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ガソリン価格はこれからどうなる? 車社会アメリカでの予想

  • 米国在住ジャーナリスト

(記事概要)

 ガソリン価格がここ5年間で最安値をつけたカリフォルニア州だが、深刻な不況が家計に与える影響からか、販売量は一向に上向いていないことが明らかになった。

 州の税務当局が発表したデータによると、昨年12月に州内で販売されたガソリン量は前年と比べて6.3%少ない結果となった。12月といえばガソリン価格が急激に落ち込んだ時期。1ガロンあたり1ドル80セント以下を記録するなど、最高値の夏頃と比べて6割以上安くなった。しかし、州民は倹約に乗り出しているようで、2008年通年でのガソリン需要も前年と比べて4.1%少なくなった。

 カリフォルに州立大学デービス校でガソリン価格と消費量の関係を研究しているダニエル・スパーリング氏は、「ガソリン価格だけを見ると、消費量も増えているように予測できる。でも人々は収入がなく、将来にもとても神経質になっている。だから、運転する機会が減っていると分析できるのです」と話す。

 カリフォルニアでのガソリン売上げは、ここ3年間で最も低い数字を記録している。過去3年間のほとんどは、カリフォルニアのドライバーはガソリン価格の相次ぐ高騰に反応した。何しろ、昨夏にはレギュラーガソリンが1ガロンあたり4.61ドルまで上昇した。そして世界的な不況が直撃した。多くの通勤者は職を失い、免れた人たちも可能な限りの支出カットをしながら、仕事に関しての心配を余儀なくされている。

 崩壊する経済は、軽油販売にさえ大きな影響を与えている。国際貿易の落ち込みは貨物輸送の需要を減らし、カリフォルニアのトラック輸送量も落ち込んでいる。12月の軽油売上げは前年比9.2%の落ち込みを示し、通年では8.3%下落した。

 ヘイワード市でロードスター・トラッキングという運送会社を経営するボブ・ラモリノさんは「トラックの数に見合うだけの十分な走行距離を稼げていない。たぶん、20%から25%少ないのではないか」という。

サンフランシスコ・クロニカル 3月31日付

(解説)

 米国でのガソリン価格は最高値を記録した昨夏以降、ガロンあたり1ドル台に値を戻すなど、大幅に下がった。なにしろ高い時期の1ガロン4ドル50セントといえば、私がアメリカに来た当初の10年前と比べてほぼ4倍近い価格。ガソリンをがぶ飲みするアメ車、日本と比べて長距離を走らざるを得ない地理的条件などを加味すると、ドライバーにとっては相当な痛手だった。

 春先に来て少しじりじりと再び値上がりの様子を見せてはいるが、それでもサンフランシスコ近郊ではガロン2ドル20セント前後と、1年前と比べたらまだまだ安い。以前のようにガス代を気にせず運転する人が増えたのかと思いきや、ガソリン需要は一向に上向いてこないという。

 エネルギーアナリストは、ガソリン価格の下落がアメリカ人のかつての行動、つまり、SUVなどのガソリンがぶ飲み車を買い、ガス代など気にせずどんどん運転する行為、を再び引き起こすのかどうかを確かめている。

 カリフォルニアから全米に目を移すと、ガソリン販売は横ばいとなっているようだ。エネルギー省の調べによると、2008年は前年比2.2%の落ち込みを記録したものの、直近のデータでは同0.4%の減少にとどまっている。ただ、これがいつの日のことなのかは公開されていないから、落ち込みが止まったことを裏付けるためには、もう少し待つ必要がありそうだ。

 この先、ガソリン価格がどう動いていくのかが消費者にとっては一番気がかりな部分。再び上がるのか、下がるのか、このままの水準で行くのか。それによって生活に受ける影響はかなり違ったものになる。人々の関心もそこにあり、多くはすぐに再上昇が始まると思っているようだ。

 オイル価格情報センターのアナリストを務めるトム・クローザ氏は、次のガソリン高騰が来るとしたら、それはオバマ政権の任期が切れる4年後だと予想する。不況が続いている間にはガソリン販売量は増えないから価格も上昇しない。だが、現政権の経済対策が功を奏して景気が回復を始める4年後あたりに人々が将来に希望を持ち始めると、需給バランスから再び上昇に転じるとの見方だ。

 ただ、例えそうなったとしても、ここ1─2年で記録したような高騰はしないだろうと予測する。ハイブリッドカーに代表される低燃費車がだいぶ出回り始めているし、政府の低燃費規制から自動車メーカーもさらに燃費のよい車を作る方向に動いているためだ。

 アメリカ在住者の一人として言わせてもらえば、そうあって欲しいと願う。食費よりも多くの出費をガソリン代に充てなくてはならない生活はもうこりごりだ。

 


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