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中南米の町で見かける携帯電話事情

  • 米国在住ジャーナリスト

  中南米諸国を移動して目に付くのは、どこの国でも携帯電話の普及率が高いことだ。日本にいるとそんないまさら当たり前じゃないか、と思うかもしれないが、月収3万円程度の開発途上国が連なる地域である。

 生活に余裕があるとはいえない貧困層が大半のはずなのに、それがどこへ行っても、大人はもちろん、場合によっては中学生ぐらいの子供も携帯を持っている。街中や喫茶店ではもちろん、バスに乗ればどんな辺鄙な場所へ行こうが、スペイン語で「アロー(もしもし)」とやっている。

 暇なときには、携帯付属のプレーヤーを使って音楽を聴くことも忘れない。ただし、イヤホンなどは使わず、とたえ満員のバスの中であろうがボリューム一杯にしてラテンポップに聞き浸っている。彼らにとって音楽は生活の一部だから、そうした行為に対して文句をいう人などだれもいない。

 だいたい路線バスでは、たいていは運転手がお気に入りの音楽をガンガンにかけているのだ。メーターも動かず、急坂で止まってしまう20年前のアメリカ製オンボロバスなのに、ステレオだけはピカピカのソニー製がついていたりする。


 話を携帯電話に戻すと、実は中南米は携帯電話の普及率が高い地域として有名だ。アルゼンチンは人口対比での普及率がすでに100%を超え、90%以上の国も多い。世界有数の成長率を誇る地域となっている。

 なぜか。それはプリペイドタイプのサービスが普及しているからだ。携帯ユーザーの8割程度がプリペイドといわれる。端末を購入し、あとは必要なだけの通話料金を購入する。なくなったら、また継ぎ足せばいい。

 だから、日本のように1万円程度の毎月の支払いをする必要はない。月額利用料は1500円程度という。それに折りたたみタイプの端末はまずなく、簡易機能のフラット型だから端末を買い換えても安い。韓国製や聞いたことのない中国製の端末が2000円ぐらいで売っている。性能があまり良くないのか、話すときだけ電話を口元に持ってきて、どなるようにしている人もいる。

 また、公衆電話の代わりとなるレンタル携帯電話やインターネット電話サービスを安い値段で提供する店があちこちにある。このため、携帯は待ち受け専用に使い、自分から発信はしないというケースもある。私の知り合いも、端末を2個持っていながら自分から携帯を使ってはかけない。

 コロンビアの首都のボゴタへ行くと面白い光景が見られる。「200 minute(1分間200ペソ=約10円)」といった看板を持ち、いくつもの端末を鎖で体につないだ人が街角のあちこちに立っているのだ。町行く人々は携帯を手に取って通話し、終わったら表示時間を元に料金を支払う。

 車を運転していて電話したくなったら、道端に止まりクラクションを鳴らすと、携帯を鎖からはずして持って来てくれる。大通りなど、10メートル置きぐらいにこの携帯サービスがある。仕事にスキルが必要なわけではないので、主婦のような女性もこの仕事をしている人は多い。

 このように携帯は普及しているが、その使い道は純粋に音声通話が主流で、日本のようにニュースをみたり、ゲームをしたりといったユーザーはあまりみかけない。あっても音楽が中心で、たまにテキストメールを打っている人がいるぐらいだろうか。

 とはいっても、データサービスを提供する第三世代携帯電話の導入は2年ほど前から急速に進んでいる。携帯が一定の普及率に達したことから、収益性を高めるために携帯電話事業者が戦略的に取り組んだものだ。データ通信の普及はまだまだだが、普及台数が多いだけに成長可能性は高いと見込んでいる。

 ラテンアメリカ諸国の人たちは、話好きな人が多い。初対面でもアミーゴ(アミーガ)(男[女]友達)と呼び、誰とでもすぐに打ち解ける。そういう意味では、一人画面に向かって携帯アプリを黙々と操作する姿は、あまりイメージできないのだが・・・。



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