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不況時にキャンデーを買いに走るアメリカ人の心理

  • 米国在住ジャーナリスト

 (記事概要)

 不景気で多くのアメリカ人が高級車、洋服、バケーションを諦めているのに、ことチョコレートや飴への欲求となるとまるで落ちていないことが明らかになった。

 カリフォルニアの8月の失業率は12.2%を記録し、差し押さえ住宅物件の増加もおぼろげに見え始めている。だが、甘いお菓子にはサンフランシスコや他の地域で売り上げが大きく増えていることが、食品メーカーやアナリストによって分かった。

 「チョコや飴には、安価で消費者を楽しませるものがあります」。サンフランシスコ近郊のキャンディーメーカーの社長はそういう。「人々の機嫌が悪いときに気分を良くし、その値段はとても安いのです。ビールと同じです」。アルコール飲料、アイスクリーム、ビデオの売れ行きも悪くはないが、チョコと飴は不況の今でもその人気が際立っている。

 大恐慌時代以来、ずっと人気のあるスイーツを製造してきたキャンディーメーカートップのハーシーは、第二四半期の業績が昨年と比べて79%増加した。シカゴの市場調査会社ミンテルインターナショナルによると、2008年の米国のチョコレート総売上高は166億ドル。今年は2%増えて、170億ドルになると見込まれている。チョコを除いた砂糖菓子全体の今年の売り上げ予想は21億6000万ドルに達する見込みで、こちらも昨年より3.4%上昇している。

サンフランシスコクロニカル紙 9月22日付


(解説)

 アメリカ人のキャンデー好きは並大抵のものではない。こちらでは飴やチョコレートをともにキャンデーと呼ぶが、スーパーのキャンデーコーナーに行けば、大きさ、形の違う商品が所狭しと棚を占領している。徳用サイズの袋詰めがたくさんあると思えば、バータイプのチョコレートも負けじと種類が多い。

 エナジーバーや、カロリーを抑えたダイエット向きのものまであって好きに選べる。こうしたキャンデーをランチ時にサンドウィッチと一緒に食べたり、スナックタイムと呼ばれるおやつ時にかじったりする。

 それに、サンフランシスコ近辺のお土産といえばキャンデーが多い。ギラデリやシーズキャンデーは日本でも有名だろう。地元の人に愛されているシャッフェンバーガーという名前のチョコレート屋もある。

 いま、キャンデーの売り上げが伸びている要因として専門家が挙げるのは、他の嗜好品や高価な食事を諦めざるを得ない経済状況だ。人々は、懐に響かないで満足させてくれるモノを捜し求めている。キャンデーがそこにピッタリ当てはまるということらしい。

 甘い食べものには疲れを癒す効果があるから、給料が減ってストレスが溜まっている人が多い現在の状況になおさら合っているのかも知れない。面白いのは、スニッカーズなど定番の人気のキャンデー商品は、景気後退の時代に生まれているということだ。これなど、お金がないときにはキャンデーに走るアメリカ人の消費志向を裏付けている。

 昨年、原材料費の高騰からキャンデーの価格を上げたメーカーは、それでも売り上げが落ち込んでいないという。こうしたことから、「キャンデーを買うことによって、自分たちはまだだいじょうぶだし、自分自身をもてなす余裕があることを主張したいのではないか」と深い分析をする向きもある。
 
 折りしも、もうすぐハロウィンがやってくる。アメリカではこの日、変装した子供が近所を回り、チョコレートをもらう習慣がある。大手グローサリストアではキャンデーの特売を始めるころでもあり、需要はさらに盛り上がりそうな気配だ。

 ただ、行き過ぎは何事にも弊害が生まれる。チョコレートの食べすぎは肥満や虫歯の可能性を高くする。いくらキャンデーが安いといっても、医療費が高くついてしまっては元も子もないことを肝に銘じておかないといけないだろう。

 

 


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