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増え続ける空き家率が象徴する米・住宅問題の深刻度

〈記事概要〉

 米国では現在、9件に1件の住宅が空き家の状態─。住宅ブームの頃に過剰供給され、その後に訪れた住宅市場の崩壊がこうした事態を生んでいる。

 「この数字は住宅問題が重大である証拠だ」。ハーバード大学で住宅研究を行うニコラス・レトシナス氏はそう話す。「この住宅在庫は市場の回復を遅らせる要因になる」。

 空き家が一気に増えたことで問題も顕在化している。コミュニティが住宅価値を支えようと必死になり、おまけに誰も住んでいない家の維持管理と安全問題も浮上している。レトシナス氏は「これは悪影響だ。空き家は、たいてい世話が行き届かない」と懸念する。

 熱狂的な住宅ブームが到来した2005年にも空き家率が上昇したが、そのときは直ぐに売れたので問題は起きなかった。「これは異なる問題」と話すのは、南カリフォルニア大学で住宅統計を研究するドエル・マイアズ氏。「(空き家率が)非常に高いのは、需要が欠けているから」だという

 歴史的には、空き家率は低所得者が多く住む都市で憂慮されてきた。ところが現在は比較的裕福な人たちが住む郊外地区や、サブディビジョンと呼ばれる分譲地区で起きている。レトシナス氏は、「(低所得者の多い)デトロイトの都市部で放棄された住宅を見ることが出来るが、ネバダ州のヘンダーソンやアリゾナ州のメサでも(ネバダ州ラスベガスとアリゾナ州フェニックスの郊外地区)同様の現象が見られる」と分析する。

 緊急経済対策法案の20億ドルは、コミュニティに住宅の購入意欲を与え、フォークロージャー(抵当物件)を減少させるのに役立つだろう。

 住宅価格の下落が顕著に起きているのは、カリフォルニア州のリアルト市。この内陸の町は、南カリフォルニアの沿岸部の住宅が天文学的な価格をつけた際、手ごろな価格で家が買える場所ということで一時期ブームになった。

 しかし、住宅価値は2007年以降50%下落し、新たに開発された40戸のうちわずかに4戸しか埋まっていない。住宅計画マネージャーのジョン・デュトレー氏は、「こうなったら、空き家に無断居住者でも連れてきたほうがいい。そのほうがメンテナンスや防犯上の観点からも望ましい」と話す。

USA TODAY 2月14日付


〈解説〉

 データによると、全米で現在1400万戸の住宅が空き家になっているという。これには別荘などの目的で建てられている季節貸しの住宅件数は含まれていないから、本当に空いている家がこれだけあるということだ。

 空き家率は15%近くまで跳ね上がり、ここ20年の景気後退局面のなかでも最悪の数値。過去に高まったときの数字は、1984年が9.4%、湾岸危機とリセッションが重なった91年でも11%だった。

 米国国勢調査のセンサスによると、賃貸住宅で空き家率が10%台を記録。持ち家住宅は2.9%で推移している。この数字だけ見ると持ち家の空き家率は低いようにも思える。だが、過去10年間に2度の10%台を記録し上下の波がある賃貸と比べて、持ち家は2005年以降、上昇一方だ。

 住宅バブルの当時に建設された比較的新しい家が空き家であることも多く、2000年以降に建てられた物件の9%以上が空いているという。住宅価格でいうと、50万ドル以上の物件が空き物件になりやすい。

 10年前ならともかく、好景気に沸いた住宅バブルの頃なら郊外の少し大きめの家が50万ドルを超えてしまうケースも珍しくなかった。それでも即買い手がついたが、いまでは誰も手をつけようとせず、閑古鳥が鳴いている。

 住宅を手放した人は、その多くが低所得者向けのサブプライムローンを利用して購入したケースだ。景気がしぼんだこともあり返済が滞りがちになり、遂には差し押さえ物件となってしまっている。大規模なレイオフが進行中の現在、こうしたローンの返済ができない人たちの人数は増え続けている。

 テクノロジー企業が集まるシリコンバレーは、全米でも有数の高額所得地区。だが、IT企業が次々にレイオフを行っているため、住宅ローンを支払えない人たちも急増している。90日以上支払いが遅れた割合をまとめたものを地元新聞社が公開しているが、1年前と比べるとその差は歴然。エリアによっては、1年前に2.63%だったものが、10.25%まで上昇している例もある。

 空き家率が高く住宅価格が低いとあれば「買い時」でもあるのだが、ほとんどの人は肝心の購入資金が捻出できない。金融機関が貸してくれないからだ。住宅バブル当時に物件を作りすぎたツケが、いま回ってきている。

 


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