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韓国TVホームショッピング番組に異変。娯楽化の背景

<記事要約>
 
CJショッピングが毎週水曜日の午後4時40分からケービルテレビで放送しているホームショッピング番組は一般視聴者の新婚夫婦が番組を進行する。進行役を務めているのは夫のキム・ボチョンさんと妻のイ・スジョンさんだ(注・韓国では夫婦別姓のため夫婦間で姓が異なる)。番組では、夫婦がCJショッピングのホームショッピングを通じて購入した商品を視聴者に紹介すると共に、実際に彼らの自宅で撮影された再現ドラマも放送されている。一般夫婦ながら自然で夫婦のほのぼのとしたやり取りが視聴者にも好評とのことだ。
 
最近、TVホームショッピング番組に異変が起こっている。これまでのようにスタジオで進行役のアナウンサーが商品を紹介するといった単調なものから、「娯楽」を意識した番組作りが進められているのだ。前出のような一般視聴者が進行や再現をするものから、音楽ライブやお笑い番組形式など様々なスタイルのホームショッピング番組が次々に放送されている。

ホームショッピング業界の大手・ロッテホームショッピングの番組制作チームのジョン・ユンサンチームリーダーは「今は、安くて質の良い商品という触れ込みの紹介だけでは勝負できない。従来の番組の形式に拘らず、番組をいかに面白く制作するかによって、視聴者の消費心理を刺激しインパクトを与える番組にしなくてはならない。」と語る。このような背景からも従来の形式とは異なった娯楽を意識したホームショッピング番組が次々と放送されている。
 
■ インターネット結合型:
現代ホームショッピングは4月下旬の1週間、テレビと自社のホームページをコラボレーションさせた実験的な番組進行を行った。ネットを活用する20から30代の顧客の拡大を狙ったもの。
 
■ ホームショッピング番組司会者も体を張って挑む:
GSホームショッピングの番組で司会を務めるイ・ヘジンさんは、最近の放送でダイエット下着を紹介、自身の体重やスリーサイズなどを公開し、実際に下着を着用してどのように効果があるかを体重やサイズの変化と共に伝えた。この公開ダイエットは大きな反響を呼び、ダイエット下着の売れ行きも好調であった。
 
■ ライブスタイル:
ロッテホームショッピングが現在放送している番組では、スタジオ内にDJブースを設置。放送中に視聴者からの電話やメールでのリクエストを受けて、バンドがリクエスト曲を生演奏するというミニライブコーナーが視聴者から好評を得ている。
 
2009年6月6日 中央日報紙面より
 

<解説>
 
韓国で「ショッピングをする」と言えば、ホームショッピングは決して無視できない存在だ。

韓国のホームショッピングは1995年に始まり、まだ14年ばかりの歴史が浅い市場。そんな中で、今や年間売り上げが5兆ウォン(日本円で約3,930億円)を超えるまでに成長し、近年ではこの勢いに乗り、大手ホームショッピングのCJがインドに、NS農水産がアメリカにそれぞれ海外進出を果たしている。一度、ブームに火がつくと勢いと共に急激な成長を遂げるというのがいかにも韓国らしい。そういう意味でもITと並んでホームショッピングも1990年代の韓国が生んだビジネスの象徴と言えるのかも知れない。
 
韓国では現在大手のCJやLG、ロッテなど5社がホームショッピングの専門チャンネルを持ち販売を展開している。ホームショッピングを利用するのは主に40から50代の中年主婦層。支持される理由としては、ショッピングのジャンルが幅広いこと(何と海外移民の斡旋や留学、果ては自動車までホームショッピングで売られ、申し込みが殺到という話もあるのだ!)、ホームショッピングであれば店舗まで足を運ぶことなく、24時間好きな時に注文が可能、顧客に対するきめ細かいサポートなどが挙げられる。実際に、LGホームショッピングの顧客センターでは日本への研修旅行を行い、サービス業の現場を視察することで、韓国では軽視されがちだったサービス業の基本でもある顧客対応を中心とした社員教育に力を入れている。
 
しかし、合理的で利便性の高さで人気を得ているホームショッピングも独壇場で悠々としている訳にはいかないようだ。20から30代の顧客の獲得が伸び悩み、ネット通販の追い上げがホームショッピング業界に危機感を与えている事情がある。昨年度の売上高がネット通販では前年比の10%伸びた反面、ホームショッピングは5%の減少であったという。ネット通販は大手に限らず中小規模の業者も次々に参入している状況だ。また、現に私の周辺の30代の女性達からは「ネットを使う機会が多いし、ネット通販は低価格で品揃えも充実しているからよく利用する。」という声が多く聞かれる。
 
消費動向や流行を若年層が左右しているという現状からも、前出のロッテホームショッピングのジョン氏が提唱するように、若年層が好むバラエティや音楽番組を意識した新たなホームショッピングの番組制作による20から30代の顧客層拡大や、ネット通販業者との差別化をはかっていくことが今後のホームショッピング業界にとって必要な課題と言えるであろう。

 

 


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