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これでハードディスクのクラッシュも怖くない。パソコン上のファイルを自動的にバックアップするサービスが人気

  • 米国在住ジャーナリスト

 ネット上でファイルのバックアップを提供するサービスが米国で増えている。ユーザーが一度設定を済ませれば後は手間要らず。インターネットに接続している間、自動的にフォルダごとバックアップ作業を行う。万が一のハードディスクのクラッシュに備えた安心料だと考えれば、月額数ドルの利用料金は安いともいえる。

 ビデオ撮影や写真編集などの趣味を持つ人にとって、頭の痛い問題となるのはバックアップ作業だ。AVIなどのビデオファイル形式はもちろん、画像編集ソフトのフォトショップで加工した写真でさえ、簡単に100メガバイト近くまで膨らむ。それが積み重なっていったら、ハードディスクの100ギガバイトなんてあっという間に埋まってしまう。

 バックアップメディアとして手軽なのはDVDディスクだが、ファイルサイズが大きくなれば数十枚分の作業が必要となり、あまり現実的ではない。外付けハードディスクに移すのが一般的かもしれないが、コスト面では高くなる。かといって、そのままハードディスク内にデータを放っておけば、他のファイルを圧迫する上、もしものクラッシュ時に泣くに泣けない事態となるのは目に見えている。

 そうした事情もあって増えているのが、オンラインバックアップサービスだ。データセンターに置かれたサーバ上に自分のスペースを確保してファイルの出し入れが自由に出来る。利用者がバックアップしたいファイルを選んでそのたびごとに自分でアップロードするサービスは以前からあったが、最近増えているのが自動的に作業を行うもの。ユーザーがパソコンで作業をしていようが、インターネットに接続している限り、バックグラウンドでファイルのアップロードを定期的にしてくれる。


〈全自動でバックアップを行うBackblaze〉

 シリコンバレーのベンチャー企業Backblazeが6月から始めたのも、自動バックアップサービス。専用ソフトをバックアップしたいパソコンにダウンロードするだけで、あとはハードディスク内のファイルを定期的に自動でサーバへアップロードしてくれる。

 ただし、全てのファイルといっても、OSを動かすために必要なシステムファイル、プログラムファイル、一時キャッシュファイル、一部のメールファイル、100メガバイトを超えるファイルはアップロードしない。これは、バックアップ作業のために使う回線帯域を可能な限り抑えるためだ。アップロード作業を行うとインターネット接続が遅くなって、快適なネットサーフィンに差しさわりが出る場合がある。極力それを少なくする。

 重要ファイルであれば、データセンターにアップロードする際のセキュリティーが心配になるが、インターネット上を移動するときにはファイルは二重に暗号化される。また、センター側も24時間体制でスタッフが常駐し、トラブルが起きた際には対応する。

 サーバ上に保存したデータを利用者が必要とするときには3通りの方法が選べる。

1)インターネットを介してダウンロードする。
2)データの入ったDVDメディアをFedexで送ってもらう。
3)データの入ったUSBドライブをFedexで送ってもらう。

 バックアップするぐらいだから、ハードディスクの空き容量はすでに残り少ないこともあるだろう。2)と3)の方法は理に適っている。

 サービスの利用料金は毎月5ドル。これで容量無制限にバックアップができる。ファイルの言語は問わないので、日本語でも大丈夫だ。

 ヒューレット・パッカード(HP)が4月に開始したバックアップサービスのUplineは、年会費制。個人利用の場合、年額59ドルでファイルの保存や共有が無制限にできる。事前に指定したハードディスク内のファイルを定期的にサーバへアップロードする。スモールビジネス向けにもサービスを提供し、3ライセンスを年額299ドルで販売する。

 スタータープランとして、保存容量を1ギガバイト以内に制限した無料サービスもある。無料で利用者を呼び込み、有料サービスへ誘引しようとの狙いだ。システムはHPが買収したOpelinが担当。現在のところuplineは米国内でのウィンドウズユーザーへの対応のみ。


〈いろいろなデバイス間でファイルを共有出来るサービスも〉

 パソコンや携帯電話などデバイスを問わずにファイルのバックアップと共有ができるのが、3月にサービスを始めたSugarSync。データセンター上のサーバを介して、ウィンドウズOS、マックOS、携帯電話、インターネット上など、異なる場所や機種間でファイルの同期共有が瞬時に出来る。

 SugarSyncのウェブサイトから各デバイスにクライアントソフトウエアをダウンロードして設定すると、共有ファイルのように全ての機器上で同じファイルが表示される。ウィンドウズ上でワードファイルの文章などを編集して保存すれば、同じファイルがマックや携帯電話からほぼ同時に開ける。

 携帯電話で撮影した写真をSugarSyncのサーバ上に置かれたアルバムにアップロードし、デバイス間で共有することも可能。携帯電話は、ブラックベリーかウィンドウズモバイルに対応していることが必要となる。保存容量は10ギガバイトから250ギガバイトまで。利用料は月額と年額があり、年額の場合24.99ドルから249.99ドルまで。

 この他にも同じようなサービスは、Dropbox、Carbonite、Mozyなどたくさん出てきている。グーグルのオンラインバックアップへの参入も予想され、今後競争が激しくなりそうだ。

 調査会社の調べによると、オンラインストレージ(バックアップ)の2011年の市場規模は7億1500万ドルに達すると予想。2006年から2011年までの成長率を3割以上と見積もっている。しばらくは、高い成長が見込める産業といえそうだ。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○CodeZine 2008/04/09 
 HP、容量無制限のオンラインストレージサービス「HP Upline」を提供開始
http://codezine.jp/a/article/aid/2402.aspx


○CREAMU  2008/01/06
 無料で50GB使えるオンラインストレージ『ADrive』
http://blog.creamu.com/mt/2008/01/50gbadrive.html


○sta la sta  2008/04/01
 オンラインストレージサービス『Dropbox』を使ってみた
http://sta-la-sta.com/2008/04/01/328/

 


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