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あきらめムードが漂う米国の夏商戦

  • 米国在住ジャーナリスト

(記事概要) 

消費者が7月4日の独立記念日を祝う準備が出来ているように、多くの小売業ではすでにこの夏の商戦が失敗に終わるものとあきらめてしまっている。

小売の大手のメイシーズは、夏の上着、水着、ドレスの売り上げが最大で50%減少し、高級百貨店のバーグドルフ・グッドマンは、デザイナーブランドの価格を最大70%引き下げた。同時に山のような数の洋服は、バーベキュー・グリル、テント、ガーデニング用品と同様に店舗に陳列されず、精算人のところへ直行し、現金を確保するために使われている。

このような早い時期からの大きな値引きは、バーゲンセールを待ち望んでいる人たちには朗報だろう。だが、小売店にとっては、5月末から続いている落ち込みをこれ以上深刻化させないか心配な兆候だ。

主要流通業の6月の業績は来週に発表される。懸念材料としては、全米で異常とも思える天候不順が続いたことで、その間のビジネスが伸び悩んでいることだ。

さらにアナリストたちは、景気回復が直ぐに訪れない状態を前にして、消費者が厳しい現実を見続けることが出来るか疑問に思っている。経済活動の70%は消費者の支出で決まるからだ。それは、夏物在庫を早急に一掃して、7月から始まる秋物のスペースを作る必要がある商店にとっても良い兆候ではない。

Associated Press 6月29日配信


(解説)

米国景気は依然として不透明感が漂っている。5月の失業率は前年比で3.9%増となる9.4 %を記録し、前月比で0.5%増となった。9%台となったのは、1983年9月に記録した9.2%以来の出来事。雇用者数も17カ月連続で減少となるなど精彩を欠いている。こうしたことから、夏の商戦に突入する小売業には不安が多い。

アナリストの分析では、ショッピングモールにあるアパレル販売店での値引き率は昨年より10%高い。在庫は20%減少しているにもかかわらずだ。売れ残りが出ることを見越して価格をあらかじめ低く設定しているのは、それだけ小売店が商戦に対して不安を持っていることの表れでもある。

そんな調子だから、在庫余剰品をオークションにかけて、1ドルショップなどに売りさばく清算ビジネスが好調だ。ワシントンDCにあるリクイディティ・サービスでは、1年前と比べて4割近い業績アップを記録しているという。また、在庫品販売の場所をネット上に提供するオーバー・ストックドットコムでは、洋服、アクセサリー、ブランドハンドバッグを中心に商品が前年比で70%増えている。

雇用や収入への不安材料を抱え、消費者にも節約志向が高まっている。高級品を敬遠し、必要な食料生活雑貨だけをウォルマートなどのディスカウントストアで購入する人が増えているようだ。

私の住む町でも、1ドルショップや10ドルちょっとで食べ放題の店が繁盛し、いつ行っても混雑している。それまでガラガラだったレストランが食べ放題方式に変えたところ、一気に盛り返した例もある。こんな時勢だけに、人々は「お得感」に引き寄せられるのだろう。

株式市場の低迷やガソリン価格の再上昇を背景に、消費者の景気回復への信頼も揺らいでいる。ギャロップ社が全米の成人1000人を対象に実施した世論調査(6月22─28日)によると、経済状況を悪いと答えた人が47%に上り、良いと答えた人の11%を大きく上回った。

悪い方向へ向かっていると答えた人も60%で、回復に向かっていると答えた人は、その約半分の33%しかいない。1年前の調査で回復に向かっていると答えた人が8%だったことを考えると状況は好転しているといえないこともないが、依然として先が読めない状態であることは確かだ。

夏商戦のあきらめムードが漂う中、関係者にとっては最大の書き入れ時である年末商戦までには、何とか景気が持ち直して欲しいというのが願いだろう。

 

 

 


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