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父子DNA鑑定は取り締まるべきか?

(記事要約)

2年前の2005年1月ドイツ連邦通常裁判所で、子どものDNA鑑定には、その子ども或はその母親の同意が必要であることを判定。連邦法務大臣であるツィプリース氏はさらに、こうした同意を無視した鑑定を行った場合、その父親は1年以下の自由刑に処されることを当時告知した。

母親が子どもを実子であることに確信が持てるのに対し、父親はその証明が法的にできないまま、子ども、そしてその母親の生活の面倒をみることになるため、いまだ論議がかもし出されている。中でも、DNA鑑定の結果であるデータが濫用される危険性があることが指摘されている。

Spiegel2007年2月12日より

(解説)

ドイツではDNA鑑定を現在数百ユーロで簡単に行えるようになっている。雑誌やインターネットで、こうした鑑定技術を提供する企業の広告が目に付くだけではなく、DNA鑑定キットが薬局で手に入るご時勢だ。

こうしたビジネス分野の人気の上昇には、その技術を必要とする父親の数が反映している。毎年3万人がこのテストを受けており、裁判所から委託された鑑定研究所では、その20%が母親の同意を受けずにテストが行われているそうだ。それ以外の場所で行われる鑑定を含めれば、父子関係に不安を抱く父親が、こっそりとDNA鑑定を委託している割合はもっと高いであろうことが推測される。

子供やその母親の同意なしにDNA鑑定を父親が行った場合、それを違法行為とするべきだという法務大臣の意見もあり、その理由として、子供の人権についての問題と、DNA鑑定により出された結果が濫用される危険性が指摘されている。

ところが、こうした行為を厳しく取り締まることで発生する問題点にも注目する必要がある。

つまり、内密で行われたDNA鑑定を違法行為であるとすることで、闇の鑑定所の利用者が増え、個人データが濫用される確率も上がるであろうということだ。所謂遺伝子データ泥棒なるものが蔓延してしまうのではないかという危惧である。

さらに取り締まりが与える家庭内の影響も無視できない。パートナーに同意を求めることで家庭不和となる可能性もあるからだ。

実際匿名によるDNA鑑定の結果の8割は、父親が実父であることが判明するということも考えれば、父親の無駄な心配で家族の問題を引き起こす必要もないというわけだ。


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