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バンクーバー五輪 金メダルの相乗効果は絶大

 カナダにとって最高のフィナーレで2月28日バンクーバーオリンピックは幕を閉じた。さまざまなドラマがあった17日間だった。

 印象的だったのは何と言っても市民の熱狂ぶり。バンクーバーがあれほど熱くなったのは後にも先にもないに違いない。

 バンクーバー五輪では色々な効果があった。最も顕著だったのは金メダル。これは5年前、連邦政府、ブリティッシュ・コロンビア州政府、カナダオリンピック委員会、バンクーバーオリンピック委員会が協力して立ち上げた“Own the Podium”という表彰台独占プログラムとでもいうべきメダル獲得大作戦。年間1100万加ドル(約9億3千万円)をかけて、メダル有力候補選手を技術的、物理的、精神的、金銭的とさまざまな面から支援してきた。

 その結果、金メダル14個と冬季五輪史上最高数を勝ち取った。本来はメダル総数でトップを狙うというのが目標だったのだが、26個はアメリカ、ドイツに次いで3位。この結果にプログラムの賛否が分かれたが、メダルを取った選手も、取れなかった選手も、“Own the Podium”の存在に感謝の言葉を並べていたことを思えば成功だったのだろう。3月4日の予算案で、連邦政府はあと2年、このプログラムを支援することを盛り込んだ。
 
 このプログラムには、メダル奪取との相乗効果があった。開幕前は静かだったカナダ国民が開幕した途端、愛国心を前面に押し出して町をメープルリーフで文字通り埋め尽くした。街は人であふれ、笑顔であふれ、O Canadaで溢れていた。市民の熱狂ぶりは、街を活気づけた。カナダ選手が勝てば勝つほどオリンピックグッズは飛ぶように売れ、毎日公式ショップには長蛇の列。5時間並んでも、胸にCanadaのロゴの入ったトレーナーを着て町を歩くのが心地よかったに違いない。

 開催州のBC州、開催市のバンクーバー市、スピードスケート会場のあったリッチモンド市、さらに、各国が無料でパビリオンを開放。ワインやビール、チーズなど各国の特産品をふるまったり、コンサートを開いたり、連日連夜のお祭り騒ぎとなった。カナダのメダル数と町の人口増加は比例していたように思う。

 そのため短期的な経済効果も絶大だっただろう。カナダ産業審議会の発表では、今回のオリンピックは2010年だけでBC州に7億7千万ドルの経済効果をもたらすだろうと予測した。実際の経済効果については、現在ブリティッシュ・コロンビア大学にて調査中で、今秋には期間中の、数年後には大会後の経済効果が発表される予定になっている。ついでに言えば、ハーパー政権の保守党支持率も2%ほど上がったらしい。BC州での支持率上昇が全国平均を押し上げたようだ。

 しかし、なによりも、絶大な効果を受けたのは、間違いなくオリンピックを一番楽しんだ私たちだ。期間中長野五輪にもかかわったという人に話を聞いたが、これほど国民が楽しそうに観戦しているのはうらやましいと言っていた。トリノを経験した日本の記者も、今回は異常にすごいと口を揃えていた。すごいと思っていたけど、やっぱり凄かったのだと今更ながらに感心した。ありきたりな言葉だが、ほんとに夢と感動を与えられた17日間だった。

 ただ、日本人として残念だったのはJOCが市民に対してだけでなく、現地邦人に対しても一貫して閉鎖的な態度を取ったことだ。北京大会の時には、ジャパンハウスを一般に公開して選手にも現地の人にも好評だったと聞いていた。だからと現地邦人日系人コミュニティも期待していただけに、残念だとの声は多かった。北京大会での一般公開は東京五輪招致活動の一環だったというのが後で分かって、なおさら残念。招致失敗で学んだことが自国民をシャットアウトすることだったのかと思うと非常にがっかりだった。できれば、カナディアンの波に乗ってほしかった。

 さて、オリンピックも終わりさあ一息、というわけにはいかない。 “Own the Podium”はまだ終わったわけではないのだ。オリンピックの感動を再びと、パラリンピックが開幕した。アイスホッケーでトリプル金メダルを狙うカナダを後押ししようとするのか、単なるホッケー好きなのか、たぶん両方だと思うが、アイススレッジホッケー予選のカナダ戦、3位決定戦、決勝戦のチケットはすでに完売しているということだ。ここまでくればホッケー好きもあっぱれだ。五輪アイスホッケー男子決勝を国民の80%が観戦したというのも肯ける。

 

 


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