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カリフォルニアの住宅需要回復の兆し見られるも予断許さない情勢

(記事概要)

 不動産報告書によると、9月のサンフランシスコとその周辺地区(ベイエリア)の住宅売買は、僅かながら上昇に転じたことが分かった。税金控除と低利が影響を及ぼしたものと見られている。

 サンディエゴの不動産調査会社MDA DataQuickによると、9つの郡を抱えるベイエリアの新築、中古、コンドミニアム物件の販売合計は、昨年9月の統計と比べて8.4%上昇したことが分かった。件数でいうと5705件で、4.7%増えている。夏が終わると通常、住宅販売は落ち込むものだが、新築と中古の合計で昨年8月と比べて4.8%増加した。報告書では、初めての住宅購入者が11月末で期限切れとなる8000ドルの税額免除制度を利用して買いに走ったと分析している。

 ただ、物件の動きは価格帯によってだいぶ異なる。サブプライム問題から生じたフォークロージャー(差し押さえ)物件として市場に出回る20万ドル以下の低価格帯には複数の購入希望者が付き、最初の売値よりも高い値段で売れていく。20万ドルから60万ドル程度の中価格帯になると動きもゆっくりとしてくる。そして100万ドルを超える高級物件になると、掘り出し物を除いて動きもあまりない。

 住宅市場に占めるフォークロージャー物件の数は、ここに来て減ってきている。今年2月には半分以上の物件が差し押さえ物件だったが、9月の統計では32.8%に落ち込んだ。歴史的にみれば、まだまだ大きな数には違いないが。

 昨年9月のシングルファミリー向け住宅価格の平均値は40万ドルだった。それがいまでは38万ドルに下がり、前年比で5%下落したことになる。ベイエリアの住宅平均価格のピークは2007年6月に記録した66万5000ドル。それと比べると半値近くになっている。

 不動産会社のマーケティング担当者はこう話す。「多くの地域で住宅在庫の減少が見られるようになってきた。抵当流れ物件が売れる動きがはっきりとしてきている」。

サンフランシスコクロニカル  2009年10月15日付け


(解説)

 不景気の象徴として影を落としていた住宅販売が上向きに転じたとのニュースが、地元の新聞に取り上げられていた。低価格帯の住宅にじりじりと買い手が付きつつあるとの内容だ。これを持って景気回復の予兆と見ていいのだろうか?

 カリフォルニア州の9月の失業率は前月と同じ12.2%で、下げ止まりは明るい兆しとの見方もある。だが、アメリカでは9月から学校が始まるため、労働力の総数が減っていることを考えると失業率の改善と結びつけるのは早計だ。依然として州内では225万人が失業中で、うち60万人がここ半年の間、職にありつけていない。

 そんな中でもフォークロージャー物件が減少している裏には、オバマ政権が2月に打ち出した差し押さえ緩和策の影響がある。ホームオーナー・アフォーダビリティ・アンド・スタビリティ・プラン(持ち家所有者に対する値ごろ感と安定化計画)と名づけられたこの計画では、住宅ローンの支払いに苦慮する人たちが返済金利や月々の返済額の減免を受けられる。対象となる住宅差し押さえの危機に瀕しているといわれる人々は700万人から900万人。ここに来て、徐々にその効果が現れてきたのだろう。

 私はサンフランシスコ近郊の町に住んでいるが、近所を車で走ると庭先に「For Sale(売り出し中)」と書かれた看板を出している住宅がチラホラ目に付く。場所的には低価格帯から中価格帯に位置する物件だが、ここ数ヶ月で特に減ったようには思えない。だが、統計を見ると確かに売れている。北カリフォルニアの9月の住宅販売実績では前月比を5%上回るおよそ8千件が売れ、カリフォルニア州全体でも対前月比で1%となる約4万件を記録するなど僅かながら伸びを見せている。

 記事でも説明してあるが、こうした上昇の背景には8000ドルの税免除も後押ししているようだ。2008年から始まったこの制度では、今年1月2日から11月30日までに新たに住宅を購入した人に対して最大8000ドル(2008年は7500ドル)の税額免除を与えている。20万ドルの家なら購入金額の4%に相当するだけに庶民には大きい。差し押さえで一気に価値が下落した買い得物件であれば20万ドルを切る住宅も珍しくないから、期限切れとなる11月一杯までに住宅購入に走る人が増えるのもありえる話だ。
 
 となると、住宅需要が本当に回復したかどうかは、もう少し様子を見ないと分からないということになる。免税措置が終わった途端に、また沈んでしまう可能性もある。最低でも年明けごろまで動きを観察する必要がありそうだ。

 


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