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新しい価値は「対抗融合」の中にある

  • 株式会社ジャパンライフデザインシステムズ 代表取締役社長 
  • 谷口 正和

新しい価値は対抗概念の結合、融合から生まれるということです。東京モード学園(http://www.mode.ac.jp/index.html)のCMのコンセプトは、たぶん「ファッションはゴミだ」、しかし「美しいゴミだ」でしょう。だからあの過激な表現が生まれたのです。

札幌メディア・アート・フォーラムが、学生を対象にワークショップを開催しました。「ゴミ」をテーマにTシャツをデザイン&制作するというものです。あえて一般的なエコ概念の「ゴミ問題」や「ゴミを減らそう」などのテーマにせず、深刻な問題だからこそ様々な切り口、側面を見つけてもらうことを意図したそうです。東京モード学園と合い通じるものがあります。

おしゃれの世界ほど、対抗概念の融合が進んでいる世界もないでしょう。いまようやく男性もピアスをつけたり髪を染めたりするようになりましたが、この点では、やはり女性のほうが進んでいます。

いずれ、そう遠くない近々だと思いますが、男性が口紅をつけ、アイラインを引く時代がやってくるでしょう。男性の女性化、あるいは女性の男性化は、おしゃれの世界における最大の対抗概念の融合なのですから。テレビで人気の「おネエMANS」なども、性差融合が特徴になっているでしょう。

最近シドニー・ポラックが監督して話題になっている映画に「スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー」がありますが、大胆かつ奇抜な建築様式で知られる天才的建築家フランク・ゲーリーのコンセプトは「キュービズム」です。 

アートの世界で言えば、ピカソやブラックのキュービズム派の絵が何であんなに衝撃的だったのかといえば、通常の視角とか視点を壊してしまったからでしょう。ピカソの絵の中には、正面と側面と平面がいっぺんにあるのですから。つまり角度という概念を融合させたわけです。フランク・ゲーリーの建築は、まさにその立体版です。

ちょっと街のトレンドに目を転じれば、冷たさが切り口の“氷結ラーメン”が人気です。スープを凍らせたり、乳製品と合わせてアイスにしたり、本物のカキ氷を入れたラーメンを扱うお店が続々登場しています。ラーメンといえば熱いもの、という視点をひっくり返したわけです。

「アイス坦々麺」 (麺屋武蔵 新宿)、「みぞれ味噌つけ麺」(儀佐ヱ門 東高円寺)などが代表店です。これからは「ハイお待ち、熱いですよ」ではなく「ハイ、冷たいですよ」かもしれません。

古い家や長屋をモダンな飲食店に変えるのを「リストア」といいますが、これも時間の新旧融合です。昭和コンセプトの立ち飲み屋が女性にも人気ですが、これも同様のトレンドでしょう。

教育・文化施設の「アカデミーヒルズ」(港区、http://www.academyhills.com/)は、現代の高感度な消費スタイルをテーマにセミナーを開催しました。現代の消費をけん引するのは、バランス感覚とオタク感覚を併せ持つ高感度な人々で、そのような消費を「ラウンドエッジ」と命名。つまり「ラウンド(丸い、バランスがいい)」けれども「エッジ(尖っている)」という双方の感性が融合した消費が始まるというわけです。これなども「対抗融合」指向でしょう。

情報化社会は左右上下、右も左も、上も下も等価値の社会です。そのような全方位型の価値観の中で、人はどのようにして価値観を見出すかといえば、それは「対抗融合」の中に発見していくということです。

特に若者たちはその名人であり、ファッションに飲食に、あるいは暮らし方やライフスタイルに、この「対抗融合」の視点を次々と導入して、新しいトレンドを作り出しています。

ひとつの価値で一元的に判断するのではなく、左右上下、対抗する概念の融合によって、多元的価値観を形成していく時代だといえます。

 

■関連情報


◆札幌メディア・アート・フォーラム

○札幌経済新聞 2007/06/25
「ゴミ」をテーマにTシャツをデザインするワークショップ
http://sapporo.keizai.biz/headline/36/index.html


◆おネエMANS

○日本テレビ公式サイト http://www.ntv.co.jp/one-mans/

○関心空間 「おネエMANS」
http://www.kanshin.com/keyword/1113333


◆フランク・ゲーリー(建築家)

○もの見ない目(世界の建築デザインのトピックスを伝えるブログ) 
Hotel Marques de Riscal/Frank Gehry 2007/05/29
  フランク・ゲーリーがデザインしたホテル マルケス デ リスカル
http://nousera.blog68.fc2.com/blog-entry-412.html

○映画『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』公式サイト
 渋谷Bunkamura ル・シネマ 7月13日(金)まで上映
http://sketch.cinemacafe.net/

○映画『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』 予告編
http://www.youtube.com/watch?v=8wPn_l3F6wU

○映画通信シネマッシモプロの映画ライター(渡まち子)が贈る映画評
 『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』  2007/06/12
http://blog.livedoor.jp/cinemassimo/archives/50995050.html

○cinemacafe.net SPECIAL  『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』
http://www.cinemacafe.net/special/gehry/

○cinemacafe.net 作品情報 『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』
http://www.cinemacafe.net/movies/cgi/17540/

○藤崎圭一郎 ココカラハジマル
 「頑張れ! スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー」 2007/06/05
http://cabanon.exblog.jp/5554835

○Tadaoh! Design
  スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー 【レビュー】 2007/06/05
http://www.tadaoh.net/design/2007/06/post_206.html

○a-blog with F 『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』 2007/07/02
http://appleple.heteml.jp/blog/index.php?ID=566

○日常この上ない、  『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』 2007/06/13
http://nichiko.blog106.fc2.com/blog-entry-9.html


◆氷結ラーメン

○TokyoWalker 2007/06/22
「スープも麺も、キーンと凍る!? 氷結ラーメンが今夏、大ブームだ!」
http://www.walkerplus.com/tokyo/news/topics/00000000001100.html

○自称「日本一ラーメンを食べた男」の日記
 「儀左衛門@東高円寺(新高円寺?) みぞれ味噌つけ麺」 2007/07/07
http://ramenlove.livedoor.biz/archives/cat_50013865.html


◆アカデミーヒルズ

○シングル女性の東京マンション購入体験記とその後
 「アカデミーヒルズ六本木ライブラリー」 2007/07/01
http://mansiontokyo.blog9.fc2.com/blog-entry-884.html

○ネタフル 「アカデミーヒルズのセミナーを終えて」 2007/03/22
http://netafull.net/diary/019198.html

○羊のまごころ 「アカデミーヒルズへ」 2007/05/23
http://sheep.news2u.co.jp/2007/05/231610.php

○ネットPR.jp  2007/05/25
 「Web2.0時代のウェブサイト制作セミナー@アカデミーヒルズ」
http://netpr.jp/netpr/001137.php

 


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