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「誰かとつながっていたい」---人間の本能をくすぐる魅惑のウェブサイト

〈記事概要〉

 YouTubeで爆発的な人気を博している“Dancing Matt”がようやくバンクーバーにやってきた。撮影されたのは2007年9月6日だが、2008年バージョンとしてやっと“Where the hell is Matt”サイト上に更新された。

 4分30秒ほどのビデオには、世界中の至る所で現地の人と楽しそうに踊るマットが映し出されている。なんの変哲もない、なんともほのぼのした映像なのだが、1500万人がアクセスする超人気サイトとして世界中で話題になっている。

(2008年7月10日 Vancouver Sun)
Vancouver Sun:BC州で最大部数を発行するバンクーバーの一般日刊紙。地元に密着した内容に定評がある。カナダ最大のメディアグループ、CanWestに属している。


〈解説〉

 “Dancing Matt”の主役であるシアトル在住の30代男マット・ハーディングは、突然「世界を旅したい」と思い立ち、会社を辞め、世界をめぐる旅に出る。その時友人に「家族や友人に近況を知らせるために各地にいる姿をビデオに撮ったらどうだ」と言われたのが始まりらしい。ただ、ビデオに収まるだけでは面白くないからと、行く先々で自分が踊っている姿を撮ってインターネットに載せた。

 2005年に初めてYouTubeに登場すると、これが大反響を呼んだという。これを見たアメリカのチューインガム会社Strideがスポンサーとして名乗りを上げた。

 Dancingというよりは、その場で手足をバタバタ動かしているだけといった感じだ。2005年、2006年バージョンはひとりで踊っているが、今回更新された2008年バージョンでは、現地の人たちと一緒に踊っている。みんなとっても楽しそうだ。実際見てもらうとよく分かる。www.wherethehellismatt.com

 それでも30代男性がただバタバタと踊っているだけの映像のどこに1500万人のアクセスを生み出す魅力があるのだろうか。


 話は変わって、カナダでの人気サイトといえばやっぱりFacebook。世界でおなじみのサイトだが、カナダでは1位のGoogleに次ぐアクセス数を誇り、登録者は1300万人。カナダの人口が3200万人だから単純に3人に1人は登録しているという驚異的な人気が続いている。

 ここに世界最大のSNSであるMySpaceが食い込もうと新しい試みを始めるという記事が7月21日付で載っていた。これまでの機能に加え、もっと生活に密着した機能を備えるらしい。たとえば、MSNのようなポータルサイト機能だとか、iTunesのような音楽機能、さらにはカラオケ機能も検討中だという。こうした新機能が果たしてFacebook中毒者に心変わりをさせる起爆剤となるのだろうか。カナディアンがSNSに求めているのはそこだろうか?

 こうした疑問に答えてくれそうな記事を見つけた。国内でちょっとした物議を醸したSNS“BeautifulPeople”(www.BeautifulPeople.net)のカナダ版開設だ。2002年デンマークで始まったこのサイトが6月24日ようやくカナダに上陸したのだ。すでに世界15カ国で開設されているという。

 日本にもサイトがあるので知っていると思うが、簡単に紹介するとサイト名が表している通り、『外見が美しい人々』しか登録できないSNSだ。美しさの基準は自己申告。しかし、登録申請したあとに異性登録者の投票があり、『合格』した人のみ『仲間』に入れるということらしい。

 この方針にカナダで反対派が声を上げないわけがないが、それでも登録希望者は後を絶たず、滑り出しは上々らしい。

 サイト管理者によると、『合格』するのは10人に1人くらい。サイトの目的は『美しい人』同士が『それほど魅力的でない人』からの迷惑なアプローチに悩まされることなく知り合うことだという。

 ということは、外見が美しくても人と知り合うきっかけには、やっぱりSNSのようなサイトが必要ということだろうか。とまあ、そんなひがみ根性はさておき、 “Dancing Matt”も、“Facebook”も、“BeautifulPeople”も、つまり、誰かとつながっていたい、どこかに属していたいという人間の本能的な部分をくすぐるのではないかと思う。そこに『一緒に踊る』、『友達が増える』、『人より美しい』という優越感という名のスパイスが加われば、人はその官能的魅力にどんどんのめり込んでいくのだ。

 インターネットの世界が面白いと思うのは、バーチャルとアナログが混在しているところだと思う。最近、立て続けに大学時代の友人数人から何年かぶりにFacebookで連絡を受けた。「あー、覚えていてくれたんだ」とやっぱり何となくうれしい。手紙や電話だとこうはいかないところが、バーチャルなのにアナログ的だなと思うのだ。

 そろそろ私もFacebookを更新しようと思う。もう半年以上もほったらかしだ。

 

 


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