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大統領選挙投票日のネット速報は有害?

<記事概要>

テレビ司会者のジャン=マルク・モランディニ氏は、フランス大統領選挙の結果予想をブログ上で、20時前に伝えると発表。選挙管理委員会はそれを受け、投票が終了する20時以前の予想結果のメディア公表は違法で、違反した場合には75000ユーロの罰金を課すとの圧力をかけたため、モランディニ氏は、断念。

フランスの法律が及ばないスイスやベルギーといった外国のメディアのホームページは、逆にアクセスが集中し、サーバーがパンクしてしまった。

国営ラジオRTLのジャーナリストのジャン=ミッシェル・アパティ氏のブログをはじめいくつかのメディア系ブログでは、投票日は書き込みを禁止して、有権者に影響を与えない努力をし、中立を守った。ネットの選挙への威力が、今回の選挙戦で初めてクローズアップされた。

2007年4月23日付けLe Figaro誌より


<解説>

選挙結果をいち早く知りたいと思うものだが、フランスは法律で、投票所が閉まる20時までは、どのメディアも結果予想(窓口調査も含む)を伝えないように規制している。投票経過をみて、投票者が土壇場で意見を変えるのを避けるためだ。

そんな状況の中、「自由はここにある!」と、早めに情報をリークしようと一石投じたのがモランディニ氏。しかし結果予想のデータはTVジャーナリストである肩書きを利用して閲覧できる各種媒体に伝達された情報。

各媒体が規制を守っている中でのフライングは、表現の自由の尊重というより、出たがり精神の方が目につく結果に終わった。早めの情報公開が有権者に有益と納得させられなかったからだろう。

日本やアメリカに比べ、ネット環境は遅れている感があるフランスも、今回の大統領選挙でネットの効力が初めて注目された。ブログやホームページを通して、情報収集が効率的にできるようになった。最新の世論調査結果を確認したり、候補者の演説をヴィデオで見られたり、聞けたり、読めたりするので、投票の判断材料が増えたわけだ。

2年前にプロ・アマを問わず全ての人が情報を発信できる「市民ジャーナリズム」サイトとしてサービスを開始したアゴラ・ヴォックスAgoraVox(http://www.agoravox.fr)の創設者の一人カルロ・レヴェリCarlo Revelli氏によると、まだまだ選挙に有益な情報はネット上には少ないと言う。

このサイトでは、情報の質と正当性を保つために、市井の執筆者からの情報を、信憑性を確かめ、ふるいにかけて、多彩な分野の話題を掲載している。今回の大統領選挙の時期は、寄せられた情報が増えたが、単に支持候補への自分の意見を述べるだけの文章が多かったため、サイトに情報として載せられるものが少なかったという。

登録執筆者が1万人に達し、月に120万のページビューがあるこのサイトは、ネット監視会社であるシビオンCybionの出資で創設された。今回のように万人が興味を持つ大統領選挙のようなイベントを通じて、次世代のメディアの形を模索している。


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