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おばさんユーザー大進出、イギリスのソーシャルネットワーキング事情

コンピューター、IT、インターネット...といえばまずは男性、とくにオタクの世界だったのが20年前。イギリスの女性達も自宅で電子メールを使いだしたのが10年前。そして、今やインターネットは女性にとって欠くことのできない会話の場となっている。

イギリスでソーシャル・ネットワーキングのためのサイトと言えば、人気なのは「Facebook」「myspace」「Friendfeed」「Linked In」、「Flicker」、「Twitter」だ。どちらも昨年に入って女性ユーザー数が男性を上回るようになり、現在は「myspace」の64%をトップに、どこも最低55%は女性に占められている。いちばん急増している年齢層が既婚で子持ちの30から40代で、ここ3年間、毎年1割増を記録しているそうだ。

ブロードバンド普及の遅れと、古いもの好きで変化を嫌う土壌からインターネット後進国と呼ばれ続けたイギリスが、やっとこさドイツなどの先進国に追いついたのはついこの数年のこと。その背後を押したのがオタクでもティーンエイジャーでもなく、テクノロジーにとんと疎いはずのミドルエイジな女性たち、というのはなんだか笑える話。

とりわけ2006年からスタートした、マイクロブログとも呼ばれる「Twitter」の人気はすごい。ブログよりずっと軽いノリで、140字以内の「つぶやき(=ツイート)」を書き込むと、登録している友達がすぐに反応してくれる。ほとんど同じ場所にいるかのようなコミュニケーションを展開することができる。米国の選挙戦でオバマ大統領が効果的に使ったことで注目を浴びてからは、なんと6倍のアクセス伸び率を記録。その57%を占めているという女性達が、一度使ったらもうやめられないと思う理由は、イギリスの携帯電話にあるに違いない。イギリスを含む欧州ではずっと、携帯電話の通信として電子メールではなくSMS(ショート・メッセージング・サービス)が使われている。ピッピッと短いテキストメッセージを、メールアドレスではなく電話番号を使って送り合うことに慣れた身には、「Twitter」は電子メールよりよっぽど親しみの持てるツールなのだ。特に、女性にとって。

BBC国営ラジオ放送でメディアテクノロジー番組のコンサルタントを務める、レイチェル・パーマーさんに、この見解をぶつけてみる。携帯のSMSから「Twitter」へという流れには同意しながらも、女性が「Twitter」を好むのは「ショートメッセージを送り慣れているから」ではなく「女性がとても忙しいから」だと断言。「一番増えているユーザーは子持ち。女友達とバーで集まろうとすれば、夫かベビーシッターに子守を頼まなくてはならず面倒くさい。メークして着替えるのもしんどい。出かけずに、複数の友人と短いメッセージを通して気のおけない話ができるのは大きな魅力」なのだそうだ。

子供が寝静まった後は、また別の「Twitter」アカウントを使い、厳選された少数の友人同士で子供の教育から子宮筋腫の治療まで、夫にも聞かせられない井戸端会議を繰り広げる。「おしゃべりは女性に取って一番自然な癒し。だから人気なのでは」と分析する心理療法士のドーン・マコーネルさんは「Twitter」を使った女性向けグループセラピーを開発中だ。

女性のネット台頭を世間に認識させたきっかけは、ゴードン・ブラウン英首相の妻、サラさんの発言からとも言われる。イギリスの国費医療システムNHS(National Health Service)がアメリカから批判された時、さっそく英国政府の「Twitter」アカウントからコメントを発信。「言葉ではとても言えないほど、私たちはNHSを愛しています」という一言だけの女性らしいメッセージは、首相である夫の長い反論よりよほど説得力があり、多数の国民が突然、愛国的NHS支持派になってしまった。男性達はこうしてようやく女性のネット進出の規模に気づき、その政治やビジネスに与える影響力の高さにも驚かされている模様だ。

「Facebook」http://en-gb.facebook.com/
「myspace」http://uk.myspace.com/
「Friendfeed」http://friendfeed.com/
「Linked In」http://www.linkedin.com/
「Flicker」http://www.flickr.com/
「Twitter」http://twitter.com/
英国政府の首相官邸ツイッター http://twitter.com/downingstreet

 


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