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カナダの総選挙、当選のカギは語学力

(記事概要)

 語学力の差が支持率に反映されている。そう思わせるほど、劣勢に立っているのが自由党ステファン・ディオン党首だ。母国語でない英語にかなり四苦八苦していることは本人も認めるところ。

 英語とフランス語が公用語のカナダだが、実際には英語圏がほとんど。英語が流暢でないディオン党首にとって、国民に強く訴えかけるには政策内容もさることながら、語学力強化も必須だ。

(2008年9月8日)
National Post:カナダの2大全国紙の一つ。国内最大メディアグループCanWestに属している。


(解説)

 ディオン党首が自由党党首に選出されてからおよそ1年半。一向に上達しない彼の英語力、特に発音と文法について、これまでも分かりにくいとの声はあった。

 記事の中では、その原因について自ら、聴力に少し障害があるためと説明し、これが母親から受け継いだものだとも語っていた。

 しかし、そんな悠長なことは言っていられない。9月7日、スティーブン・ハーパー首相が議会の解散と総選挙を発表したことによって、各地への演説と国民に向けてのテレビ討論会という英語必須の状態が、選挙日10月14日まで終わりなく続く。

 今選挙では5つの党が下院308議席を争っている。カナダ連邦議会と言えば、一般的にこの下院を指す。上院は任命制。カナダの選挙活動はとにかく移動距離が長い。総面積990万平方キロメートル、日本の約27倍の国土に、3200万人が点在する都市を中心に移動する。

 そうなると、遊説も大事だが、やはりテレビ討論会が国内隅々まで国民に広くアピールできる場として重要な鍵となる。今年は5党代表が顔を揃える。テレビ討論会は2回。1回目はフランス語、2回目は英語となっている。

 党首の演説力が選挙戦に大きな影響を与えることは言うまでもない。ここで重要となるのが、政策とそれをアピールできる語学力である。各党首とも両語を操る。しかしそれぞれどちらかが母国語だ。
 
 現在少数派ながら政権を握っている保守党(Conservative Party)のハーパー党首はアルバータ州が基盤。母国語は英語。しかし、2006年首相になってからというもの、記者会見など公の場では常にフランス語で先に挨拶をするなどの努力が実り、今回苦手のフランス語圏ケベック州でも自由党を追い越した。

 野党第1党の自由党(Liberal Party)ディオン党首はケベック州出身。先に述べたように、フランス語が母国語で、英語は少々聞きづらい。出身州での支持も低下しており苦しい展開が続いている。

 その他、オンタリオ州を基盤としているNDP(New Democratic Party)のジャック・レイトン党首、グリーン党(Green Party)のエリザベス・メイ党首は英語、ケベック連合党(Bloc Quebecois)のジル・デュセッペ党首はフランス語が母国語だ。
 
 カナダの公用語が2カ国語ということは知られているが、実は10州3準州ある中で、2カ国語を公用語としているのはニューブランズウィック州のみ。あとはケベック州がフランス語のほかは、すべて英語。つまり、英語を苦手とすることは、大部分の有権者に伝わりにくいということだ。

 現在、世論調査で劣勢に立っている自由党にとって、討論会で国民にどこまで訴えかけられるかが鍵になる。ここからの追い上げは、ディオン党首の英語力にかかっているのである。

 とはいえ、これまでもフランス語を母国語として首相を務めた人は多くいた。ジョン・クレティエン元首相なんかもその一人。こちらが聞いても明らかに間違った文法だったりするのだが、彼の演説にはある種カリスマ性があった。なまった英語でも首相が務まるというのはカナダならでは。ちなみに今回の争点は、経済、環境問題、アフガニスタン問題と大きく3つである。

 盛り上がりを見せるアメリカの大統領選挙、日本での解散総選挙の可能性などの陰に隠れて目立たないが、保守党多数派政権誕生かとこちらも盛り上がってきた。何より、まずは党首討論が楽しみだ。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○日本deカナダ史  2008/10/03
 「カナダ党首討論、米副大統領候補討論と同日に放送される」
 カナダ人の多くはアメリカ政治に強い関心を寄せてきたが、今年の秋は
 両国でほぼ同時に選挙が実施され、両国のテレビ討論が10月2日の同じ日に
 放送された。セーラ・ペイリン知事とジョー・バイデン上院議員の
 両副大統領候補によるテレビ討論は世界的な関心を集めたが、カナダ人の
 多くは同日行われたカナダ総選挙のためのテレビ党首討論を視ていたこと
 が判明した。
http://blog.so-net.ne.jp/canadian_history/2008-10-03

 

 


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