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ローコスト航空会社(LCC)のおかげでフランスの地方経済活性化

<記事概要>

1997年にフランスに上陸したローコスト航空会社。ライアンエアーやイージージェットのおかげで、この5年間で市場を拡大し、現在ではフランス発着の会社は34社、280路線までになった。

これらの航空会社のおかげで、死に体だった地方空港が、活力を取り戻している。地方空港は、簡単な構造なので、ボーディング(搭乗)から離着までの時間を短くすることができ(約25分)、航空会社にとって経費を低く抑えられる。

地域の商工会議所も、助成金を工面して、ローコスト航空会社誘致に一役かっている。旅行客が来ることによって、一日平均現地に60ユーロをおとすといわれ、地域活性化に大切な要素となっている。

http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0,36-936366,0.html
(7月18日ル・モンド紙より抜粋)

 

<記事解説>

世界に誇る最速新幹線、TGVを開発、製造しているフランス国鉄(SNCF)。今年6月には、東部TGVも開通し、パリ─ストラスブール間が4時間から2時間20分で移動可能に。パリ─ロンドン間も2時間35分で街中の駅に着くユーロスターの人気が高い。

鉄道の発達により、国内、近隣諸国への移動は、飛行機から電車利用者が圧倒的に増えていった。電車での移動が便利で早くなればなるほど廃れていった地方の飛行場が、ローコスト航空会社を呼びこむことで地元の再活性の道を開いている。

フランス中部にあるクレモン・フェランの飛行場利用客は、2002年の100万人から2006年には約半分の56万7000人に減少。将来をかけて、ローコスト航空会社の呼び込みに注力している。

フランス全土で150ある飛行場のうち、30飛行場のみがローコスト航空会社の離着陸の空港。ローコストの便があると、旅行先として優先順位が低かった地域にも、破格の航空運賃であることから、観光客が行くようになった。

昔からの観光名所ではないため、ホテルや物価の安い地元で観光客達はお金を落とす。失業率が高い地方にも観光業界で新しい雇用が生まれる、と地元にとっては一石二鳥の効果。地元の商工会議所がやっきになってローコスト航空会社を誘致しようとするのはあたりまえだろう。そのための助成金を出す地方自治体もある。

アイルランドのライアンエアー社はヨーロッパのローコスト航空会社の先駆的存在。現在は、パリ郊外のボーベーを拠点に、マルセイユ、ブルノーブルはもちろんのこと、カルカッソンやナント、トゥーロンにも定期便がある。イージージェット社はボルドー、リヨン、マルセイユに乗り入れしている。フライブ社はレンヌ、パーペニオンに、トランサビア社はニース、トゥーロン、シャンベリに便を飛ばしている。

これらに代表されるローコスト航空会社がフランスの飛行場利用率増加に大きくかかわっているのは事実。エアー・フランスのみを信用し、利用していた年齢層(高齢者)も、料金の安さと、若者の使用者に触発されて、積極的にローコスト航空会社の便を利用するようになってきている。

フランスにはコート・ダジュールや大西洋の海があり、アルプスやピレネーの山々があるので、フランス人の多数がフランス国内で休暇を過ごしていたが、アクセスの良くなった外国、イギリスやイタリアに遊びに行く人口が急増している。

ローコスト航空会社は、徹底的な経費削減による破格の航空運賃を市場に提供している。外国旅行客を魅了する土地と受け入れ体制が必要なのはもちろんのこと、その地方から外国旅行に行く人口も必要だ。

フランス人は、仕事を引退した後は、田舎で悠々自適な生活を好む。都会に住むお金がないのではなく、自然に囲まれた豊かな生活に憧れるのだ。経済的にも、自由時間的にも恵まれた年齢層がいる地方は、ローコスト航空会社にも魅力的だ。

また、ローコスト航空会社の便は席番が指定されていないため、乗客は良い席を確保しようと早めに飛行機に乗り込み、搭乗時間が短縮。小さくて単純な構造の地方の飛行場は、乗客の搭乗が極端に短くてすむ。飛行場に飛行機が停泊している時間によって課金される航空会社にとっては、大きなメリットだ。

ローコスト航空会社の台頭によって、バカンス大国フランス人のバカンスの過ごし方が変化してきている。

 

■関連情報

○TGV speed record at 574.8kmh ─357.16mph(YouTube映像)05:01
http://www.youtube.com/watch?v=8skXT5NQzCg


※下記のブログ(宇宙航空MBAブログ)を読むとローコスト航空の安全性、搭乗料金の安さがわかります。空港経営についても言及されています。

○宇宙航空MBAブログ「航空機の安全性」2007/05/11
http://blog.goo.ne.jp/aerospacemba/e/9c233345a62677fbc131810773f4bf99


○宇宙航空MBAブログ「ローコスト航空の安全性」2007/05/12
http://blog.goo.ne.jp/aerospacemba/e/85b6943206e7faed2d8c5279c53dcd92


○宇宙航空MBAブログ 「ローコスト空港」2007/04/28
http://blog.goo.ne.jp/aerospacemba/e/2ddd72e9b58008d47231ca599c5298ad


○宇宙航空MBAブログ 「空港マネジメント」2007/04/24
http://blog.goo.ne.jp/aerospacemba/e/b03fb0b9f1b4862b9a7ec9549c16ec42


○宇宙航空MBAブログ 「空港は儲かる」2007/04/25
http://blog.goo.ne.jp/aerospacemba/e/20ea04ccbcd58386fde388aa44428194


○宇宙航空MBAブログ 「空港マーケティング」2007/04/26
http://blog.goo.ne.jp/aerospacemba/e/3c3b08dba42099b5a4e19c03053f52a8


○イザ!【正論】伊藤元重 航空業は「失われた15年」の教訓学べ 2007/04/12
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/47251/


○イザ! 2007/04/09
 「米から世界波及? 機内ドリンク有料化も 生存競争に低価格死守、サービスへの苦情深刻」
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/economy/worldecon/46918/


○イザ! 「ロンドン─NYが激安1600円!愛航空会社設立へ」2007/04/13
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/47511/


○イザ!東京日和 [民間移管白紙化]叩き売り?の前兆? 2007/07/23
http://skyteam.iza.ne.jp/blog/entry/243048

 

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

国際航空運送協会(IATA, International Air Transport Association)は、国際線を運航する航空会社、旅行代理店、その他の関連業界のための業界団体である。IATAはイアタと読むが、古くはアイアタと慣用読みするのが普通だった。

第二次世界大戦の終結に伴い、アメリカや一部のヨーロッパ諸国で航空旅行が一般化してきた1940年代後半以降から1970年代に至るまで、殆どの大手航空会社はIATAと航空会社、各国政府の間で決められた事実上のカルテル料金体系を維持しており、乗客は割高な航空運賃を一方的に押し付けられていた。
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※下記は「IATAカルテル」に関するニュースです。
○関心空間 「9:20 pm」 2007/01/06
http://www.kanshin.com/diary/1074353


○CNET 「格安航空会社のRyanair、機内で携帯電話を利用可能に」2006/08/31
http://japan.cnet.com/mobile/story/0,3800078151,20218107,00.htm


○飛んじゃえば 『go!』 airline 2007/06/15
http://blog.livedoor.jp/kozzys/archives/50157638.html


○/////Action with ambition///// 「ポンドの航空券」2006/10/16
http://niwa-staff.org/blog/?p=29


○トスカーナ 「進行中」 In Corso d'Opera
「6月1日に思う ─Nick Drake聴きながら」 2006/06/01
http://jamarte.exblog.jp/2372311

 

 


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JALの件の補足 2009年07月26日 08:31
前回、「JALは潰れるべきだった」というのを書いたけれど、別の場所で、以下の件の......