば“お得感”も大きくなる。しかし、良く考えればガソリン食いの車に乗ること自体が得でないことは分かるのだが、どうしても大きい車に乗りたい人には向いている。クライスラーは、ジープやピックアップトラックなど大食い車種が比較的多いので、ディーラーとしてもこれぐらい思い切ったことをやらないと台所事情が大変なのだろう。

 米国の今年1─4月の自動車販売台数をメーカー別に見ると、米国車メーカーは前年比で軒並み減少し、中でもクライスラーは最悪の17.6%減を記録している。好燃費車の多い日本車メーカーが、三菱自動車を除いて前年比増か微減にとどまったのとは対照的。

 クライスラーは米国車メーカーのなかで唯一、乗用車部門が前年比増加しているにもかかわらず、大型車の「ライトトラック部門」が同24%減と足を引っ張った。ガソリン価格が販売に影を落としていることは一目瞭然だ。Let’s Refuel America Programはこの春だけの限定プログラムらしいが、販売テコ入れの切り札となるだろうか。

 ところで、ガソリン価格が3年以内に2.99ドルを切ったらどうなるのだろう。さらなるインセンティブが得られるのか。ディーラーの担当者に尋ねると、「このプログラムは2.99ドル以上の価格に対して差額を戻すものなので、仮にそれより下がっても戻し金はないよ」とそっけない答えが返ってきた。

 でも、もしそこまで価格が下がったとすれば、このプログラムに関係なく全てのドライバーにとって嬉しいことではある。コロラドの山中あたりに巨大油田でも見つからない限りは、まずありそうにないことではあるが。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○Carviewニュース 2008/05/08
 【クライスラー】新車購入者に固定価格で3年間給油できるサービス
http://www.carview.co.jp/news/0/71193/


○ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報
 「アメリカにもある道路特定財源」  2008/05/01
 道路建設というのは、橋桁工事やダムのような、特段に高い技術力も
 要らないし、しかも区間ごとで小分けに業者に振り分けが可能という
 点で、政治家や役所にとって、実に「使い勝手の良い」公共工事
 なんでしょうね。
http://amesei.exblog.jp/7815273/

 

 

 


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