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国土交通省 中小旅行業者の募集型企画旅行販売解禁へ

■3つのカテゴリーに分類される旅行業者

旅行会社といえば、JTB、近畿日本ツーリスト、日本旅行、阪急交通社、HISなどを想起するだろうか。しかし、それら知名度の高い大手旅行会社は、ほんの一部に過ぎない。

全国には1万社を超える旅行会社が存在する。そして、大きく3つのカテゴリーに分類される。旅行者からの依頼による手配旅行や乗車船券の販売などのほか、JTBなど大手旅行会社は国内、海外のパッケージ旅行商品を企画・販売できる。これが第1種旅行業者で、数は全体の1割にも満たない。

さらに、国内旅行のみのパッケージ旅行商品の企画販売ができる第2種旅行業者が3割弱、そして国内、海外旅行のパッケージ旅行商品の企画販売ができない第3種旅行会社が存在する。一般的に中小旅行業者といわれるこの第3種旅行業者は、全体の6割強を占め、最も多い。そのほか、特定の旅行業者を代理した旅行商品を販売する「旅行業者代理業者」という区分もある。

さて、大雑把に言うと、大手旅行会社はこれまで、旅行者を観光地に送ることを主眼に置いてきた。ツアーパンフレットで旅行者を募集し、いかにして大量に送客するかで勝負し、しのぎを削ってきた。

これは何も大手旅行会社だけでなく、中小旅行会社も同じなのである。「地元の馴染みのお客さんを、一人でも多くどこかの観光地に連れていく」――これが基本的なスタンスなのだ。だから、地元の観光地に到着した旅行者を対象に、ツアーを企画して売るという発想は希薄だった。

海外の主要な観光地に目を転じれば、多種多様なオプショナルツアーが存在する。半日市内観光ツアーや、宿泊、観光施設などが独自に企画した体験ツアーなどが、街中の観光案内所やホテルのフロントの隅で予約できる。
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■多様化する旅行者の志向

地域格差解消の手段として、観光による地域活性化を謳う地方自治体は枚挙に暇がない。

有名観光地を抱える地域は従来通り、大手旅行会社から送られて来る旅行者を迎え入れていれば潤うが、大半の地方自治体はそうはいかない。多くの自治体が大手旅行会社と手を組もうとしても、意識と手法の擦れ違いによるもどかしさがあったのも確かだ。

さらに、エコツーリズム、ヘルスツーリズム、グリーンツーリズムなど、旅行者の志向も多様化している。地域の人との心の触れ合いや、斬新な切り口を持つ魅力的なツアーを求める傾向が強くなっている。

だからこそ、地元を一番良く知る地域密着型の敏捷性のある旅行会社が、地元の魅力を伝えるツアーを企画するのが自然なかたちであろう。これが理想的に広がると、体内を縦横無尽に巡る毛細血管のように、全国に隈なく血が巡り、地域活性化も夢ではないかもしれない。


■地域限定オプショナルツアーの企画・販売 “解禁”へ

国土交通省は今年5月12日から第3種旅行業者にも、一定の条件のもとで地域限定のオプショナルツアーの企画・販売を“解禁”する。

その一定条件とは、1)ツアーの範囲を営業所がある地元市町村と隣接する市町村に限る、2)旅行代金を当日払いとする――の2点。旅行代金を当日払いと条件づけたのは、消費者保護の観点からである。

元気な中小旅行会社にはビッグチャンスが与えられたことになる。地元の旅行会社がリーダーとなって地域の観光関係者を牽引し、肌理細やかなツアーを造ることができる。

しかしながら、現実的には第3種旅行業者の中には開店休業中や、年金生活者が細々と経営しているところも少なからずあり、チャンスが拡大したからといって、地域限定のオプショナルツアーが飛躍的に増えるというようなことはなさそうだ。

それよりも、国土交通省が「地元の観光協会やNPO法人にも第3種旅行業登録を取得して、積極的にツアーを企画してほしい」と、新規参入を望む意図の方に注目すべきだろう。

北海道ニセコ町は2003年に観光協会を初めて株式会社化し、旅行業登録を行うことによって物販事業と合わせて収入源としている。

また、長野県飯田市は周辺町村と観光関連事業者とともに「株式会社南信州観光公社」を設立し、農業体験などを売りとする修学旅行の誘致事業などに取り組んでいる。観光協会や牧場などの観光施設のほか、農林水産業に携わる業者が旅行業に新規参入し、都会から訪れた旅行者に、そこでしか味わえない体験型ツアーを提供していけば、徐々に観光地の魅力も多重層的になるはずだ。

ゴールデンウイーク明け以降、大手旅行会社のツアーで観光地に行ったとしても、その先で地域のユニークなオプショナルツアーをぜひ探してみてほしい。地元の旅行会社、観光協会、NPO法人、観光施設が独自に造った「地元ならでは」の体験ツアーに参加してみれば、新たな魅力を発見できるかもしれない。


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